エレベーター
このエレベーター、作られて何年経つんだろう〜。
10年は経ってるよね。
古いもの。
薄暗い明かりの中、箱に閉じ込められてるって感じがしなくない?
ホントだよね〜。
そのエレベーター…なんか噂があるらしい。
まっ、古いからそんなのもあってもおかしくないかも…って思った僕は考えが甘かったことを知ることになる。
いつも使ってるから僕としては気にならないのだが、ここに遊びにくる友人曰く、エレベーター…なんか不気味だよねって。何処がと聞くもそれはよくわからないと言う。
そんなんじゃわからないじゃないかと僕は思う。
でもね?
友人に言われてからの僕はその唯一のエレベーターに乗るのをためらうようになった。
だから普段は階段を使うようにしてる。
まぁ、たかだか階段3階分だから大したことはない。
でもね?
今日に限ってはどうしても使いたくなった。
何故って?
荷物が多いからじゃん。
買い物してたら荷物が増えすぎちゃって階段で上がるのは大変。
だからまぁ、しょうがないね。
ボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。
その間誰とも会わなかった。
ちょっとドキドキしてる自分がいる。
よっこいしょと言いながら荷物を両手に持ってエレベーターに乗り込む。
足元に置いて自分が降りる階のボタンを押す。
ドアが閉まって動き出す。
この間なにも起きていない。
友達の勘違いと思い始めた時それは起こった。
【ガタン!シュー。】
「エッ?どうした?」
エレベーターが止まった…。
故障かと思い非常時のボタンを押す。
「すみません。止まっちゃったんですが。誰かいませんか?」
「………。」
「うっそ、マジか…。」
「…ボソッ。……ボソッ。……」
「ねぇちょっと誰か、警備員さん!」
「……降りますか?……上がりますか?…。」
「はぁ?降りるに決まってるじゃないですか。ってかあんた誰?」
「…スーハー、……降りるんですね。降りましょうか…、地獄までね。キャハハハハ!」
そう言った途端に突然エレベーターが降り始めた。しかも猛スピードで。立っていられるはずもなく恐怖しかなかった。
地面との衝撃で僕は壁に叩きつけられた。
足元には砂煙が舞っていた。
「ってえ…。エッ?」
そこははじめ僕がのったエレベーターの一階だった。
たいして上がっていなかったはずなのにあの衝撃には驚いた。
エレベーターも壊れてはいなかったのだ。
じゃあ今あったこととは?
そこにたまたまマンションの住人が一人エレベーターに乗り込んできた。僕はもう乗る気にはならなかったので散らばっていた買い物グッズを拾い集めエレベーターから降りた。
住人は頭をひねりながら階のボタンを押す。
自動でドアが閉まり上がっていった…。
しばらく様子を見ていたが特に変わったことは起きなかったようだ。
僕は痛む腕をさすりながら階段を上がっていった。
そして三階まで上がるとエレベーターが気になり振り返った。
そこには開かれたエレベーターが止まっていた。
そこにさっき乗り込んだはずの住人が横たわっていた。
恐る恐る近づくと顔が真っ赤に染まっていて怖くなった僕は慌てて自分の部屋に逃げ込んだ。
荷物を片付けながらも気になって仕方がなかった為、再度エレベーターの元へ。
やはり真っ赤に染まった住人がそのままいた。
「うわぁ?!」
その声に反応して住人があちこちから近づいてきていた。
「きゅ、救急車を!早く!!」
野次馬がたくさん近づいてくる中僕は近づかないように押し返した。
救急車のサイレンが聞こえてきた。
これでもう安心と思った。そして振り返るとそこには住人以外に何人もの人が…人が…、透き通る人がいた!それはいったい誰だったのか僕にはわからない。
だけどその事があって僕は怖くなってこのマンションから引っ越すことにしたのだ。
今は平家に住んでいる。
エレベーターは怖くて乗れないからだ。
友達もここならとよく遊びに来るようになった。
振り返ってもそこには誰もいない。