表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/101

99.

「バイト……バイトねぇ……」


 呪文のように口ずさみながら上層階にある商業区を歩く。


 地上40階にある商業区にはオサレなカフェやレストランが軒を連ねている。前、錦織に見切りをつけられた人気店舗、スターマウンテンコーヒーもこの場所の一角にある。


 アルバイト募集!のような大々的な貼り紙こそないものの、インターネット掲示板にはそれなりの募集があるようで──


「ほら、豊洲総合高等学校の専用アプリにもアルバイトの募集があるじゃないか」


 壱琉は携帯の画面を見せながら、バナー表示を指差した。


「カフェにレストランに……受付なんてものもあるのか」


 興味があったのでクリック。簡単な受付業務でラクラク♪と。時給は──1500円!?


 催促する気持ちを抑えながらページを下部までスクロールさせた。


「"ただし"特別候補生は応募不可と」


 俺は陰鬱な目つきをしながら、多少苛立った声で言った。


 壱琉は様子を見兼ねて携帯のアプリを閉じると、胸元から見覚えのあるチケットを取り出す。それを人差し指と中指で挟み、ひらひらさせながら言った。


「"無料券"があるからだろうね。特別候補生は月に三枚これが配布されるだろう?だからせめてもの公平感を演出する為に、応募出来ないようにしているんじゃないかな」


「なるほど……そういう事なら納得だ」


 見込み通り、壱琉の情報量と推察力は只者ではなかった。


「でもまあ、今の俺には関係ないんだよなぁ……」


「何故?」


 壱琉は不思議そうに見つめてくる。俺はため息一つ吐くと、視線をそらしながら答えた。


「受け取らない事にしたんだ。ちょっとした決意表明だよ」


 言ったそばから後悔しているようにでも見えたのか、壱琉は苦笑しながら返答する。


「君らしいな。目的達成の為に痩せ我慢してしまうところが実に面白い」


 穏やかな声音は次第に嘲るような形をとる。


「う……うるせぇな」


 俺は壱琉を追い抜いてそそくさと先へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