会いたかった仲間
風でしょうか。何やら音が聞こえます。
「……にゃーたろう」
違います。誰かの声です。
「こっちだよ、振り返ってみて」
にゃーたろうは後ろを見ます。すると何て事でしょう、自分と同じような顔をした生き物がそこに居ました。本で読んだ顔そのままです。
「ずっと探してくれるのを待ってたんだよ」
そのネコは笑顔でそう言いました。にゃーたろうも笑顔になりました。
「ずっとってどういう事?」
にゃーたろうは尋ねます。
「ずっとはずっとさ」
そのネコは言います。
「それだけじゃ分からないよ」
にゃーたろうは困ります。
「分からなくて良いのさ」
そのネコは笑います。
「どうして分からなくて良いの?」
にゃーたろうは問いかけます。
「だってそれはね……」
そのネコの言う事が聞き取れません。
「今なんて……」
にゃーたろうが全てを言い切る前に思わず口にしてしまいました。
「寒い!」
その瞬間ネコは消え、目の前には暗くなりかけた紫色の空が現れました。
にゃーたろうはしばらくお空を眺めていましたが、やがて自分で気が付きます。
「何だ、夢だったのか」
まだ見ぬ仲間を想う気持ちが見せた夢でした。にゃーたろうは寂しさを思い出してしまいました。
やがて寒さも思い出します。
「うう〜寒いや。もう暗くなりかけている事だし今日はもうここでテントを立てよう」
にゃーたろうは大きなリュックサックからテントを取り出します。このテントはとても便利なテントなのです。折り曲げている所を元に戻してやるとポンッと音を立ててテントになってしまうのです。ポンッ。ほら、もうテントは出来上がりました。
にゃーたろうはお尻に付いた土を払ってテントの中へと入ります。
少し早い気はしましたが、もう晩ご飯を食べる事にしました。リュックサックをテントの中へ入れ、同時に大きなきゅうりを取り出しました。爪で器用にイボを取っていきます。
にゃーたろうはそれをガブリとかじりました。何も付けていないのにしょっぱい味がしました。