誤字からはじまる ももたろう
むかし むかし あるところに、おじいさんと おばあさんが すんでいました。
おじいさんは やまへ 芝刈りに。
おばあさんは かわへ 宣託をしに いきました。
おばあさんが 「きぇええええええええええい!! かみよぉ、かみよぉおおおおお! ここに おりたまええええぇぇぇぇ!! われのみに おりたまえぇぇえええええ!! きええぇぇえええええい!」 と、かみさまに いのりを ささげていると、かわの うえから どんぶらこ、どんぶらこと、おおきな 腿が ながれてきました。
「おお、これは これは、おおきい 腿肉だ」
しかより おおきい 腿をみて、おばあさんは めを まんまるに みひらきました。
さっそく 腿をひろって、いそいで 居江 に かえりました。
ゆうがた、おじいさんが やまの 芝刈りから かえると、いえに おばあさんが いませんでした。
「きっと じっかに かえったんじゃな」
おじいさんは 芝刈り機を かたづけて、あさ の のこりの みそしるを あたためて のんでから、ねむりに つきました。
さて、じっかに もどった おばあさんは、腿を にくぼうちょうで すぱーんと わりました。
すると、なんと!
なかから ちいさな アカゴが でてきたのです。
「あんれまあ、おさかなが でてきたわ」
おばあさんは じぶんより としおいた りょうしんに せいを つけさせたいと おもって いたのですが、すでに ちいさな さかなが、腿肉の なかみを ほとんど たべてしまっていました。
おばあさんは うみの さかなが かわで とれたことに たいそう おどろき、じっかの りょうしんに 「このこは かみさまの おつかいじゃ」と さとされて、アカゴを そだてることに しました。
ちなみに、「アカゴ」とは きんきちほうの いちぶの ほうげんで、せいしきな なまえは 「ハオコゼ」と いいます。
アカゴは よくたべて すくすくと おおきくなり、やがて りっぱな "わかうお" に なりました。
あるひ、おばあさんの もとに、おじいさんから てがみが とどきました。
「ばあさんへ たいへんなことが おきた。もどって おくれ じいさんより」
おばあさんは おじいさんの ことが しんぱいに なり、アカゴを つれて、おじいさんの ところに かえりました。
「おお、ようやく かえって きたか、ばあさんや」
「ながく るすにして ごめんなさいね、じいさんや」
「んん? その さかなは てみやげか?」
「いんや。これは あたしの こどもです。かわに ながれて きた、かみさまからの おくりものです。 なにかの 腿肉から うまれたから、このこには ももたろうと なまえを つけました」
おじいさんは おばあさんの しんこうしんを よくしっているので、ふかく といつめないことに しました。
おじいさんと おばあさんは、ももたろうが ねしずまったころに、むらの しゅうかいじょに かおを だしました。
あつまっている そんちょうと むらびとたちは、とても くらいかおを していました。
「おお、おばあさん!」
そんちょうが たちあがりました。
「たいへんなんだ、おばあさん! このむらに おにが やってきて、むらの わかもんを みんな つれていってしまったんだ!」
「なんだって? そりゃあたいへんだ!」
さらに、きんちょうした むらびとたちが、うわさを くちにします。
「きけば、このくにの おとのさまの おしろも、おにに おそわれたんだってよ」
「はやく おにどもを たいじしねえと、また むらが おそわれるぞ」
「さらわれたやつは、もう おにに たべられたかも しれねえなあ……」
「おばあさん、かみさまに きいておくれ。わしらは どうしたらいい?」そんちょうが いいました。
おばあさんは うなずいて、おいのりの どうぐを もって てんを あおぎます。
「うほぉおおおお! きえええええええぇええい! かみよぉぉぉぉぉ かみよおぉおおおおおお!! どうかわれに! われに ちえを さずけたまえぇえええええええええ!」
