2017年度衆議院選挙前に説明しておいてもらわなくちゃ困る事
アメリカのカリスマ的経済専門家で、元FRB議長のアラン・グリーンスパンさんが、ある日、こんなような事を言いました(ごめんなさい。記憶に頼って書いたので、詳細を言えば違っているかもしれません)。
「今の世界経済の懸念事項で最も注意しなくてはいけないのは、“債券”に高値が付きすぎている事だ。いつか必ず崩壊する。そうなれば、誰も得しない結果になる」
この“債券”の中には、日本が発行している国債も当然含まれているはずです。何故なら、日本の国債は“バブル”と見做される程の異常な低金利が続いているからです。
……あっ混乱する人がいるといけないので、説明しておくと、債券は“低金利”の方が“高値”となります。
近年の国債金利の低下はより深刻です。何故なら、国(日本銀行)が意図的に国債を市場から買い入れる事でそれを実現していて、しかもそれには限界があるからです。
“量的緩和政策”
って聞いた事がありませんか? それがその経済政策の名ですが、2017年度内には500兆円近くを買い入れると言われています。これは物価を上昇させる為に始められた政策なのですが、その効果は芳しくなく、当初の予定を大幅に超えて実施されています。まぁ、早い話が失敗しちゃっているのですね。
失敗の原因は、恐らくは国債を買い入れる事で市場に供給する通貨が実体経済へは流れず金融経済へ吸収されてしまった事でしょう。これは金利が低く抑えられているからこそ発生する現象です(“流動性の罠”で検索すれば、その具体的なメカニズムを知る事ができます)。
さて。怖いのはここからです。
国(日本銀行)が、国債を買い上げる限界に達すれば金利を低く抑えられなくなります。すると、物価を抑えていたメカニズムが機能しなくなり、物価は急上昇します。つまりはアラン・グリーンスパンさんが懸念していた“誰も得しない結果”に陥るのです。そうなれば日本経済は深刻なダメージを負う事になるでしょう。
この量的緩和政策は、こういったリスクがあるので多くの経済専門家が反対していたり、程々で抑えるべきだと警鐘を鳴らしたりしてきたのですが、自らの失敗を認めたくないのか、宗教的な信念によるものなのか、政府自民党はそういった意見を無視して、量的緩和政策を実行し続けてきました。
こういった事情があるから、経済に詳しい人の多くは自民党の経済政策に不安を募らせているのです。
「もしかしたら、量的緩和政策は悲惨な結末を迎えるのじゃないのか?」
と。
もちろん、量的緩和政策を平和裏に収束させる…… ソフトランディングさせられるシナリオがあると言うのなら、何の問題もないのですが、政府自民党はそれを今までに発表していません。
しかも、つい最近(2017年10月)、量的緩和政策に反対するメンバーが日銀の政策決定会合からいなくなりました。多分、排除されたのじゃないかと思うのですが、これは足枷が外された事を意味するように思えてなりません。だからより一層不安なのですが。この政策の是非を問う意味でも「ソフトランディングさせられるシナリオ」の公表は必須です。選挙ってのは政権の政策を評価した上で行われるべきものでもありますが、その為にはちゃんと評価できるだけの情報がなくちゃいけません。これは大前提です。もし、公表してもらえないのなら「考えなしでやっているのではないか?」と思うしかないでしょう。
今回の解散総選挙、自民党安倍首相自身の「森友・加計問題」という権力を私的に濫用した疑惑を誤魔化す為に行われると言われています。首相本人が「説明する」と明言し、いよいよその答弁を本格的に行おうかというタイミングの国会冒頭で、一切その事には触れず、大きな理由なにもなしに、しかも北朝鮮が戦争を始めるかもという緊張状態が続く中での解散総選挙ですから、そう言われても仕方ないでしょう(正直、僕はリスク管理能力があるのか?と疑いたくなりましたが……)。
もちろん、こういった“権力の濫用”は許す訳にはいきません。そもそも選挙システムの役割の一つが、こうした権力者の暴走の監視・抑制にあるので、それは当り前です。歴史を振り返れば、世界中で権力者達が私利私欲の為に権力を使って社会全体を犠牲にするといった事が何度も起きてきましたが、それを防止する効果が、選挙システムにはあるのですね。
だから、自民党安倍政権の「森友・加計問題」への追及は大いにやってもらわなくてはいけません。世界的に観ればまだまだ小さな規模ですが、これを許してしまったら、権力の濫用を誘発してしまうかもしれませんから。
ただですね。僕はこればかりが目立ってもいけないとも思うのです。自民党安倍政権が行って来た政策で、説明が必要なものは他にも多々あるでしょう。先ほど述べた、「量的緩和政策をソフトランディングさせる方法」はその一つです。もしも何のプランもなしで行っているのであれば、早急に策を練ってもらなくちゃいけませんし、そんな状態で政策を推し進めて来た政権にはそれなりの責任を執ってもらう必要だってあります。
一応断っておきますが、だから、もし次の政権で量的緩和政策が限界に至り、何かしら問題が発生した場合、その責任のほとんどは、それを始めた自民党安倍政権にあると考えるべきである点は忘れないでください。
時折、「前政権が作った問題なのに、現政権が責められる」なんて理不尽が起こります。もちろん、対処を行った現政権にだって責任はあるのでしょうが、対処が難しい問題の場合はいくら何でも責めるのは酷でしょう。
何が言いたいのかは分かりますよね?
