ヒコーキだぁ
さて、冒険へ出発だっ。
新幹線で東京に行くのかと思っていたら、なんと飛行機に乗って行くことになった。
おじいちゃんも私も初めての飛行機だ。ドキがむねむねして落ち着かない。父親に自家用車で大賀空港まで送ってもらう。広い原っぱが何処までも続く地方空港だ。鉄網の隙間を通り抜けるとそこは広い滑走路だった。
小さなYS11型飛行機が、ポツンと一機止まっている。両翼のプロペラが物凄い音をたてて回っているので、うるさくて声も聞こえない。
テレビで総理大臣が降りてくるようなタラップを想像していたが、それよりもだいぶ短い階段が飛行機の入り口の前に置いてあった。
階段を登って飛行機の中に入ると、小型のバスのような感じで座席がある。老い先短いおじいちゃんを窓側に座らせて、私はその隣に腰かける。
飛行機は、ブンブン、うんうん唸りながらやっとこさ空の上に飛び上がった。お尻が浮き上がるような浮遊感の後、なんとか水平飛行に落ち着いた。
スチュワーデスさんがジュースと飴を持って来てくれる。思わずスチュワーデス物語の歌を歌いそうになった。アテンションプリーズぅだね。
プロペラの音がうるさいので、おじいちゃんと話すのも大声になる。おじいちゃんはあまり大きな口を開けると入れ歯が落ちてくるので気を付けなければならない。
下に富士山が見えてくるとおじいちゃんは興奮して窓にへばりついた。
「おい、琴美。富士山が見えるぞっ。ぼっけーのー、こねーにハッキリ見えるんかぁー。」
見てみろと言われたが、ハッキリ言っておじいちゃんの後ろ頭しか見えない。ある意味白い頂が見えるけどね。
羽田空港に着くと、東京のおじちゃんが迎えに来てくれていた。
「あーさん(兄さん)、富士山が見えたでー。」
おじいちゃんが興奮して東京のおじちゃんに報告する。
「そうか。それは良かったね。琴美もお疲れさん。これから渋谷に行ってご飯を食べようと思ってるんだけどいい?」
オゥ・マィゴッ。渋谷ですって?!あの歌番組の渋谷公会堂があるところ?!
「行きたい行きたい。」
どこかでスターに逢えるかもっ。
渋谷に行って昼ごはんを食べた後、東京のおじちゃんが私のサマーセーターを1〇1で買ってくれた。高っけー、でもカッケー。
「琴美、池袋にサンシャインって言って、日本一高い建物があるよ。そこに連れて行ってやろうか。」
「うんっ。行く行く。」
「そりゃあええなぁ。帰ってみんなに喋れるでぇー。」
この時に連れて行ってもらっといて良かったと、翌日しみじみ思う事になるのである。
池袋から西日暮里のおじちゃんの家まで都電に乗ったのが私の運命をわけた。
都電の駅から自宅への道、釣り堀があって、サザエさんを作っているスタジオの角を通って、とお上りさんよろしくキョロキョロしながら歩いたことをこの時ほど感謝したことはない。
そう、私は翌日道に迷うことになるのである。
私は一度通った道は大抵覚える人です。