21話
今日は土曜日最高だ。
昨日の疲れもあり、昼まで寝てしまった。
スマホの電源をつけると、そこにはやはり大量のメッセージ通知がたまっていた。
時間を見ると、一時にはもう力尽きたみたいだ。そして今日の十一時から再開している。
「がんばってんなぁ」
そこでまたメッセージが届く。
『がんばってんなぁ、じゃないです!とにかく今すぐに金太郎像まで来てください!』
こ、これはもしや。
「デートの誘いか!」
『違いますから!色々説明したいのに先輩がメール無視するからですよ!』
「またまた~」
『あー!もう!』
女の子を待たせるわけにもいかないので、急いで準備をする。金太郎像って言ったらバイクを飛ばして十分ってところか。
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金太郎像までつくと、そこには私服姿の前花がいた。
「よう」
「あ、先輩……ってなんでバイク引きずってるんですか!」
「いや、バイクで来たから」
「待ち合わせ場所までバイク持ってくる人がいますか!よくこんな一通りの多いところまで持ってきましたね」
急いだ結果がこれだ。仕方ないだろう。
「ここじゃあ何だし、移動しようぜ」
「あ、はい」
「じゃあデパート集合な」
「はい……え?」
「じゃ」
そう言って立ち去ろうとする俺の肩を急いで捕まえる。
「なに?」
「何?じゃないですよ!一緒に行かないんですか?せっかく集まったのに」
と、言われてもなぁ。
「まだ免許取ってから一年たってないから後ろに人は乗せられないし」
「じゃあなんでヘルメット二つあるんですか」
「リア充感演出するために決まってんだろうが」
「決まってるんですか……」
「じゃあな」
「あ、ちょっと!」
いつまでもこんなところで話していられない。めっちゃみんなに邪魔って目で見られるし。
デパートへは俺が先に着いた。
待っていると、少し怒った様子の前花が早歩きで来た。
「そう怒んなって」
「誰のせいですか!」
「すぐに他人のせいにするのはよくないぞ。猿みたいなろくでもない人間になるからな」
「猿はそもそも人間じゃないですし、デパートにすぐ行くなら最初からここ集合でよかったじゃないですか!」
猿のことを人間じゃないとは、こいつも中々に言う奴だな。今度伝えておこう。
「とりあえず飯でも行こうぜ」
まだ起きてから何も食べてない。腹が減って漏れそうだ。
店に入り頼んだのは、スパゲッティのガチゴリラというサイズのもの。
「先輩、本当に食べられるんですか?」
「大丈夫大丈夫。俺今腹減ってるし」
まあ食べられなかったらその時考えよう。
「で、話を聞かせてもらおうか」
「えっと、どこから話しましょうか」
「そりゃ、最初からだろ。俺のアドレス知ってることと、どうして俺の部屋の声が聞こえているのかってこと」
「はい、じゃあ昨日部室を出てからのことを話しますね」
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私は少し、いやかなり怒っていた。
なんなの!あの無神経な人。デリカシーがない人ってああいう人のこと言うんだ。
普段からツッコミのテンションが面倒臭いとか言われることはあったけど、舌打ちまでされたことなんてなかった。あ、思い出したら涙が。
それに、野薔薇さんのことだってそう。分かっていてもわざわざ口に出す必要ないのに。確かに私もそう思ったけど。そこで口に出さないのが人として当然の気づかいなんだと思う。
「優ちゃん、機嫌直してください。私は一緒に居られて楽しかったですよ」
「そうだよ。元気出して」
「ありがとう、みんな。でも否定はしなかったね」
まあ事実だから。でもそれは誰も口にしなかった。無言が肯定の意を示してしまってはいるけど。
「そういえば半野大丈夫かな」
確かに、あの時も先輩はひどかった。まさかあんなにすぐに仲間を見捨てるなんて。
それにしても気まずい。ここにいる四人はいつも教室で一緒にいる人たち。それに部活動も一緒だ。どんな活動しているのかはよく分からないけど。それに対して、私はいつも別のグループにいる。
先輩は否定したけど、私にだって友達はいるのだ。……確かに最近遊ぶことは減ったかもしれないけど、あれはきっと勉強や部活が忙しいから。……大丈夫だよね?
「……どうしたの?」
その時、声をかけられた。話しかけられたことも驚いたし、それをした人物も予想外だった。
「ササキさん……どうもしてないよ。ただ、あの人酷かったなぁって」
「確かに、最低な男だった」
「まあ、変な人だったよな」
「面白い人ではありましたけどね」
「まあ少しデリカシーはなかったかな」
私がその話をすると、皆それぞれが思っていることを口にし始めた。
「あの人!ホントにサイテー!」
特に反応を示したのは野薔薇さん。もうなんか可哀そうになるくらい暴言吐いてた。
それを聞いた天堂さんはなんだか少し興奮してたけど。
「仕返しする?」
それを言い出したのもササキさんだった。
「仕返しって」
「ここにあの人のアドレスがある。あと、あの人のカバンに盗聴器も付けた」
……何を言っているんだろう。スパイごっこにはまっているのかな?
「今何してるか聞いてみる?」
そう言われて渡されたイヤホンを耳にすると、
『ここどこだよ!?』
『あのチビについてきたから道なんて分かんねぇぞクソ!』
あ、うん。これガチの奴だ。道に迷うなんていかにもあの人がしていそうなことだ。
「これを使えば呪いのメッセージを演出できる」
やるやらないはあなた次第。そう言われてつい、受け取ってしまった。
せっかくだから……
昼間の意趣返しのつもりで少しだけ送ってみよう。