つまり、それくらい量的緩和政策をソフトランディングさせるのは難しいんですよ。だから、どうして始めてしまったのかが分からないし、ソフトランディングさせる策があるのかどうかも疑わしいんです。
安倍政権の政策で、次に僕が絶対に説明してもらう必要があると主張するのは“原子力政策”のリスク管理です。
北朝鮮が頻繁にミサイルを発射するようになってから、自民党は「危機に備えるように」と何度も警鐘を鳴らしてきました。ところが、おかしなことにその状況下でも原子力発電所は無防備のまま稼働させているのです。しかも、その中には、北朝鮮から比較的狙い易い位置にあり、プルサーマル方式という通常の原発よりも遥かに危険といわれる方式で稼働する高浜原発も含まれています。
多くの人が「おかしい」と指摘していますが、それに対する説明はなしです。断っておきますが、僕はただ単に“説明”を求めているだけです。本当に安全なら、その根拠を明言するべきなんです。
因みに、「互いの国の原子力発電所を狙い合えば“準核戦争”となる」危険性は、世界的に認識されています。
反原発で国会議員となった山本太郎さんが原子力発電所がミサイルで狙われる危険性について言及した事がありましたが、その時は確か「想定していない」という答弁だったはずです。そしてその折に僕は、ネット上で「ミサイルの精度では原子力発電所を狙う事は難しい」という反論を読みました。
これ、ちょっと、認識が甘くないですか?
ミサイルの精度は年々上昇しています。仮にまだその精度がないのだとしても(北朝鮮はあると発表していますが)、これから原発を狙えるレベルにまで達する可能性は大いにあります。そうなってから、全ての原発を廃炉にするって事でしょうか?(まぁ、無理だとは思いますが)。
原子力発電所は停止させた状態でもしばらく危険な状態が続きます。ドライキャスクにすればかなり安全になりますが、それまでにプールで一年ほど冷やさなくてはならないそうです。
つまり、戦争になり“狙われる”と分かってから慌てて原発を停止させてもその時は手遅れだって事です。
もちろん、原子力発電所にとっての脅威はミサイルだけではありません。航空機をハイジャックされて突っ込まれてもアウトですし、そもそも日本の原発はセキュリティが世界最低レベルに脆いので、特殊部隊に攻めこまれでもしたら簡単に占拠されてしまう危険性があります。
例えば、工作員を予め数十人程日本国内に潜伏させておいて、戦争が始まったら直ぐに原発を攻撃するなんて事も可能でしょう。また、原発を狙うのは北朝鮮に限りません。テロリストだって狙うかもしれません。
つまり、何が言いたいかというと、全般的に日本の原発はリスク管理できていないのではないか?と思えるのです。
これについても、もしも、「問題ない」と言うのであれば、ちゃんと根拠を提示してもらわなくちゃ納得なんかできません。
どうして僕がここまでこの問題を心配するのかというと、最近の原発政策にデジャヴを覚えるからです。
福島原発事故前から、実は原発反対派は「強い地震が起こったら、日本の原発は耐え切る事ができない」とずっと主張し続けて来たのです。僕はそれを読んで「恐らく原発のリスク管理が酷いのは本当だろうけど、誇張してあるのだろうな」とそう思っていました。
ところが、実際には原発反対派の主張は正しかったのです。彼らの主張通り、地震と津波だけで、呆気なく原発は制御不能に陥ってしまいましたから。
普通、思想が偏っている人達の主張は誇張してあったり都合の悪い部分は伏せてあったりするのが普通ですが、原子力発電所のリスク管理の杜撰さについては、原発反対派が行っていた指摘は正しかったと言うべきでしょう。
今現在の原発の状況はそれと非常によく似ていると思うのです。
原発反対派が、いくら原発の抱えるリスクを主張しても原子力行政は真っ当には取り扱わず、対策も説明もしていない。
もしかしたら、近い将来、福島原発事故と似たような、いえ、もっと悲惨な事故か事件かが起こるかもしれません。そうなれば、下手すれば日本にとって致命傷になりかねないのです。
