表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/50

18話

「ぎゃあああああ!!!逃げろおおおお!!!」

「待てコラああああああ!!!!」

「ああ!なんでこうなるのもう!」


 俺は今複数のヤンキーに追われている。どうしてこうなったのか、それは数分前に遡る。



 ---------


 第二グラウンドって結構遠いな。

 ここのあたりをあまり通ったことのない俺は完全にササキ頼りになっていた。その指示に従い進んでいくが、この調子だとまだ時間がかかりそうだ。


 そんな時だった。


「あれ?」


 目の前に三人のヤンキーグループがいた。そして俺はそいつらに見覚えがある。


「去年の脱出ゲームの人たちだ」

「あん?」


 つい出てしまった声に反応して三人は一斉にこちらを向く。相変わらず人相の悪い奴らだ。なんで学校が休みのこの日にいるんだろう。


「テメェ、誰だ?」

「あ、覚えてないならいいや」


 するりと横を通り抜けようとするが、がっちり肩を掴まれる。

 そしてなぜか後ろの六人はついて来ようとしない。


「そっちには第二グラウンドしかねぇぞ」

「そこに用があるから」

「そっちはダメだ」


 通ろうとするとなぜか通せんぼしてくるヤンキーたち。

 うん、なんで?


「この先にはな!野薔薇優ちゃんんがいるんだよ!テメェみたいな怪しい男を通せるわけねぇだろ!」

「お前らは一体何なんだよ」

「ふん!俺たちはな!」

「野薔薇優ちゃん勝手に親衛隊だ!」


 ああ、ただのファンね。しかし、俺たちはこいつらにかまっている暇はない。


「どけよ。俺たちはその野薔薇優に用があるんだからな」

「なんだと?」


 ギロリとこちらを睨んでくるヤンさん。しかし、俺はそんなものでは怯まない。後ろで後輩たちが見ているからだ!俺は大丈夫だと伝えるために後ろを振り返る。


「なんでそんな離れてんの!?」

「無視するんじゃねぇぞ!」

「まあまあそう怒んなって」


 胸ぐらをつかまれてようやく焦りだす。しかし、それを表に出すほどチョロい男じゃないぜ!


「優ちゃんに何の用だ」

「ぷっ、優ちゃんて、友達でもないのに馴れ馴れしすぎだろ」


 顔を真っ赤にして怒り出すヤンさん。


「何の用かって聞いているんだ」

「いやまあそりゃ、人質にするためだ、け、ど?」

「人質?」


 ここまで言って、自分の失言に遅かれながら気づく。



「逃げるぞ!」


 俺がそういう前に一年生はこちらに背を向け走っていた。

 あいつら俺のこと見捨てやがった!

 全力で走り、ようやく追いつく。


「待ちやがれぇ!」

「ぎゃあああああ!!!逃げろおおおお!!!」

「待てコラああああああ!!!!」

「ああ!なんでこうなるのもう!」


 そんなことを言いながら若干楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。


「ササキ!こっから第二グラウンドに向かうには!」

「私をシリみたいに使わないで」


 いつも真っ先にばてるササキは今回は、これまでの疲労からか最初から菊川におんぶされていた。


「次のところ右に曲がって」


 ササキの指示に従い、何度か角を曲がると開けた場所が見えてきた。

 あそこだ、間違いない!


 グラウンドに出ると、大勢の人間が集まり、棒倒しをしていた。

 おそらく交流会最後のゲームだろう。

 だが、俺たちの目的はそんなものじゃない。

 野薔薇優はどこだ!……いた!

 特設されたステージの上にいる。



「おい、お前ら足を止めるなよ!」


 今日だけでかなり走っている奴らの顔には既に疲労の色が見え始めている。

 それに対して後ろから追いかけてくるヤンキーたちはまだまだ元気そうだ。


「間に合え!」


 そして、ステージに全力で走っていった結果……



「どうやら、間に合ったみたいだな」

「あなたたちは一体何なんですか!?まだ棒倒しは終わっていませんよ!」



 突如現れた俺たちに驚き、動揺を見せる実況姉さん。



「お、俺たちはな」


 やばい、息が。

 そして、そのタイミングでヤンキーたちもステージに到着した。

 そして、用意しておいた言葉を言う。


「あいつらが!野薔薇優ちゃんを人質に取ろうとして!それを伝えに来たんだ!」


 俺の言葉を聞いて、一緒に来た奴らは「うわー」という目をしている。しかし、これが今の最善手だ。


「なんですって!?」

「わ、わたしのことを?」

「そうだ!間に合ってよかったぜ」


 ヤンキーたちは「え?」みたいな顔をしている。


「ほらほら!優ちゃんなんて馴れ馴れしく言ってますよ!あいつらはストーカーの変態なんです!」


 だが、俺一人の言葉では弱い。

 そこで天堂に小声でこう言った。


「おい、今なら野薔薇優ちゃんを助けたヒーローになれるぞ!」


 その声に耳を引くつかせた天堂は、一瞬笑顔を浮かべたかと思うと真剣な顔になって。


「サイテーです!あの男たちはこともあろうに野薔薇優さんのことを襲おうとしていたのです!」

「あれ、さっきは人質って……」


 ヤバ。


「あいつら最低だ!この行事に乗じてアイドルを襲おうとしやがった!お前ら最低だな!」

「そ、それはお前らだろ!俺たちに罪を擦り付けようとしてんじゃねぇぞ!」


 漸く状況を理解したらしい。だが、もう遅い。



「あ、あいつら俺たちに罪を。野薔薇さんどう思いますか?俺はあなたに全てを託します。あの人相の悪い男たちと、守るために全力で駆け付けた俺たち。どちらを信用しますか?」

「あ、えっと、あなたたちを信用します」


 ははっ!見たか!これが顔の違いだ!ブッスーがいなくて本当に良かったぜ!


「さあ、やっておしまい!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