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21.

 ♢ ♢ ♢


 目先には白い大理石の床で覆われたメインゲート。


 天井に埋められたシーリングライトが淡い自然模様を照らし出し、濡れた氷床のように光沢を放っていた。奥に伸びる館内は二重の自動ドアで仕切られ、まさしく高級ホテルにありがちなスタイル。


 インターホンのような機器も見受けられた為、ここはオフィスか何かで、生徒が入れるような場所ではないだろう。


「どうやらここは僕達に関係ない施設のようだね…他を回ろうか」


「貴方、何を言ってるんですか?ここは学校専用の図書館兼、ラウンジですよ?」


「え、マジか」


「マジです」


 驚きのあまり敬語を使い忘れた俺に対して、呼応するように錦織も同じく返した。案外可愛げもあるのな。顔さえ向いてくれないけど。


 特別候補生といい、高層階の教室といい、度々この学校には驚かされる。この程度の娯楽施設、序の口と言ってもいいのかもしれない。


「では、携帯にインストールしている学校専用認証アプリを使ってドアを開けてください」


 錦織が命令口調で支持してきた。俺は携帯を持っていないのと同時に何の事かさっぱり分からなかった。


「済みません錦織さん…。僕、携帯電話持ってないんですよ…」


 あくまで下出に。弱々しくそう返した。すると、


「驚きました…未だにガラパゴス諸島に暮らしていた方がいたなんて…。あっ、失礼致しました。携帯電話すらないという事は…原始人の方が通りがいいですね」


 笑顔で錦織は答えた。無意味な訂正とともに。本当に失礼しちゃうよ…。携帯機種をあたかも歴史のように語っておいて、猿人扱い。ホモサピエンスか俺は。人の祖先だから間違ってないけど。


 大体、現代において一人一台携帯電話を所持している事実がおかしい。当たり前であるかのような風潮が俺は嫌いだ。


 俺のような自分から持たない人がいるのは稀だが、中には経済的事情で毎月維持するのが困難な人もいるだろう。親に払ってもらっている分際でなんて生意気なのだろう。聞く話じゃ、タッチ式の近未来デバイスも出たそうじゃないか。


 これもうワシ。着いていけんのじゃけど…。


「仕方ないですね…。今回は私の権限で通りますが、次あったらそんな事しませんからね」


 呆れた様子で錦織はそう言う。


「す、済みません…」


 寧ろ謝らなきゃいけないのは彼女の方だと思うが…。どこに俺が謝る要素があったのか分からないくらい理不尽で傲慢だ。

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