次も原発の話題ですが、リスク管理ではなく、主に経済方面です。
原発のコストが本当は高くて(原子力発電所を用いている地域の電気料金の方が高い)、これから行わなくてはいけない廃炉作業や、核廃棄物の処理を行うコストを考えるのなら絶対に赤字になるという話はそれなりに知られています。が、実はそれ以外にも原子力絡みの経済問題はあるのです。
ポイントは“ウラン”です。
知っての通り、ウランは原子力発電所の燃料ですが、日本国内では得られません。だから海外から輸入するしかないのですが、このウランは貴重な鉱物で、それほど埋蔵量がある訳ではありません。このまま使い続ければ必然的に枯渇していき高騰します(もちろん、完全に枯渇すれば通常の原発は続行不可能です)。つまり、ウランを輸入に頼るしかない日本は、高い出費を強いられる事になるんです。
対して、中国はウランを自国で調達できます。しかも、北朝鮮には膨大な量のウラン資源が埋まっているとも言われています。早い話が、原発を使い続ければ、日本は中国や北朝鮮に対して不利になるのですね。更に言うのなら、もし、このままウランが高騰し続ければ、北朝鮮は“ウラン資源産業”という貴重な財源を手に入れる事にすらなるでしょう。
近年、先進国では原子力発電所が衰退しつつありますが、これは北朝鮮の資金源を断つという意味でも“良い流れ”であるはずです。ところが、政府自民党はその衰退しつつある原子力産業を復活させようとしているのです。そして、中国・北朝鮮を有利な状態に導いてしまう事ついて、何ら説明はしていません。
因みに、日本は単独で原子力を製造できる技術を持ってはいません。その為、もし原子力産業を維持しようと思ったなら、衰退し続けるアメリカ・ヨーロッパの原子力産業を支え続けなければいけないのですが、それをしようとした東芝が危機的状況下に追い込まれてしまっているのを観れば明らかなように、それには莫大なコストがかかります。
これらの点を踏まえれば、原子力産業が国益に適うようにはとても思えないのですが、何故か推進しようとしているのです。この点もやはり政府自民党が充分な説明をしているのを僕は耳にした事がありません。
現在、既に再生可能エネルギーの多くは実用段階に入っていて、充分にビズネスとしても通用していますが、日本は大きく出遅れてしまっています。かつては太陽光発電の分野で世界をリードしていた事を考えると、これは国の失策と言っても良いでしょう。
公平を期すために、一応断っておきます。民主党政権が原発廃止に動いたと思っている人もいるようですが、それは正確ではありません。恐らくは「福島原発事故後の原発への逆風の中、誤魔化しながら、なんとか原発の継続を目指していた」という方が正しいでしょう(長くなってしまうので詳しくは書きませんが、当時の資料を見るとそれがよく分かります)。論より証拠で、今現在自民党政権が次々と原発を再稼働できているのは、そのお陰です。
つまり、自民党だけにエネルギー政策失敗の責任があるという訳じゃないという話です。
次は対中国政策の話題です。
自民党安倍政権と言ったら、中国に対して敵対的な態度を執っていた事で有名です。直接ってわけじゃありませんが、自民党安倍政権を支持している周辺の方々が“中国脅威論”を訴えていますしね。「軍事力強化をし続ける中国を野放しにすれば、やがて日本は攻められて領土を奪われてしまう」と、そんな主張が繰り返されています。そして、その影響からか、反中国派が自民党安倍政権を支持してもいます。
ところが、最近になって自民党安倍政権は中国と友好関係を結ぶ動きを加速させているように思えるのです。
実質的には安倍政権の一員と見做せる日銀の黒田総裁が、中国主導の国際金融機関AIIBを評価したと思ったら、そのしばらく後で安倍首相自身が中国の重要な経済政策である一帯一路構想に協力を表明しました。
さて。
この変節は一体何を意味しているのでしょう?
