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34.

 ―――ザァァァ…


 滝のように叩きつける土砂降り。都市部の景色は白露の空間で埋め尽くされ、数十メートル先のビル群さえもはっきりと視認できない。


 ―――ピカッ…ゴロロロ……


 コンクリートに起きる断裂のような閃光が地に伝わったと思えば、時二、三秒後に轟く雷鳴。


 ギュルルル…


 うっかり雷鳴に呼応して俺の腹鳴がなってしまう。


 今日の空模様は雷雨である。


 電光が当たり前のように点いている教室。


 外が暗雲で包まれた夜景色だからか、他生徒は「今日、マジ暗いな~」だとか「夜に授業するみたいで何かワクワクしね?」とか言って談笑を楽しんでいる。


 後者の意見には同意の意を示す。


 こういう稀に起こりうる天気って、冒険心が掻き立てられるというか、時刻に見合わない環境が高揚感を引き出す気がするんだよなぁ。


 早朝から降り出した雨は午後も止む気配を見せなかった。


 錦織との会話もなかった今日、無駄に期待感を募らせていたフードを後ろ手でごそごそと手探ってみると…、


 「くしゃくしゃに丸めた紙…誰だよここにゴミ入れた奴…」


 ため息交じりについ小言を漏らす。


 錦織がした事とはあまり思えないけど、いじりを超えていじめだろこれ。どんだけ、特別候補生って嫌われてるの?


 これじゃあ手紙ボックスどころかダストボックスになってしまう…。ゴミ収集車なんぞする気はないぞ。


 教室の後方にあるゴミ箱にゴミを投げ入れようと右腕を下に向けた時、岩石のようなくしゃくしゃの紙の隙間から赤いマーカーが垣間見えた。


 赤点のテストでも丸めたのだろうか。気になってしまったので収縮した紙を丁寧に広げてみると、折り紙ほどの大きさになった。というか折り紙。


 紙には地図が手書きで記されており、先程の赤いマーカー線は重要地点らしき場所を円弧で囲っていた。


 まさか…お宝の地図?


 こんな土砂降りの中、でっかいスコップ持って掘れってか。にしても折り紙に宝の地図描く海賊なんて聞いたことある?ないよね…。


 古い羊皮紙みたいによれた紙を裏返しにしてみると、ふい字で中央部分に【夜崎くんへ】と書かれていた。


 あら?あらら?まさかこれラブレターじゃないよね?


 思い返そうと、地図のようなものが描かれた表面に再び戻す。マーカーで引かれた赤い円弧の中央部、小さく『夜崎来い』と書かれている。


 なんだこれ…


 とても同一人物が書いたとは思えない手癖のある文字と、威圧感。


 二人の人物がいたと仮定したら…もしかして、俺を巡って恋の奪い合いでも起きたのだろうか?


 一度、整理してみよう。


 くしゃくしゃの紙が一枚。内容は指定の場所に来るよう促す地図。しかし、裏面に書かれた文字はふい字っぽい真ん丸な書体。表面、地図の指定地点に書かれた文字は赤ボールペンで記述された威圧感のある字。けれども、文字自体はかなり綺麗だ。


 世間で言う習字、習ってたでしょ?て聞かれるやつ。


 そして、行くか行かないかという選択は、少々憚られるものである。


 待ちぼうけ悪戯なんて低俗な遊びが世の中存在するからな。呼ばれた場所に行ったはいいけど、チャイムが鳴ってもその子は現れなくて…。結局、嘘だと後でネタばらしされて、笑い者にされる。手紙も女子に委託したリアリティ溢れる字体という、無駄な手間の掛けようで。


 けどまあ…今の俺には関係ない。


 また、空虚に一日が終了してしまいそうだったので向かう事にした。

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