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14話

「それでは、点呼をとるので呼ばれた班の代表は前に出てきてください」


 実行委員と書かれた腕章を身につけたお姉さんが、舞台の上に立ち進行している。



 さて、ここからだ。ここで呼ばれなかったらゴールが違うことになる。

 他の面々も緊張した面持ちだ。



「ハァハァハァ」



 まだやってたのかよ!!






「俺らのチーム番号ってなんだっけ?」

「三十九番ですよ。全く、しっかりしてください」


 前花にまたも呆れられる。お前は俺のおかんか。




「三番、七番、十一番、十七番、……」


 番号が近くなるにつれ、心臓の脈打つ音も大きくなる。


「二十三番、二十九番、……」




 さて、もうそろそろだ。


 隣の前花も祈るようにして手を合わせている。


 頼む、呼ばれてくれ!




「三十三番、三十九番ーー」



「…………よっしゃぁぁ!!!!」

 


 他のグループが静かに談笑している中、俺たちは大袈裟に喜んだ。



「やったね!」

「よかったぁ」



 女子はハイタッチをし、男どもは肩を組む。

 久しぶりにこんなにも嬉しい気持ちになった気がする。





「いやー、半野の咄嗟の判断のおかげだぜ!あそこで回り道してたら絶対間に合わなかったもんな!!」


 自分より一回り大きい背中をバシバシと叩く。

 それに対して、その大きな体躯の持ち主も満更ではなさそうな顔をしてこう返す。


「ふっ、俺の前に立ち塞がるものは何であろうと排除する。それが俺の生き方だ」


「かっけぇ!かっけぇよ半野くん!」


 意外とノリいいなこいつ。まさかこんなキャラだったとは。



「さぁ、先輩。早く前に行かないと」


 一通り喜んだところで、菊川が促す。


「そうだな。遅れてゴール扱いにならなかったら困るし行ってくるぜ!」



 テンション高めに返事をする。


 しかし、



「なお、三十九番のチームは障害物を破壊して侵入したため失格となります!」



「んぉ?」

「え?」

「は?」


「…………」


「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」




 俺は思わず前に出て抗議の声を上げる。



「ちょ、待って!俺ら失格!?」



 それに対して秒で、しかも笑顔で返すお姉さん。




「はい!失格です!侵入者の皆さんはこちらへどうぞ!」

「し、侵入者!?俺たちって侵入者なの!?」

「もちろん!侵入禁止経路を通ったあなた達は立派な侵入者です!」



 こ、これは予想外の結果だ。いや、普通に考えたらそうか。障害物が設置してあるってことは通るなってことだよな。これは障害物リレーではないんだから。



「なにが、『俺の前に立ち塞がるものは何であろうと排除する』だよ。排除しちゃいけないものだってあるだろ」



 俺がボソッと言うと、半野は顔を真っ赤にしている。怒っているのか、恥ずかしいのか、はたまた両方か。おもしろいからもう少し続けてみるか。



「『ふっ、それが俺の生き方だ』……かっこいいなぁ!オイ!」

「ぷっ」

「や、やめろぉぉぉ!」



 どうやら恥ずかしかったらしい。

 それを見て、菊川は頑張って笑いをこらえているように見える。




「どうだ?今俺はお前の目の前に立っているぜ?立派な障害だ!さぁ!排除してみろよ!!」

「ぶっ、くっ、ははははは!」

「……頼むからやめてください」



 とうとう笑いを堪え切れなくなった菊川の声と顔を真っ赤にした大男。

 さらにはそれを煽り続ける俺の声。



「お前における障害物とはなんだ!言ってみろ!」

「ぷっ」

「ははははははははは」

「ひひひひひひひひひ」

「うふふふふふふふふ」

「えへへへへへへへへ」

「オーッホッホッホッホ」



 他にもちらほら笑っている者もいる。

 いや、最後の5人おかしいだろ。絶対合わせにきてるぞ。気持ち悪りぃ。




「 ひ、ひでぇ……」

「鬼畜」

「流石にこれは……」



 声のした方を向いてみると、明らかに1年生が引いていた。

 いや、そんな目で見るなよ。確かにちょっとやりすぎたかもしれないけどさ。



 いつまでもこんなことをしているわけにはいかないので、お姉さんの指示通りの場所へ行く。


「侵入者となった皆さんは要反省ということで、反省室へ行ってもらいます」


「マジで!?そんなに重大なことだったの!?」


「反省室?」


 斎藤は知らなかったのか、聞いてくる。

 他の面々も似たような顔だ。

 どうやらまだ一年生は知らないようだな。


 反省室、悪いことをした時にいれられる場所。



「え?それだけですか?」

「ん?他に何かあるのか?」


 どんなことを想像していたのか、前花がそんなことを言った。



「なんでさっきあんなに焦ってたんですか……」


「ノリ」

「ノリ!?」

 




 テンション高めでツッコんでくるあたりこいつも中々ノリいいよな。




「あのー、早くしてもらってもいいですか?」




 全然動こうとしない俺たちに嫌気がさしたのか、お姉さんが移動を促してくる。




「すいません、今行きまーす。よし、お前ら付いて来い!」

「偉そうですね」



 そうこうして、一年生を後ろに従え、反省室へ向かうのだった。





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