もちろん、予想は可能です。
これから日本はアメリカと自由貿易交渉をしようとしていますが、その時に「中国と友好関係を結ぶ」というのは交渉を有利に進める材料になります。
中国と敵対している状況下では日本はアメリカに頭が上がりませんが、友好関係を結べば、逆にアメリカの方が強く出難くなりますから。
僕はこの予想を以前にある小説の中で書いたのですが、それからしばらくしてNHKで似たような説明をしているのを聞きました。だから(まさかNHKのスタッフが僕の書いた小説を読んでいるとも思えないので)、この見方にはある程度の客観性があるのではないかと考えています。
ただし。
この予想だと、“中国脅威論”と矛盾が生じてしまいます。
中国が自国の軍事力を増し、周辺各国に威圧的な態度を執り始めたのは、明確に経済成長に成功してからです。しかしここ最近、その中国経済には黄色信号が灯っています。比較的公平な立場から中国を評価できるだろう元世界銀行のエコノミストが書いた経済の本でも、「成長して大国となる」、「体制が崩壊する」という両極端な意見が書かれてありました。
これは中国が提示している経済指標の類が信用できないからでもあるのでしょうが、経済状況の見通しがそれだけ不確定だからでもあるのだと思います。
だから、“中国脅威論”が本物で、日本に攻めて来るというのであれば、それを抑える意味でも中国の経済政策に協力などしてはいけないのです。しかも、安倍首相が協力を表明した一帯一路構想は、中国が軍事利用を計画しているのではないかという疑いがあります。飽くまで僕が読んだのは個人的な意見でしたが、軍部が利用しようと狙っているというくらいなら大いにあり得る話でしょう。
“アメリカとの交渉を有利に進める材料を得る為”、或いは“経済的な見返りを得る”くらいのメリットと、それら“中国への経済協力の抱えるリスク”は、はっきり言ってまったく釣り合っていません。
だから“中国脅威論”は、全て嘘ではないにしても誇張してある疑いがかなり強いのです。恐らくは、日本の軍事協力強化の言い訳に“中国”を利用しているだけでしょう。
まぁ、もっとも、僕はずっと前からかなり懐疑的でしたが。中国経済は、日米経済との繋がりが断たれたら終わりです。そんな状況下で日本やアメリカと戦争ができるとはとても思えないからですがね。
しかし、“中国脅威論”に誇張があるのだとしても、今度は新たにこんな疑問を覚えてしまいます。果たして、
“アメリカとの交渉を有利に進める材料を得る為”
というのは、本当に自民党安倍政権がそれまでの態度を変える程の価値のある事なのでしょうか?
安倍首相の中国経済への協力表明は、何故かニュースでの扱いが非常に小さかった事もあってか、まだ反中国派の人達が反発しているという声は聞こえてきませんが(反中国派の人達が、安倍政権が何をしようが盲目的に支持をするっていうのなら、知っていて黙っている可能性もあります)、もし本格的に協力をし始めたら、安倍政権の支持率は下がってしまうでしょう。日本の軍事力強化だって説得力がなくなります。
もしかしたら、もっと他の理由から、自民党安倍政権は中国との関係改善をしようとしているのかもしれません。他の理由としては、他にもこんなものが考えられます。
「自民党内で、中国とコネクションを持つ政治家の権力が増した為、無視する事ができなくなってしまった」
知っている人は知っていると思いますが、自民党の有力議員で中国と強いコネクションを持っている人がいるのですよ。その人が自分の立場を更に強くしたいと思ったなら、そのように画策するのは納得できます。
もちろん、これらは不確かな情報に基づく単なる漠然とした予想に過ぎません。
本当の自民党の狙いは何なのでしょう? 正直に言えば、判断可能な材料が不足し過ぎていて、“よく分からない”というのが僕の本音です。
(ただし、選挙が決まってから安倍首相が起こしている中国との関係改善アクションは、日中関係の良好さを示す事で、北朝鮮がこれ以上、挑発的な行動を執らないように抑えるのが目的じゃないかと考えています。選挙期間中に北朝鮮情勢が酷く悪化すれば、自民党は選挙で不利になりますから。
