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9話

すいません、もう少し頑張ります。

「写真だってありますから!」


 そう言って見せてきたのは女の子3人が楽しそうにピースしている写真だ。


「これ中学の修学旅行の写真じゃねえか!高校での友達の話をしてんだよ!!」

「失敬な!それくらいわかってますよ!この子たちが同じクラスなんです〜」


 なんかめんどくさくなってきたな。


「はいはい、もういいよそれで。そういうことにしといてやるよ」

「また……っ。はぁ。もういいです。こっちも疲れましたし」


 でかい溜息を態とらしく吐く。

 俺も対抗して溜息を吐く。

 一瞬ムッとした顔をしたかと思えば、呆れた感じでまた溜息を吐く。

 俺も対抗してすかさず溜息を吐く。

 それに対して、こちらを少し睨む。俺は睨み返す。


「……」

「……」

「真似しないでくださいよ」

「真似じゃない、対抗してるだけだ。バトってるだけなんだよ!」

「わけわかりませんよ!」


 こいつ、男と男のバトルを……。こいつ女だったわ。


「先輩って結構めんどくさい人ですね。話してて凄い疲れます」


 そんな事はないと言い返そうとしたところで、別の方向から声がかかる。


「仲よさそう」


 そう声を発したのはこちらを見て微笑んでいる斎藤だ。


「まあ、俺はこいつの最初の友達だからな!」

「違いますよ!私の初めての友達は真奈ちゃんですから!」


 多分真奈ちゃんてのは、小学校から大事にしてるクマのぬいぐるみだな。

 そんな俺たちのやり取りに他の面子は苦笑を浮かべる。お互い様だ。


「あの、先輩。この交流会ってなにをするんですか?」


 このままでは終わらないと思ったのか、菊川が話を逸らす。


「んー、交流会っての毎年やることが違うからなあ」

「へー、じゃあ去年はなにをしたんですか?」

「……」

「先輩?」

「……脱出ゲームだ」


 去年の交流会。それは思い出したくもない記憶だ。一つの教室に二〜三班集められ、みんなで力を合わせて脱出!というのがコンセプトで、脱出した後に第二ゲーム、第三ゲームと続いていくはずだった。

 そう、はずだったんだ。俺たちは第二、第三のゲームには参加していない。なぜなら、すべてのプログラムが終了するまでに脱出することができなかったから。


 俺たちの他に集まった二チーム。片方はぼっちの寄せ集めのようなチームで、ただ一人を除いて誰も言葉を発さなかった。その一人でさえ、普段口数が多いわけでもないだろうに、ただ空気に耐えられなかったのだろう。頑張って声を出していたが、誰も相手をしない。見ていて痛々しかった。


 もう一チームは、ヤンキーというか、何というか頭の弱そうな人たちの寄せ集めだった。

 そして俺たちのチームは猿とブスその他。……カオス、その一言に尽きる状況だった。

 本来なら、チームごとに配られているヒントとなるモノを持ち寄って一緒に知恵を振り絞るはずだったんだが。

 ヤンキー班はギャハギャハ言ってるだけだし、ボッチ班は一人がから回ってるだけ。まともそうだった先輩はひたすら鶴を折っている。何やってんの!?俺たちの班は猿が三点倒立し始める始末。このままじゃいけないと思ったのが、俺たちの班の一人。今のクラスの委員長だ。


「とりあえず、この教室を出よう。な?」


 委員長の声に真っ先に反応したのはヤンキーの一人。


「うるせぇ!」


 委員長をぶん殴った。もちろん委員長はヒョロヒョロなので勢い余って吹っ飛んだ。

 そこで委員長はキレた。


 委員長の噛みつき攻撃!



「イテェェェ!!?」



 これには流石に俺もビビった。痛そう。委員長って意外と血の気多いんだな。しかも噛みつきって……小学生かよ。

 そのまま委員長は大暴れ。猿も便乗して大暴れ。ブッスーはそんな中腕立てをし、ボッチ班は相変わらず一人が空回り。この状況でよく空回ってられるな。逆にすごい。そして、ヤンキーも大暴れ。先輩は最後まで鶴を折っていた。いや、止めろよ!


「聞きたいか?去年のことを」

「いや、今全部話しましたよ」


 菊川からのツッコミを無視し、もう一度始めから話す。


「一つの教室に三チーム集まってな……」

「あれえ!?こっちでも無視!?しかもまた始まってるし!」


 そんなアホなことをやっていると、周りの視線が一点に集まっていることに気づく。どうやら、もう始まるようだ。


「では!今年度の交流会を!はじめますか??」


  ((((なぜ疑問形?))))


 心が一つになった。






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