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24話

 まさか、二年生になったにもかかわらず、二度も交流会をする羽目になるとはな。

 金曜日、しっかりと学校に来た俺たちは、実行委員として一つの部屋に集められていた。


「また会ったな」


 そして、この前の交流会で俺の班にいた一年生たちもそこにいた。

 どうしているのかと聞いてみると、今年の実行委員の人数が少なくてたまたま学校にいたこいつらが駆り出されたらしい。部活でいたらしい四人と、唯一この学園で知っている連絡先が前花と半野だったらしい。半野に関しては今日は諸事情とかでこれなかったらしいが、心優しい前花ちゃんは来たのだ。


「そっちこそ何でいるんですか」

「ここにはいない半野君のせいで失格になったから」

「半野のせい……」

「いないときにまで悪者扱いされてますね。あの人」


 そして、おまけもそこにはいた。


「あたし、あんたのこと許してないから」

「野薔薇優……」


 何でこんなところにいるんだろう。ただでさえ学校に来ることが少ないというのに、今日は休日だぞ。もしかすると、先週のように今日もゲストとしてきたのかもしれない。

 俺のその目を見てさらに敵意を見せてくる。


「そういえばなんだけどさ」

「なによ」

「サインください」


 俺のその言葉に一瞬きょとんとする。しかし、すぐに若干嬉しそうな顔をして。


「な、なんだあんたもあたしのファンなんじゃない。この前のはツンデレってことね」

「いや、高く売れるかなって」

「あたしのサインを商売にする気!?相変わらずふざけてるわね!」


 ふざけてるのはお前だ。俺は先輩だぞ。そして、お前そんなキャラだったんだな。やっぱテレビのあれは猫かぶりか。

 俺たちが盛り上がっていると、その輪に入れずに一歩引いている女子生徒が一人。


「ほら、今がチャンスだぞ。ここで輪に入ることが友達作りの第一歩だ」

「なんで私が、友達になりたいけど勇気が出ずに遠巻きに見ているだけしかできないボッチみたいに言ってくるんですか!」

「それだけ的確なツッコミができるってことはその通りってことだ」

「違いますから!」


 一体何が違うというのか。前花は、やはりこちらに目を合わせようともしない。


「ただ単にあなたと話したくないだけです」


 なるほど、俺が野薔薇ちゃんと話してたから。


「え、焼いてんの?」

「死にたいんですか?」


 それは怖いわ。言うことがどんどん過激になってきてません?

 こちらを睨みつけたその目は今まで以上に冷たいものだった。


「はーい皆さんいいですかー」


 部屋に入ってきたのは、乱入クエストのお姉さんだった。


「ここに集まっていただいた方々は、実行委員として問題児の方々でーす」


 なら呼ぶなよ。

 誰もがそう思ったことだろう。しかし、周りを見ると意外にもみんな納得してた。いやなんで?


「通常の実行委員は例年行われているちゃんとしたスポーツ科の交流会を手伝ってもらっています」

「ちゃんとしたって」

「うるさい!話を聞きなさい!」


 一言話しただけで怒られてしまった。どうやら相当嫌われているらしい。


「皆さんには来年以降この学園に入るかもしれない、現在中学生の方々に劇を見せていただこうかと思います」

「劇?」

「私たち何の練習もしていないんですけど」


 一人だけ余裕そうな野薔薇ちゃんは、芸能人でドラマだって出たことあるアタシには余裕だわとか思ってそう。


「台本さえあれば問題なしね」


 うん、やっぱ思ってたわ。


「安心してください。台本なんてありませんので!」

「台本ないの!?」


 一人で漫才をやらないでほしい。笑ってしまうから。ヤバい、堪えられん……


「ぷっ」

「今あんた笑ったわね!あんたも同じ境遇なの分かってんの?」


 とりあえず絡まないでください。怖いんで。


「皆さんにやっていただく劇は桃太郎です。これなら台本なくても大丈夫ですよね?」

「あ、桃太郎か」

「なら……」

「も、桃太郎ね。なら楽勝よ」


 こいつらは何を安心しているのだろう。俺たちがやるのは桃太郎の劇だぞ。そして相手が中学生。


「これめっちゃ恥ずくね?」

「「「「っっ!?」」」」


 俺の発言で皆気付いたのだろう。素人が即興で児童向けの劇を中学生に見せるという苦行に。


「え、というかこれなんですか!?来年はいるかもしれない人たちにそんなもの見せてどうするんですか!」


 菊川が必死に抗議する。

 しかし、それは予想していた質問だったのかノータイムで答える。


「悪いことをした人たちと優等生とで差を見せると、ここに入った後も頑張ろうって思えますよね!」

「俺たち悪いことをした人!?」

「え、ちょっと待って。今の言い方だと反対側はすごくいい思いしてるっていう風に聞こえるんだけど」

「してますよ」


 にっこりと笑ったお姉さんは、おそらくこの後あちら側に言うのだろう。

 そして、毎年週明けの実行委員が笑顔になっていたのって……それかぁ!ただただいい思いをして笑みがこぼれてただけかよ!



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