まぁ、だとすれば党利党略の為に外交を行っているって事になるので、これはこれで問題ですがね)
ですが、これについては流石に“説明しろ”とまでは言いません。外交戦略に関わる事項を、公表できるはずもないのは分かり切っていますから。
ただし、それでも、自民党外交が目指す方向が分かるくらいの情報の公開は必要でしょう。そうじゃないと、本当に安心して良いのかどうかが分かりませんから。
何故、こんな事を書くのかと言えば、「日本会議」という右翼系で宗教色の強い政治団体が、今の自民党政権に強い影響力を持っていると言われているからです。
安倍首相自身はもちろん、ひとつ前の閣僚のほとんどは、この日本会議に所属していて、何度も失態を起こしているにも拘わらず、安倍首相が擁護し続けた稲田朋美元防衛大臣は、この日本会議に特にどっぷりと浸かっています。日本会議に所属していたとしても、政治家が本心から同じ思想を持っているとは限りませんが(単に票を得る為に、所属しているだけの可能性もあります。そもそも、安倍首相自身が日本会議の思想と反する政策を実行しようとした事がありますし)、稲田朋美さんはほぼ確実に日本会議と同じ思想を持っていると判断すべきでしょう。だから安倍首相は彼女を擁護し続けたんです。
テレビの解説者などが「何故、首相が稲田防衛大臣を擁護するのか分からない」などとよく発言していましたが、本当は「日本会議の言いなりで動く国会議員だから」だと分かっていたはずです。
さて。
この日本会議は、現行の憲法を「アメリカが日本に押し付けたもの」と主張し、できるのなら無効化してしまいたいと考えているようなのですが、だから当然、そこには反米派も混ざっています。
ですが、中国と敵対している状況下で日本に“反米”なんてできるはずがありません。ですからもし、日本を反米に転換させたいのなら、中国と手を組んでアメリカに対抗するしかないのです。
もし、昨今の自民党が執っている中国との関係改善を目指す動きが、その為のものであったとしたら、少なくとも僕は絶対に反対します。確かに他の多くの国と同じ様にアメリカも多くの問題を抱えている国ではあります。が、それでもパートナーとして中国よりは遥かにマシでしょう。
これが単なる杞憂であると確かめる為には、日本会議がどんな組織なのかを知る必要がありますが、今現在、ほとんどの国民がその実態を知らないのが実状です。自民党に投票した人の多くは、その名前すら知りません。
一応断っておきますが、この日本会議は海外のメジャーなマスコミで何度も取り上げられています。それなのに、日本国内では無名なのです。これはどう考えても“異常”です。日本は2017年世界報道自由度ランキングで、72位という先進国では最悪の水準となってしまっていますが、それもよく分かるでしょう(因みに、ニュースで話題になった森友学園は日本会議と深く関わっている組織です)。
だから、選挙を行う前に、日本会議のその実態を国民に公表する必要があるのは自明であるはずなのです。
公平を期す為に書いておきますが、この日本会議という問題がありそうな政治団体に所属しているのは自民党の国会議員だけではありません。例えば、今回の選挙での自民党の対抗馬と見做せる“希望の党”のその代表である小池百合子都知事も日本会議に所属しています(前原さんも所属していると言われていますが、本人は否定しています)。
ただし、小池百合子さん自身の思想は分かりませんが、人の繋がりだけを見るのなら彼女は明らかに“親米派”でしょう。彼女を都知事選へと導いた小泉元首相がかなりの親米派であることは有名ですし、都知事就任後に彼女はアメリカ側からの要請で、ケネディ駐日大使と会談を行っています。
また、反米派の中には核武装待望論を持つ人もいるようですが、それに対して反核武装に結びつく反原発を彼女は(本心であるかどうかは疑わしいにしろ)政策に掲げています。
つまり、もしかしたら、今回の衆議院選挙は日本会議内の「親米派VS反米派」の争いなのかもしれないのですね。
まぁ、これは単なる憶測ですが。
