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20話

「あー!また負けちゃったぁ」


 しばらく遊んでいると我慢できなくなったのか、「私も」とか言って入ってきた野薔薇ちゃん。負けが続いて悔しそうにしている。


「もうこんな時間か」


 時計を見ると、既に午後の五時を回っており確実に交流会は終わっていた。


「そういえば連絡来なかったな」

「もう忘れてるのかも」


 いや、それは言ってやるな。可哀そうだろ。ほら、少し泣きそうになってんじゃん。

 ササキは思ったことをすぐに口に出すな。


「じゃ、じゃあお持ち帰りしてもいいですか?」


 言い訳ねぇだろ。そこまで行くと犯罪だわ。


「あ、私家の手伝いがあるので帰りますね」


 こいつら本当に自由だな。誰一人として協調性がない。


「よし、てことで!解散!」

「本当にテキトーですね」

「仕方ないだろ。連絡待ってたのに来なかったんだから。俺は悪くない。もし悪いんだとしたら、連絡をよこさないあっち側か、その価値がなかった野薔薇ちゃんが悪い」

「ひっ、ひっく」


 あ、ヤバい。


「先輩それは流石に」

「優ちゃんをいじめないでください!」

「安定のクズ」

「ひどいですよね」


 本物のごみを見る目で俺のことを見てくる。いや、確かに言い過ぎたけれども!いや、まだだ希望はある!何も言っていない前花なら、何か俺の擁護をしてくれるかも!なんたって最初の友達なんだから!


「一日に後輩の女の子を二人もなかせるなんて普通の神経じゃできませんよね」


 完っ全に怒っていらっしゃる。


 そうすると俺を残して全員が同じタイミングで出て行った。俺は気まずさを感じて少しだけ遅れて部屋を出たわけだが。


「ここどこだよ!?」


 マジでここどこ?現在地すら把握できてないんだけど!こっからどうやって帰るの?誰か教えてくれよ!


 家に着く頃には既に午後の八時を回っていた。


「ったく、今日はとんだ厄日だぜ」


 そして、メールがたまっていることに気が付く。こんなにもメールが来てるのはいつ以来だ?高校入ってすぐにみんなと交換したときくらいだろうか。


 手始めに一番上にあるやつを開く。


『悲しいです』


 え、ナニコレ。めちゃくちゃ怖いんですけど!知らないアドレス……

 つ、次だ。次を開けよう。


『許さない』

「ヒェッ!」


 なんだよこれ。見てみると、たまっていたメールは全て同じアドレスからだった。


「マジで怖い」


 そしてまた通知音がなる。


 恐る恐るそれを開くと


『怖いですか?』


「めちゃくちゃ怖いよ!」


『ですよね』


「うんうん!」


『ならちゃんと謝って』


「謝るって何を……ってあれ?」


 何で普通に会話してるの?俺全く返してないのに。


「なんで俺の言葉に反応してメールが来るの!?」


『まあそれは置いといて』


「置いとけるか!」


 一体何なんだよ。怖いから、まだ家族がいるリビングへ行こうとする。


『ちょっと待って!』


「待たない!怖いし!」


『リビングへ行くと家族も呪う』


 家族も呪うだと……俺ってやっぱ呪われてんのかよ!


「それならもういっそ家族で一緒に呪われてやる!俺一人だけがこんな思いしてたまるか!あいつらも道連れだあああ!!」


『分かったから!呪うのやめたから!部屋から出ないで!』


「信用できるか!」


 俺はそのまま自分の部屋の扉を開け、リビングへ行く。


「あれ、なんでリビングの電気ついていないんだ?」


 さっきは確かいたはずなのに……まさか、もう呪われちまったっていうのか!?

 メールは来ない。ヤバい、このままだとヤバい!

 急いで部屋に戻る。


『あ、戻ってきてくれた』


「ごめんなさい!俺が悪かった!だから家族を返してください!」


『え、家族を返してってどういう?』


「リビングに行ったら誰もいなかったんだよ!この家の電気ここしか点いてなかったんだ!これあんただろ!」


『私はそんなこと……』


「嘘つけ!俺の家族を、返せよ……!」


『思い出してみて!家族は何も言ってなかったの?』


「何も知らない!さっきまでは確かにいたんだ!夕飯はデリバリーでも頼めって言われて」


 そいえばなんで今日はデリバリーだったんだろう。みんなは食べ終わったのだと思ってたけど、そもそも料理をした形跡が全くなかった。

 なんか忘れてるような気がするな。


 ……そうだ、昨日確か

「明日の夜から私たち旅行でいないから」

 って言ってたような気がする……


「なぁんだただの旅行かぁ」


『よかった。なにもなくて』


「いやー、ありがと。おかげで心配が解消されたよ」


 …………って違うだろ!もとはと言えばこいつのせいで心配になってたんじゃねぇか!


「あんたさっきから何なんだよ!」


『…………』


「もうビビらねぇからな!あんたが実はいい奴だってこと俺は知ってしまったからな!」


 そうだ、他人の家族の心配をしてくれるような奴いい奴に決まっている。


「さあ、答えろ!」


『前花です……』


「え?」


 今なんて書いてあった?心を落ち着かせてもう一度画面をのぞき込む。


 うん、見間違いじゃなかった。


「前花?」

『はい』

「なんで?」


『説明すると長くなるんですけど』


「じゃあいいや」


 メールの送り主も安心したところで、寝るとするか。電源さえ切っておけば気にならないだろう。


「おやすみ」

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