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平和だった暮らし

 小さな小さな森にねこのにゃーたろうが住んでいました。

 にゃーたろうは1匹で暮らしています。気が付いた時にはそうでした。食べ物も着る物も何でも自分でつくっています。

 にゃーたろうにはそれが当たり前でした。だってずっとそうでしたから。

 さびしいなんて思った事もありませんでした。だってそれが当たり前でしたから。

 けれど、よく晴れたある日の事、にゃーたろうは知ってしまったのです。


 にゃーたろうのお家のすぐ横には倉庫がありました。前に一度のぞいた事はありましたが、暗かったのでにゃーたろうは中へ入りませんでした。

 けれど、その日はよく晴れていました。だから中までよく見えたのです。

 きっかけは洗濯物が風で飛んだ事でした。倉庫の前までシャツは飛びました。せっかくきれいになったのに、土が付いてしまいました。

 にゃーたろうはもう一度洗おうと思いましたが、太陽の陽射しに気が付きました。ちょうど倉庫の扉を照らしていたのです。

 にゃーたろうは手を伸ばします。ガラガラと大きな音と共に扉は開きました。

 前にのぞいた時は何も見えなかったのに、今日はとても良く見えました。

 丸っこい小さな物やキラキラしたうすっぺらい物が転がっています。

 その奥の方には何やら重そうな四角形の物が積み重なっていました。

 近付いてみるとほこりが被っています。手でそれをはらいのけ、開いてみました。

 すると、自分とよく似た生き物の絵が描いてありました。


 にゃーたろうの家には鏡などありません。けれど、自分の姿は知っていました。

 小さな小さな森の中にも、池がありました。

 その池からにゃーたろうは水を持ってきては、洗濯や料理に使っています。

 その時に池をのぞきこんでみると、水面に映った毛むくじゃらの生き物が見えるのです。にゃーたろうが右に動くとそいつも右に動きます。飛び跳ねてみると、そいつも飛び跳ねます。にこりと笑ってみると、やはりそいつも笑うのです。

 どうも水面に映っているのは自分に違いない。にゃーたろうはそう思いました。


 その時に見た自分と同じような顔をしている生き物が描かれているのです。

「ぼくなのかなぁ」

 にゃーたろうは考えましたが、すぐに違うと分かりました。

「ぼくとは毛の色がちがう。ひげもこんなに曲がってない」

 にゃーたろうのヒゲはピンとまっすぐ伸びています。じまんのおヒゲなのです。

「じゃあこれは誰なんだろう」

 しばらくの間、じっと考え込んでしまったのでした。


 それからというもの、にゃーたろうはずっと考えていました。今までは誰も居ないのが当たり前でした。

 でも、それは当たり前ではないかもしれないのです。

 さびしさを知った瞬間でした。

 長い時間なやみましたが、決めました。

「あのネコを探しに行こう」

 それからにゃーたろうは旅に出る準備をしました。


 小さな小さな森の向こうには草原が広がっています。その先には山があります。

 木の実を拾いに行った時に見た事がありました。思わず遠くを見つめてしまいましたが、何だかこわくなってすぐに家へ帰ったのでした。

「あの山の向こうに誰かがいるかもしれない」

 そんな想いを持ち、決意を固めました。


 リュックサックに沢山の食べ物とお水を詰め込んで、にゃーたろうの冒険は始まりました。

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