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17.

 エレベーターをつたい、地下フロアに向かっているようだった。ただでさえ階数がとんでもなく多いのに地下フロアまであるのか…恐るべし成金高校。


 エレベーターの自動ドアが開くと、藍色の絨毯がひかれた仄暗い廊下へと出る。


 天井にはオレンジ色のシーリングライトが等間隔備え付けられており、スポットライトとしてムーディーに床を照らしていた。


 壁面は木製で鉛筆を刺したような穴が無数に覆いつくしている。確か、防音壁というやつだったと思う。音楽室を思い浮かべれば容易に想像がつくだろう。


 特別候補生を引き連れた教師が立ち止まった。背後には円形状の壁がある。真上から見たらCの形をした部屋で、口が空いた部分に両開き扉が一つずつあった。どうやらここが放送室のようで周囲には特別候補生と思われる生徒が数人。


 音響が響きにくいこの空間で若教師の声はやけによく通った。


「これから、特別候補生の生徒にはこの放送室で個人の目標など、自分の意思を表明してもらおうと思います。ここから発信される音声は全クラス全フロアに直接届くので注意して下さいね」


 一般生徒と違う点、その一。校内演説?


 というか、なんだよ注意って。おかしな事を言い出したら、あわや放送事故ってか?まあ、俺は自分の意思を表明するのが大の得意ですからね。余裕だな。


 考えようによっては全生徒・全教師・学長に自らの意思を伝える最初で最後のチャンスかもしれない。


 反面、リスクが無い訳でもないだろうが。


 聴き手の様子を見る事が出来ないのでリアルタイムの反応は一切分からない。後々、非難される事態も当然あり得る。それでも俺は取り繕う事なく、自分の意思を表明する所存だ。


 なんせ底辺高校から成り上がった身なのだから。失う物など何もない。


 社会の縮図といえる高校生活。この世の正解を吐き違えている連中を俺の強い意志をもって断罪してやる。


 俺は自信に満ち溢れていたか。強い正義感を抱いていたのか。はたまた悪魔めいていたのか。どんな面構えをしていたかなんて、知る由も無いが。


 次、また次と放送室から出入りする生徒。俺を気にする事もなく錦織が扉を開けて入っていった。


 ほんの数分間だったろうか。案外あっさりと終了したようで気が付けば自分の番である。

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