そして、日本会議関連でどうしても外せない話題があります。それは改憲議論に“緊急事態条項”がほとんど出ていない点です。
改憲議論というと“九条”の自衛隊が真っ先に思い浮かびますが、説明が必要なのも議論が必要なのも明らかに“緊急事態条項”の方でしょう。
はっきり言って集団的自衛権を認めてしまった今となっては、九条に関しては改憲されようがされまいがあまり影響はありませんが、もし“緊急事態条項”が懸念されている通りの危険なものだったなら、憲法を無効化する事ができるので、下手すれば独裁政治さえも可能になるからです。そうなれば、九条に何が書かれていようが関係なしに日本を軍国主義に変える事だってできます。
以前はテレビのニュース番組でも緊急事態条項が取り上げられているのを僕は観ましたが、何故かある時期から名前くらいしか出て来なくなりました(この事実だけでも、不安を喚起するに充分です)。
もちろん、緊急事態条項の安全性が自民党政権から説明され、充分に議論が為され、その上で国民の多くが納得したというのであれば分かるのですが、そんな事は一切行われてはいません。
しかも、「日本会議の正体 青木理 平凡社新書」という本によれば、日本会議のルーツである“生長の家”という宗教団体(今はまったくの別組織で、むしろ日本会議に批判的だそうです)の初代総裁・谷口雅春という人は、<全世界の人類が幸福な人間らしい生活を送るためには神から先天的に首脳者と定められたる日本皇室が世界を統一しなければならないのである>といった王権神授説のようなとんでもない主張をしていたそうです。
そして、日本会議の主要メンバー(全員ではないかもしれませんが)はこの“生長の家”の初代総裁・谷口雅春という人の事を信仰していると言っても良いような状態らしいです。彼らが日本の軍国主義化を目指していても不思議ではないと思いませんか? 更にこの本の中には、日本会議の関係者が「緊急事態条項で一点突破」というような事を言っていたとも書かれています。
そしてそれを裏打ちするように、日本会議に所属している自民党の国会議員達が数々の信じられない発言をしている事が知られているのです。ネットで検索すれば直ぐにその動画を見ることができるので、疑われる方はやってみてください。
例えば“憲法改正誓いの儀式”で、検索すると(他にも数々の問題発言がありますが)自民党の長勢甚遠という国会議員が、“国民主権、基本的人権、平和主義”を否定する発言をしている動画が観られます。他にも“稲田朋美 国民の生活が第一なんて政治は間違っている”で検索すると、本当に彼女がそう言っている動画が出てきます。
かつて当時自民党だった武藤議員が基本的人権を否定して大問題になって批判されましたが(彼も日本会議の一員です)、これはその比ではありません。もしゴールデンタイムにテレビのニュースで流れたら、まず間違いなく自民党政権は大ダメージを負います。
もちろん、それら発言が政治家達の本心であるとは限りません。先にも述べましたが、政治家は票を得る為に様々な場所でリップサービスをするからです。
ですがその可能性を認めても、これは決して安心できる内容ではありません。どうであろうが、詳しく実態を公表するべきです。そうじゃなければ、国民を騙しているに等しい。
ここ最近、安倍首相が改憲を急いでいるというニュースをよく耳にするようになりました。ニュース解説者などが「安倍首相の実績つくりの為」などと説明していたりしますが、僕は本当にそうなのか疑問を持っています。
何故なら、量的緩和政策の限界はどんどん近づいて来ているからです。もし、ソフトランディングさせられる策がないのであれば、その限界と共に日本経済は大ダメージを負ってしまいます。特に貯金生活者が多い高齢者世代への被害は深刻になるはずで、この世代に嫌われれば高齢社会になった現在はほぼ確実に選挙で勝てませんから、安倍政権は終わりでしょう。
つまり、改憲を成功させたいと思ったのなら、量的緩和政策の限界前にやらなくてはならないのです(ソフトランディングさせられる策がないという前提ですが)。だからこそ、安倍首相は改憲を急いでいるのではないでしょうか?
