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36話

「一体なんなんだこれは」


 教室に入り、惨状を見たゴリラは呆然とした。しかし、ブッスーの笑顔を見てすべてを悟ったらしい。


「毒島、お前マスクしろ」


 朝のホームルーム一杯の時間を使い、漸く落ち着いたこのクラス。一時限目の授業に少しだけ入り、連絡事項を済ませる。


「伊東先生すみませんねぇ」

「いえいえ!全然大丈夫ですよ」


 流石は伊東先生。猿に一回泣かされただけのことはある。

 そういえば、あいつらの担任もこの人だったよな。あとでどんな部活を作ったのか聞いてみるのもありかもしれない。

 しかし、そんなことはすぐ忘れ、その日は何事もなく家に帰る。


「スマホ壊れたの忘れてた……」


 よく考えたら前花とも連絡とる手段ねぇじゃねぇか。

 仕方ない、明日直接教室に出向いて話をしよう。昨日は結構変な感じになっちゃったしな。


 何気なくテレビを見ていると、衝撃のニュースが流れていた。


『野薔薇優芸能活動休止』


「まさか、俺のせいじゃないだろうな」


 昨日間に合わなかったのは俺のせいと言えなくもないし、それが原因なんじゃないだろうか。これについても明日確認しなければ。


 -----------------------



 まさかまたもやこの廊下を歩くことになるとは。

 やはり、周りからの視線が気になる。二年生がここにいるのがそんなにも珍しいかよ!心なしか前来た時よりも視線が刺さる視線が多いような気がする。

 教室に着くと、まずはあいつらのことを探す。しかし、誰もいないな。


「え、先輩?」

「あれ、前花だ」


 めっちゃ近くにいたわ。灯台下暗しとはまさにこのことだな。

 ドアに一番近いところで机に向かって座っていた。次の授業の予習なのか、机の上には教科書とノートが広げられている。


「どうしてこんなところにいるんですか?」

「あー、ちょっと話があって」

「私にですか?」

「なわけないだろ」


 つい反射的に否定の言葉が出てしまった。もしかしたら俺はツンデレなのかもしれない。


「むー、なんだか私が勘違い女みたいじゃないですか」

「実際そうじゃん」


 いかん、反応が可愛くてつい思っていることと逆の言葉が出てしまう。


「もう知りません!」


 怒らせてしまったらしい。これ以上は嫌われてしまいそうだ。しかし、これも先週などと比べると、雰囲気が柔らかくなっているような気がする。

 にしても、せっかくの昼休みなのに昼飯も食わずに予習とは。真面目なのか。

 いや、ちょっと待て。友達の姿が見当たらない。まさか、やっぱり友達いないんじゃ……


「で、誰と話をしに来たんですか?」


 知らないと言っておきながらきちんと要件を聞いてくれるあたり優しさがにじみ出ている。


「前花」

「さっき違うって言ったじゃないですか……」

「あれは冗談だ」

「あれほどまでに分かりづらくかつ面白みもない冗談生まれて初めてです」


 そんなまさか!?こいつの周りはそんなにも面白いのか!

 ……違うわ。冗談を言ってくれるような友達がいないんだ。それか、冗談で言っていることもすべて真に受けてしまっているのだろう。この前のDV男の件もまさにそれだった。

 今の俺にできること、それは一つしかない。


「これからも冗談言い続けるからな」

「ホントにやめてください。それになんでそんなに優しそうな声なんですか!ちゃんと冗談を言い合う友達くらいいますからね!?」


 まさか、今の俺の発言だけでそこにまで至るとは、この女末恐ろしいな。


「はぁ、早く要件を済ませてください」

「えっと、飯ってもう食った?」

「まだですけど」

「じゃあ一緒に食おうぜ」

「……いいですけど」


 一瞬だけ悩んだ末、承諾してくれた。

 この時間になってもまだ食べてなくて、さらに俺とのご飯を承諾したということは、一緒にご飯を食べる友達がいないんだな!


「言っておきますけど、いつも一緒に食べてる子が今日は委員会でいないだけですから。帰ってきたらその子と一緒に食べようとしてましたからね」


 苦しい言い訳を。だが、ここでそれを言ってしまうのはかわいそうだ。俺は先輩としてできるだけ優しく接してあげよう。


「どうしてそんなに優しそうな顔をするんですか!本当ですからね!」

「ああ、そうだよね。園子ちゃんといつも一緒に食べてるんだよね」

「その子は名前じゃないですけど」

「ああ、そうだね」

「本当に話を聞かない人だなぁ!もう!」


 前花がうるさいので、場所を移動し、外へ行くことにした。

 何処へ行っても人が多いので、俺が去年一年間で見つけた最高の場所へ行くことにした。ここはブッスーたちすら知らない俺だけの場所だ。

 というか、使ってなさそうなドアがあってこけた拍子にそのドア壊れちゃって誰にも言えなかっただけなんだけどね。

 しかし、その中に入ってみると丁度昼の時間には太陽の光が差し込み、ぽかぽかとした陽気が流れるいい空間なのだ。勝手にエアコンも付けられるので、夏にも冬にも快適の素晴らしい部屋だった。


「こんな場所あったんですね」

「誰にも言うなよ」


 俺のしたことバレるから。

 使っていないここが結構きれいなのは俺がたまに昼飯とか食いに来て掃除をしているから。居心地がいいからこそ、それを保つ努力をする。

 机を移動させ、二人で食べられる場所を作る。


「それで、話って何ですか?」

「ああ、話な」


 一呼吸おいて、まず何から話すか考える。

 俺のスマホの件か、野薔薇ちゃんのことか。少しだけ悩んで末に俺の口から出た言葉は。


「俺、前花のこと好き」



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