どんしゃら、どんしゃららん。
どんしゃら、どんしゃららん。
かなものの おとが なりひびきます。
とつぜん、ばたん、と おばあさんが たおれて。
むっくりと、おきあがりました。
「……おつげが あった。ももたろうを、おにたいじに むかわせるが よいと」
「ももたろう?」
「やまがみさまの こじゃ。ももたろうなら、かならず おにを たいじしてくれるだろう」
おばあさんは とても しんけんな かおでした。
「おばあさんが いうなら……」と、むらびとたちは、ももたろうを おにたいじに むかわせる ことに きめました。
「……ばあさんや。さすがに、さかなに おにたいじは できんじゃろうて」
おじいさんが こっそり おばあさんに いいますが、おばあさんは かたい ひょうじょうのまま、なにも いいませんでした。
あさに なってから、おじいさんとおばあさん は、ももたろうに おつげのことを はなしました。
すると、ももたろうは むなびれを ぱたぱたと させて、あかるい こえで いいました。
「わかった。ぼく、おにたいじに いくよ」
「「な、なんじゃと!?」」
おじいさんとおばあさんは びっくりぎょうてん。
ももたろうが ふたつへんじで ひきうけたことより、さかなが しゃべったことに たいそう おどろきました。
さて、ももたろうは たびにでる じゅんびを はじめました。
おばあさんは ももたろうのために、ゴカイとアカムシと、ももたろうが だいすきな こえびを まぜた、だんごを こさえました。
おじいさんは わりと げんじつてきな ひとなので、芝刈り機を うって、たびの ひようを つくりました。
「ほら、ももたろう。このえびだんごを もって いきなさい」
「ありがとう、おばあさん」
「これも もっていきなさい。おにがしままで なら、これくらいで たりる じゃろう」
「ありがとう、おじいさん」
ももたろうは たくさんの ねりエサと 少しの おかねを もって、おにたいじに むかいました。
ももたろうが ぱたんぱたんと みちを あるいて いますと、とつぜん、めのまえに おおきな ばけものが あらわれました。
「うまそうな さかなだな。おれの かてになれ」
したなめずりをした ばけものが、ももたろうに かみつきます。
ところが。ばけものは「ぎゃあ!」と ないて、くちを はなしました。
「いた、いたたたたた……おまえ、どくを もっているのか!」
「ぼくは ももたろう。オコゼの なかまだから、せびれに どくが あるんだよ」
オコゼの どくは、ヒトが びょういんに はこばれるほど つよいのです。
ももたろうは、ばけものが じぶんを たべよう と したのは、おなかが すいているからだと おもいました。
「ぼくの おともに なるのなら、えびだんごを あげるよ」
ももたろうは ねりエサを ばけものに あげました。ばけものは くちが じんじんと いたいので、だんごを かまずに のみこみました。
「……ありがとう。なんにちも たべて いなかったんだ。おかげで はらが みたされた」
ばけものは さるの かおを していますが、からだは いぬで、せなかから きじの ような つばさが はえていました。
「おともになれ といったが、ももたろうは どこに いくんだ?」
ももたろうは じじょうを せつめいしました。
「なるほど、おにがしまか。さかな いっぴきで、よく いくきになったな。こんがり やかれて、ごちそうに されちまうぞ」
「ぼくは かみさまから うまれた こどもだから、だいじょうぶ なんだ。でも、あなたが いっしょに きてくれると、こころづよいな」
「……いいだろう。さかなに ヒトの うんめいを せおわせているのも、ひどいからな。おれも いこう」
かいぶつは いがいに ぎりがたい ぶつでした。
「おれは "ぬえ"だ。よろしくな、ももたろう」
ゆうめいな ようかいを おともにして、ももたろうは ふたたび ぱたんぱたんと、みちを すすんでいきました。
やがて、ももたろうは うみに たどりつきました。おにがしまは もうすぐです。