そして改憲に成功したなら、“緊急事態条項”を発動して独裁政治を実現させられるので、後は量的緩和政策が限界を迎えようが関係なしに支配体制の維持が可能になります。
僕はこれを随分前に半ば冗談のような感じで書いたのですが、日本会議についての情報をより多く得た今は、「もしかしたら、有り得るかもしれない」とそんな不安を抱くようになりました。
最後に、今の日本の政治の最大の欠点ではないかと僕が考えている点について説明します。
実は僕はちょっと前に、プライベートで偶然に日本会議に所属していると自称している人と話す機会があったんです。それでいくつか質問をしてみたのですが、大いに不安が増しました。
まず、その彼は経済についての基本的な知識を持ってはいませんでした。少子高齢化についても、大きな問題だとは思っていないらしく、「いる人間だけでやればいい」とやはり経済の常識を理解していない発言をしていました。更に原子力発電の問題点についても詳しく知らず、抱える経済的なリスクに関しては、ほぼ無関心でかつ非常に楽観的でもありました。
“多分、大丈夫だろう”
と、その程度の認識なのですね。
更に彼は明確に「戦争をしたい」と発言してもいましたし、共謀罪に関しては「自分達に関しては免除だ」ととんでもない事を口にしていました。
(因みに、安倍政権が発表した“中国の経済政策へ協力する意向”について質問したら不機嫌な顔になって黙りました。怖くてそれ以上は訊けなかったです……)
そして、そんな状態であるにも拘わらず、自民党安倍政権の執っている政策に関しては明確に賛成しているようなのです。つまり、自分の頭で考えている訳ではなく、ただただ上や周囲の意見に盲目的に従っているだけのようなのですね。
これはたった一人というほんのわずかな標本調査の結果で、しかも“自称”なので本当にその彼が日本会議に所属しているのかどうかも分からないのですが、それでも“盲目的に人々を従わせられる”という宗教の特性を考えるのなら捨て置けません。
そして、彼のその数々の発言からは異様なまでの“呑気さ”が感じられもしました。恐怖心が麻痺しているとしか思えなかったのです。
近代に入り、軍事兵器の破壊力はとんでもないレベルにまで達しています。水爆が一国を滅ぼしかねない破壊力を持っている事は有名ですが、その他の武器でも充分に許容できないレベルの損害を人類に与えます。
ですから、もしも先進国が本気で戦争を始めたなら、その被害の大きさは戦争で勝つ事によって得られるメリットを軽く超えてしまうのです。
仮にアメリカのように一度も本土を攻められた事がないというのならまだ分かるのですが、日本の場合は戦争によって被害を受ける事は避けられないでしょう。
つまり、武器が強力になり過ぎた先進国では既に大きな戦争は起こせない状態になっているのです。だから、戦争に向かう流れは徹底的に回避しなくてはなりません。
なのにその彼は「戦争がしたい」と口にしたのです。
まさか軍事兵器の知識が50年以上前で止まっている訳でもないでしょうから、これは「日本が攻撃で受ける被害がどれほどのものになるのか上手く想像できていない」という事になるのでしょう。
要するに、恐怖心が麻痺しているのです。
『暴力の解剖学 エイドリアン・レイン 紀伊國屋書店』という本には、戦闘を好む性質の人間は、恐怖心が鈍感である傾向が強いと書かれてあったのですが、見事に一致しています。
そして、翻って今の政治です。
量的緩和政策、原子力政策、テロ対策、少子高齢化の放置、そして、北朝鮮との緊張状態が高まっているタイミングでの解散総選挙。どれもこれも非常にリスキーです。恐怖心が麻痺しているようにしか思えません。日本の政治のリスク管理能力は異常な程に低いのです。
飽くまで想像ですが、これは、日本会議に所属している人間達のそのような“恐怖に対して鈍感な性質”が反映された結果なのかもしれないとも思うのです。
日本会議は戦前回帰を目指しているとも言われているのですが、実は戦前の日本軍はアメリカには勝ち目がないと分かっていたのだそうです。では、どうしてそんな勝ち目のない戦争を始めてしまったのかというと、「アメリカは直ぐに戦争から手を引くだろう」という楽観的かつ根拠不明の前提条件を想定していたからなのだとか。今のリスク軽視で突き進む政治となんとなく重なるように思います。
ただし、実は日本会議の影響力は過大に評価されているとも言われています。だから、本当は全体の大きな絵を描いている存在など何処にもいなくて、様々な利益団体が絡み、それぞれで都合の良いように自分勝手に動いた結果として、整合性が取れていない、リスクの高い政策を取る状態に陥ってしまっているだけ、という可能性も考えられます。
或いは、その両方かもしれませんがね。
「今という時代は特に、政治に透明性が求められている」
と、よくそんな声を耳にしますが、本当にその通りだと僕は思います。