おじいちゃんと行ったのは
こんなこともありました。
翌朝、東京のおじちゃん家に別れを告げて向かったのは新宿御苑だった。おじいちゃんが、一度行ってみたいと言っていたのである。
しかしそこまで行ってみたらなんとお休みだった。
その時、私が思い出したのがアニメの情報誌「アニメッコ」の編集社である。確かこの辺りだったはず。
手帳に書いていた住所を頼りに行ってみると、戦前の建物?というような古いアパートが現れた。
「おい、本当にここなんかぁ?本を作っとるところなんじゃろ?」
おじいちゃんがそう言うのも、最もだ。出版社と言う名前に、私もカッコイイ高層ビルを想像していたのだ。
ここまで来たんだからと階段を登ってみたら、暗い廊下の片隅のドアに「アニメッコ編集部」という薄汚れた看板がぶら下がっていた。
「・・・・。」
私とおじいちゃんは、薄気味悪いその建物からそそくさと退散した。
「なあ、琴美。なんであげーな所へ行ったんなら?」
「あそこの編集社で私と都司子が読んでる雑誌を作ってるの。都司子が就職したいと言ってたからちょっと見に行ったのよ。」
「琴美は妹をあねーな所で働かせるんか?!」
「私もあそこまでとは思ってなかったの。」
二人で顔を見合わせて不毛な思いにふける。
「とにかく、おじいちゃんは反対じゃ。東京に出るのも危ねーのに、あんな潰れそうな会社、おえん。」
確かにね。
しかしこれからアニメ産業はもっと発展していくはずだ。あそこの会社もそれにつれて大きくなることは予想できる。ただ、そうなるまであそこで耐えられるかが問題だけど。
この話を家に帰ってからアニメッコ編集者に送ったら、洒落のわかる編集者が読者投稿欄に載せてくれた。
「いつでも採用しますよ。来て下さい。(笑)」
という後書きと共に。
新幹線で田舎に帰る道々、おじいちゃんは「おえん。おえんどぉー。」と言い続けていた。
私はそれに相槌を打ちながら、この度の可笑し気な東京漫遊記に思いを馳せていた。
また来るよ、東京。
ごった返した不思議な町。
あの時の編集者さん、失礼な手紙を笑ってくれてありがとうございます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。