13.
入学式早々、変な目にあったものだ。
当然ではあるが俺はまだこの学校についてよく分かっていない。
綾崎先生から送られてきたデジタルパンフレットによく目を通したつもりではある。けれども、オープンキャンパスなどの学校見学を一度もしていないのだ。無知を通り越して、不安な心持ちである。
不本意で体育館入口に来てしまったのだが…不幸中の幸いとも言うべきだろうか。壁面にクラス分けの貼り出しがあった。
扉半分ほどの大きな印刷用紙にびっしりと羅列された氏名。"クラス分け"の貼り出しはエントランス付近にも貼り出されていたからか、生徒の姿は無い。
これが高校生活二度目の名簿確認とあって少々、探すのが面倒ではある。しかしながら、入学式を二回体験した高校生など皆無に等しいのでそれはそれで貴重な体験であった。
気楽にいこうと決めて、どれだーーっと人差し指を一年A組の紙面でスライドさせる。名簿の終盤に差し掛かった頃、妙な記載を発見した。
なんだこれ?"特別候補生"…?
氏名は…錦織小雪合か。
ほーん。いわゆる特待生というやつだろうか?優秀な奴もいるものだと勝手に関心していると、
あった。
あったよ。俺の名前。
"特別候補生"という肩書付きで。
これが仮にこの学校を決死の覚悟で受験した結果だとすれば大いに歓喜したんだろうが、今となってそれは驚きもなく至極、当たり前であると思えた。
底辺高校入学初日から突然引き抜かれ、この高校に新参した特殊人物。つまりスペシャルでオナーな存在という事こと自体、テストを合格したその瞬間から示されていた訳である。
他クラスの張り紙を散見すると特別候補生とやらは各クラス二~三人存在していて、自分は一年A組の特別候補生に配属されたようだ。いや~、にしても特別ねぇ。…照れるなぁ、嬉しいなぁ。
何という優越感であろう。この感覚に浸っているだけで三年間余裕で過ごせますよコレワァ…。
俺の氏名である「夜崎辰巳」は錦織さんの下部に記載されており、同じクラスという事が分かった。きっと、この錦織さんも、どこか別の高校から下剋上したんだろうなぁ。
そして、こんな事を思う。
そうだ。
クラスで初めて話しかける相手は錦織さんにしよう。同じ特別候補生として恐らく話し込みやすいだろうし、女性という異性の存在もクラスのネットワークを広げるためには必要不可欠だろう。
クラスで最初の糸口を見つけることに成功した"私"は気分よくクラスに向かうことができる。エリート的存在なのだから「俺」という泥臭い言葉は一切使わないようにしようではないか。
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