昼休み
「私から逃げるなんて百万年早い」
逃亡を図るも先回りしていた久坂部に捕まり、いつもの場所である科学室へと連行されていた。
行動パターンを読まれるとか、短い付き合いの割には的確である。
まさか第二図書室がバレるとは。
「科学室とは別に入り浸っている場所と言えば、あの倉庫しかない。行動が単純過ぎ。逃げる気が無い」
久坂部が倉庫と呼ぶ第二図書室とは、もう読まれなくなった本の収納場所である。
俺が勝手にそう呼んでいるだけで、この校舎には実際、図書室は一つしかない。
倉庫というのは正しい表現だ。
しかし何故久坂部は、俺があそこに入り浸っている事を知っているのだろうか?
「案外見られているもんよ」
「そういうもんか?」
そうか、こいつは情報収集が趣味な、至って普通な女子だった。
これくらい知っていても不思議ではない。
「今なんか皮肉っぽい事言った?」
「いえいえいえいえ滅相も無い」
こいつは超能力者か何かか。
「んで、悩みは何?お姉さんに言ってみなさい」
「お前のどこにお姉さんの要素が?」
明らかに発育の悪い体型ではないか。
お姉さんという人種はそんな貧相なつくりをしていない。と思う。
俺の言葉に暴力でお返しする久坂部は、不機嫌に目蓋を落とし、半目で睨む。
「死にたいんですか?」
「じょ、冗談だよジョーダン」
「冗談、ねぇ」
___ と、久坂部はその目を背けたくなるような現実に、小さな膨らみに、手をあてて肩を落とす。
あぁ、俺が悪かった。
久坂部は何も悪くない。
「いや、その、...可愛いぞ?」
「黙れ」
「あ、はい、すみません」