表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/101

11.

 流石大都会だけある。


 朝早くだというのに交通量は割と多い。立ち並ぶオフィスや高層ビル。魚眼レンズで覗いたものなら、その空を覆う独特の圧迫感は解りやすく写し出される事だろう。


 周囲を見回すとショッピングモールに向かう主婦や、黒いスーツに身を包んだ会社員などが見てとれる。その中でも特に目を引くのがあの濃緑の学生服だろう。


 外側線に沿って濃緑の制服の上を横断する白い線。差し色に使われたワインレッドのネクタイにリボン。学校の校章らしきボタンをあしらった金色のボタン。ブレザーは主にそんなデザイン。ズボンとスカートはありきたりな灰色幾何学模様といった具合で構成されている。


 これこそが我の通う高校、東京都立豊洲総合高等学校の制服である。誇らしすぎて我と言っちゃうまであるのだ。


 バランスのとれた色調はただならぬ品格を醸し出すのだが…いたよ…それをより具体化するような子が。


 左髪を結んだ黒髪ロング。腕には濃緑の制服によく似合う牛革ベルトの時計。おまけに顔立ちは整った凛とした佇まい。目は青みがかった黒眼球。覗けば吸い込まれてしまうような深淵…。


 実に容姿端麗という言葉が似合う少女である。更に才女という肩書もつくのだろうが、学力の程は分からないので伏せておく。


 五、六メートル先をその子が歩いていた。


 俺直ぐ後ろを歩く学生集団にも視認できたようで、「あーいう子って本当に要るんだね…」だとか「私もあんな容姿で生まれたらなぁ」と羨む小言が聞こえた。


 羨む気持ちはよく分かる。俺も御伽話の世界と思ってましたよ。ガチャでいったら何レアだ?ともかく最高レアリティである事は間違いないだろう。


 …そしてそんな学生諸君に朗報だ。なんと縦二連続美男美女揃いだという事を!


 そう。その美麗少女の後に続く男子高校生、夜崎辰巳が更なる彩を諸君らに添えようじゃないか。


 外面は清楚(自称)な俺はふとマスクを外しながら顔を右にやった。いわゆる甘い横顔をさり気なく見せる作戦。


 …。


 特に気にかける事もなく、談笑を続ける女子生徒らが通り過ぎていった。道端には彫像が如く硬直した男子生徒が一人。


 結果は…予想していた通り何も起きなかった。驚かれることもなく。気にされることもなく。


 別に他者の風評など、どうでもいいのだが率直に容姿の実用価値を知りたかった。


 なんだ。意外と人って、他人の事は後回しで顔面すら見ていないらしい。


 俺は見下すような視線を揺らしながら、再びマスクを着用した。


 にしても今日は本当にいい陽気である。


 サラサラと葉音をたてながら、柔らかな風に揺れる木々と、等間隔に植えられる植栽の数々。


 新たな高校生活は目と鼻の先だ。

【広告下の★★★から評価お願い致します!】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