33.
俺は今まで何度驚かされた事だろう。
「貴方に寄ってたかる女子なんていると思いますか?答えはノーです。現実を見て下さい」
…俺は別に女子なんぞに興味はない。
睫毛長くして、厚化粧して、目を無理やり二重にして、欧米や西洋が一種の基準のようにしているモンスターなどもってのほかだ。
腹立たしくて見苦しい。
けれども、不可抗力という思春期は確かに存在して。男と女という二つの性が存在している以上、異性に魅力を出したい、優位に立ちたいという欲は皆等しく持っているはずだ。
「つまり…俺はあの女子どもにもて遊ばれた挙句、帰り際にフードを裏っ返しにされたと?」
「やっと、完全証明に至りましたね。くだらないですけど」
最後に苦言を吐いて、錦織は深いため息をつく。
嘘か真か分からんが結局、俺はイケメンでも何でもないらしい。悲しいかな。世の中、最後は顔だ。誰よりも優しくて、思いやりがあって、親しみやすくとも顔を見た瞬間、汚い笑顔だなと思う。
ブスはブスとしか結婚出来ない。逆に財力を持つ者は美女だろうとブスだろうと取り込める。美男・美女は世の中の原理に元づくものでしかない。けれども、生きているうちに覆すことは出来ない強固な基盤。
俺は思春期という心の揺らぎ作用により、美男という社会において有利な承認欲求を強めていたのかもしれない。
「結局は世の中、顔か財力だ。馬鹿みたいな世界だなほんと」
毒ずいて不満をぶちまける。
「その通りではありますが、逆に"本能としての正直さ"とも言えるのではないでしょうか」
てっきり、無視される独り言だと思っていたのだが意外にも錦織が反応を示した。
「そうだな。厚化粧ゴリゴリのバケモンみたいな面した嘘美女に男は騙されて、「付き合ってるけどまだ素顔を一度も見たことが無い」なんてカップルも存在しているくらいだからな」
しまいには結婚するけど、化けの皮を剥がした瞬間、とんでもない顔が姿を現すんだぜ?
釣られる馬鹿な男もアレだが、シミだらけで工事してるあんちゃんを本当に見習って欲しい。これでもかってくらいの素顔で今を生き抜いてるんだからな。
錦織の返答を待たずに俺は更に続ける。
「大体、親から貰ったこの大切な顔と体を整形やら、化粧で覆いつくしたら失礼だろ」
「夜崎くんの意見も間違っている訳では無く、一理あります。では、」
錦織が仕切り直しするように口を止めた。そして、再び開いた。
「こんな考え方はどうでしょう。貴方の目の前、約数十センチの距離に女の子の顔があります」
「…まず、状況がよくわからんがそれで?」
ついこの前に錦織が同じようなシチュエーションをしていたのを思い出して、目を逸らしながら返答してしまった。
どっちがヒロインなんだか…。寧むしろ俺の方が可愛いぞ?
「その子は貴方に好意を抱いているようです。しかし、お顔がかなりよろしくありません」
「変に言葉を取り繕わなくていいから…」
俺はまじまじとツッコミを入れた。続けて、
「つまり、ブスって事だろ?」
「はい。ブスどころか、手でこねたようなドブスです」
何その子?岩石爆弾か何かなの?錦織の物言いもそうだが、どんなブスだよ…。
「実に簡単な質問です。貴方はどう思いますか」
辿り着いた問いがこれか…。前フリの必要性が分からん。
「どうって…そりゃあ気持ち悪いな。一つ回って臭そうなまである」
その架空のブスとやらに酷く辛辣な言葉を告げた。
「予想通り…というか予想以上に酷い言いようですね」
改めてやばい奴と再認識したのか、錦織が先程よりも遠くに感じられた。
錦織が結論付ける。
「まあ、つまりそういう事です。いかに異性、友人、親しみを持つ人であっても、顔が不揃いという理由だけで少しは不快な思いをするという事です」
「それが人間の本能による自然反応って事か」
錦織は正論しか言わないから、いつも結論を任せている所がある。これはどうなのだろう。
まあ、俺も同意見だけど。
「だから、化粧をしてそれなりの顔があればマシぐらいにはなるんじゃないでしょうか」
「俺は大いに不快だな。素顔を隠してまでノコノコでてくる奴は信用ならん」
「先程、面を被った貴方が言いますか…」
「物理的ではないから問題ない」