おじいさんが くめんしてくれた おかねで ふねを かりようかと おもいましたが、「さかななのに ふねに のるのか?」と、ぬえに いわれました。
「たしかにそうだ」と なっとくした ももたろうは、およいで おにがしまに むかうことにしました。
でも、ぬえは つばさが あるので そらを とびました。
しまに じょうりくした ももたろうは、ぬえと いっしょに、おにがしまの おくに すすみます。
ひときわ おおきな どうくつの なかに はいると、ほとんど ふくを きていない つよそうな おとこのひとたちが、しろいはを「にっ」と むきだして、ももたろうに わらいかけました。
「ようこそ ももたろう! ここは お兄ヶ島だ!」
お兄ヶ島は、たくさんの わるい お兄さんたちが すんでいる しまでした。
「おや? ももたろうは おもったよりも ちいさくて、ひらひらとした オコゼだな?」
「そこの ぬえも、とらのように たくましくないぞ?」
「だいじょうぶさ! ここに いれば、ももたろうも オニダルマオコゼくらいに、ごつごつした おとこまえに なれるんだ!」
「レェッツ! ハッスル!」
「レェッツ! マッスル!」
「さあふたりとも! ここで いっしょに、オトコに なろう!!」
ももたろうは こくびを かしげましたが、なにかに かんゆうされているのだと おもいました。
「ぼくは いっしょに オトコには なれないよ」
「なんだって?」
「メスだから」
そのことばを きいた お兄が ひとり、たおれました。
「アニキいいいい!」
「メスうおだ! おとこの はなぞのに メスうおが まぎれたぞおおお!!」
お兄たちは パニックを おこしています。
しめた、と おもった ももたろうは、さかなの こしを ぴちぴちと おどらせました。
「お兄ちゃん︎♡」
「うぎゃあああああああ!」
「お兄ちゃん、だいすき︎♡」
「ぎょえぇぇぇぇぇえええ!」
「お兄ちゃんの さけの さかなだよ︎♡」
「ぎゃあああああ! くるなああぁぁああ!」
ももたろうは えいえい︎♡と、どうくつの なかで はねまわります。
それは、あびきょうかんの じごくえず でした。
ももたろうの いもうとパワーに あっとうされたお兄たちは、へなへなと こうさんの はたを ふりました。
「ごめんなさい ごめんなさい。おたからを あげるから、ゆるしてください」
「それより、さらったひとたちを かえしてよ」
「わかった。もう むらの おとこたちを さらったり しないから」
「つぎ わるいこと したら、ももたろうが もっと かわいく せいばい しちゃうからね︎♡」
ももたろうが どくびれを ひらひらと させると、お兄たちが かおを あおくして うなずきました。
ぬえは、さらわれた おとこたちと ももたろうを せなかに のせて、おじいさんと おばあさんの ところに むかいました。
でんせつの ようかいが あらわれたことに、むらびとたちは おどろきましたが。
ももたろうが ぴちぴちと はねると、おじいさんと おばあさんが てを ふりかえしてきました。
「おーい! ももたろう!」
「ももたろう! よくがんばったのお!」
ももたろうが ぶじに もどってきたことを、おじいさんと おばあさんは たいそう よろこびました。
「あのこは につけに されている かもしれない」と しんぱいしていた おばあさんは、おいおいと なみだを ながしました。
さらわれた おとこの なかには、おしろの わかさまもいました。
わかさまを たすけたことで、「さすが やまがみさまの こだ」と おとのさまにも たたえられた ももたろうは、たくさんの ほうびを もらいました。
ももたろうは おじいさんと おばあさんと ぬえとも いっしょに、なかよく しあわせに くらしましたとさ。
おしまい。
ボクっ娘ももたろうでした。ももたろうって本当に女性説があるそうですよ。
登場したぬえは本来のものとは違うナンチャッテ妖怪です。何故こうなったって? 3回似た展開書くのはめんど……楽だからです(開き直り)
ご閲覧ありがとうございました。