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心のカタチ  作者: 藍桜
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僕の世界


「僕はお前らなんか大っ嫌いだ! お前らみたいな親なんかいらねぇよ!!」


僕は昔、あの人達にそう言った。昔、と言っても3年前のことだ。今もそんなに変わってなんかないけれど。

『あの人達』

それは僕にとって親にあたる人達のことだ。僕は彼らが大嫌いで関わりたくもないのだが。きっと向こうだって同じだろう。


親が子を愛するのは当たり前。


よく出来た言葉だ。僕の親が愛するのは勉強できて、誰にでも優しく出来る、自慢ができる我が子。かつての僕。過去の僕。いい子の僕。つまり、あの人達の人形のような僕。

だから人形であることをやめた僕に居場所なんてものは存在しない。

僕は自分の親を親だと思えないのだ。これは1種の何かの病気なのだろうか。…と本気で考えたこともある。考えた結果、好きだと思えない、興味ない人、むしろ嫌いなのだから仕方がないという結果になった。


小さい頃、僕はお母さんが大好きだった。お父さんもかっこよくて大好きだった。お母さんはよく歌を歌っていて、僕はその歌がすごく好きで寝る前に布団までお母さんを引っ張ってきて、眠りにつくまで歌ってもらっていた。お父さんは仕事であまり家にいなかったけど、帰ってきた時はいつもお土産買ってきてくれて、お礼に手紙書いたら照れくさそうに笑っていた。

僕はそんな二人が大好きだったはずなんだ。


なのにいつからだろう。

いつからこうなってしまったのだろう。

そうだ。6歳の時僕は小学校の受験したくなくて、勉強したくなくて、ワガママを言ったんだ。

その時お母さんが言った。

「あなたはいい子だからワガママなんて言わないで頂戴。」って。

その言葉がその時は意味がわからなくて、だけど怒ってることだけはわかって、僕は演技を覚えた。

「はい、ごめんなさいお母さん。」

そう言って。

その日がすべての始まりだったんだ。

受験は合格した。だけど、その頃にはお母さんは変わってた。

ワガママ言うと殴られて、ちょっと機嫌損ねたら寝てても叩き起されて、勉強しなきゃ勉強部屋に閉じ込められて。

「お母さん、ごめんなさい!いい子にするけら!お願いします、ここから出して!」

何度言っても僕の気持ちなんか届かなくて。そんなこと繰り返すうちにお父さんはあんまり家に帰ってこなくなった。

『浮気』

僕の両親はそれをお互いにするようになった。だけど離婚はせず、僕は少しずついいなりの人形になっていった。

お父さんは僕を見るといつも言ってたんだ。ごめんなって。そうやって言うくらいなら助けて欲しかった。


そんなこんなで、僕は中学生になった。

僕はお母さんをあの人と呼ぶようになっていた。

あの人の暴力は相変わらず。さすがに力で敵わないと思ったのか、最近は殴る代わりに色んなものが飛んでくる。でもさすがに僕も6年もこんな仕打ち受けてたら、どうすればあの人の気が済むかわかるようになっていた。

黙って殴られて、お前なんか死んでしまえって罵られて。ただ、僕は耐えるだけでよかった。1時間も耐えたらこの時間は終わる。でも終わったあとが肝心なのだ。

「ごめんね、ごめんなさい。こんなお母さんでごめんね。あなたが大切だからこうするしかないの。」

あの人は決まってそう言う。こうするしかないって何なんだろな。馬鹿らしい。でもそんなこと言えばまためんどくさいから、

「わかってます。お母さん。僕は大丈夫です。勉強するので部屋に戻りますね。片付けは後でしておきますから休んでてください。」

と、僕も決まってそう言っていた。もちろん笑顔で。

今考えれば自分でもゾッとする。

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