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開拓村の動物たち 雌鶏

作者: 小松八千代

 開拓村では鶏は放し飼いで飼っていました。

一羽の雌鶏が卵を産むところを探していました。雌鶏は子育てを考えていました。

もう一羽の雌鶏は、6羽のかわいいひよこを連れて、コッココッコと庭の周りで餌を漁っています。大きな餌は丈夫な嘴で砕いてひよこたちに分け与えているのです。時々懐に入れて温めています。

雌鶏は私も早くあんなかわいいひよこがほしいなあと思っておりました。

 鶏小屋の中に、卵を産む巣棚があります。でもここに産んだ卵は、家の人に持っていかれてしまいました。それでちょっとはなれた草むらの中に、巣をつくりました。でも二個の卵を産んだところで、犬に食べられてしまいました。犬のポチは、庭に寝そべって、雌鶏が卵を産むのを見張っているのです。ずるそうな目がこっちを向いています。

 いったいどこへ卵を産めばいいのかしら。と、雌鶏は悲しくなってカーカカーと鳴いていました。雄鶏がきて、ココ、ココと薪を置いてある軒の下の隅のほうの土をかいて、ここに産めといいます。だめよ。そんなところに産むと、あのずるそうな犬に食べられてしまうわ。雌鶏は薪の束の上に飛び上がりました。そしてひょいと顔を横にして上を見ると、小さな小窓が開いています。

この家にはお父さんとお母さんと、元気のいい男の子とかわいい女の子が住んでいます。いつも男の子が元気よく走りまわっているのですが、今日は静かです。女の子の声も聞こえません。だれもいないようです。

 雌鶏は少し肩をすぼめて小さい小窓めがけて、飛び上がりました。的が外れて、窓の横の板壁にぶつかって、また、薪の上に落ちてしまいました。失敗しました。もういちど肩をすぼめて、小窓めがけて飛び上がりました。こんどは小窓の枠の下のほうに、羽をバタバタしながら何とか両足でつかまることができました。首をのばして家の中をのぞきこみました。家の中は狭くて、皆の布団を敷いたらいっぱいになってしまうぐらいです。

ちょうど小窓の下に机が置いてあります。机の横でおもちゃの赤いトラックが真横にひっくり返っています。セルロイドのお人形が目をつむっておとなしく小さい布団の中で眠っています。押入れがないのできちんとたたまれた布団が、隅のほうに置いてありました。とても暖かくて柔らかそうな布団です。雌鶏はあの布団の上がいいわと思いました。でも用心しないと家の人に見つかったら大変です。なおも首を回して家の中を見回しました。

 この前、雄鶏といっしょに家の中に入って、鍋のふたを跳ね飛ばして、ご飯をつっついていたところを、男の子に見つかって追いかけまわされました。出口が見つからなくて、カヮアカアッと悲鳴をあげながら天井まで飛び上がったりしたので、羽が七枚ぐらい落ちてしまいました。男の子は長いほうきを持っていました。もう少しでそのほうきでたたかれるあわや寸前、出口が見つかって外へ飛び出しました。あんな恐ろしかったことはありません。

 今日は本当にだれもいないようです。雌鶏はカヮア、カア~と大きな鳴き声をあげていきおいつけて布団の上に飛び移りました。

ああ、なんて柔らかいんでしょう。ああ、なんて暖かくて気持ちがいいんでしょう。蕎麦殻の入った枕が重たくてちょっとじゃまです。足で跳ね除けてみましたが、びくともしません。仕方なしにその枕の横をびりびりかきまくりました。少しくぼみができたようです。雌鶏はそこへ卵を産みました。帰りは机の上に飛び上がって、小窓から簡単に帰れました。

 あくる日、雌鶏は、また卵を産みに家の中へ入っていきました。今日も誰もいないようです。昨日のように薪の上にあがって小窓に飛び移りました。そして布団の上に大きな鳴き声を上げて飛び移ります。でも卵はありません。雌鶏は悲しくなりました。カヮーカヮーと鳴きながら家の中を歩きまわりました。たたんである洗濯物の上や本の上を歩きました。最後に机の上に白と黒の大きな糞をして、小窓から飛び出しました。

 外はもう大きな夕日が西の森のほうへしずみかけていました。ひよこを連れた雌鶏も鶏小屋に帰ってきました。雄鶏も鶏小屋の横で、もう入りたそうにしています。

雌鶏は鶏小屋の中に入っていきました。巣棚の上に飛び上がりました。あれっ、卵がひとつあるではありませんか。昨日私が産んだ卵だわ。雌鶏はうれしくなって卵を抱いてそっと座りました。首を下に下げてくちばしで卵を大事そうに懐の中に押し込みました。セメントで出来た固い卵でした。でも雌鶏は気が付きません。羽を少し下げて、体をゆすってなおも大事そうに抱え込みました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ラストが中々衝撃的。でも面白かったです。
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