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コア・オンライン  作者: marimo
9/10

南西の森集団戦:中編

語弊の少なさが目立つ・・・精進します(゜ω/


感想などなどお待ちしております。





 

「(とりあえず誰から・・・いや、何を狙うか・・・か。)」


 今から、というより現在進行形で起こっているこの戦場は最初の町の南門。そこへまっすぐ伸びている街道での集団戦だ。各々の集団が各自バラバラで戦闘を行っている状態・・・直線状で集団が並んでいるため、混戦にはなっていない。そして今もなお状況は動きつつある。


「キシャァァァァァ!!」


「うぜぇがそんな強くないなお前ら。1体で十分だろう、『蹴散らせぇ!シャウトォォォ!!』」


「グルルルルルゥゥ・・・・・・」


 一番奥でゴローに襲い掛かろうと全てのブレイドシザースが前に出る。そこにゴローの命令を聞き入れた1体のパンチラビットが前に出た。


 図体は平均的な男性よりも二周りほど大きく、体は丸々としている。が、外目から見てもそれが脂肪の塊には見えない。全てが引き締まっており、あの全てが筋肉なのかと錯覚するほどの存在感を発している。太く、そして短いその足でその生物は二本の足で直立していた。腕は短く、体から手に沿っていくほど細くなっている。が、手には立派な爪が生えており太陽の光が反射していた。体はフサフサの白い体毛で覆われており、頭には細長い耳が後頭部に向けて垂れていた。ウサギに見えなくもないその容姿だが、顔つきは野獣その物。大きな赤い丸目に、スイカを丸呑みできるほど大きな口。歯は鋭く、細かくビッシリと生えており噛まれたら肉ごと持っていかれるであろう。その生物の名は・・・パンチラビット。


 そして前に出たパンチラビットは口を大きく開いた。


「ガァアアアアアアアアアアッ!!!」


 森が震えた。指向性の絶大な咆哮をブレイドシザース達に向けて開放する。ブレイドシザース達に向けて放ったはずが、反対側にいた全ての生物達にも鼓膜を揺るがす程に聞こえていた。


「う、うるさいわぁ・・・お姉さんびっくりしちゃう」


「っつぅ、耳が・・・アレはやばいわね・・・」


 メデューシアやエリーが顔をしかめ、片耳を塞ぎ冷や汗を垂らしながら感想を口にする。他のプレイヤーも同じような事を口走り、その咆哮をもろに受けたブレイドシザース達は、1m程吹っ飛んでいた。


「ギ・・・ギ・・・」


 6体のブレイドシザースは総じて、声も満足に発することなく体を震わせながら倒れこんでいた。遠目から見てなんとか立ち上がろうとしているが、体が思うように動かないのか片膝をつきその姿勢のまま動かない。


「はっはっは!そのまま蹴散らせぇ!」


 ゴローが少しドヤ顔で振り向きながら後ろに居るパンチラビットに声援を送る。


「グルルルルゥゥ・・・・ガァアッ!!」


 パンチラビットがそのままブレイドシザース達に近づき、まるで力を貯めるかのように腕を構えた。次の瞬間、恐ろしい速度で太く短い腕が一番近くにいたブレイドシザースに襲い掛かる。


「シャァア"ア"ア"ア"ア"」


 動かない体を無理やり動かし、直線状に生えている刀のような腕を生かして自身の胸の前で十字に組み合わせる。正面からガードするつもりなのだろう。そして・・・接触する。


 バキィッバァァァンッ!!


 最初に刀がへし折れるような音がした後、何かが砕け散った音がした。


 何が起きたのか。パンチラビットの腕が、攻撃を受け止めたブレイドシザースの胸にめり込んだ後ブレイドシザースは一瞬の間を置いた後、光の粒子となって爆散したのだ。そして、蹂躙が始まった。






「後は任せても問題ないな、次は・・・っ!?『守れぇ!!』」


「グルゥアァッ!!」


 バァァンッ!!ビシャビシャッ!


 ゴローが焦りながらそう叫んだ後、2体のパンチラビットがゴローの身を守るように立ち塞がりそれとほぼ同時にヒールスネークが飛び掛ってきた。パンチラビットはその動作に合わせ腕を振り回し飛び掛ってきたスネークを叩き落とす。先ほどブレイドシザースにした様な恐ろしいパンチとは程遠い、撫でるような攻撃。腕に阻まれその流れのままヒールスネークは地面に落とされると思ったが予想とは違い、攻撃が当たった瞬間光の粒子となって消えていった。それで終わりと思いきや、光の粒子になったと同時に同じ場所から、ヒールスネークの体液と思われる液体が側にいたパンチラビット2体に降りかかった。


「あらぁ?それは悪手だわぁ・・・2体は好都合よぉ!」


 妖艶な微笑みをしながらメデューシアはおっとりとした口調でそう囁く。


「くっそ・・・やっちまった・・・相変わらず質が悪いぞそれ!」


 ヒールスネーク。メデューシアが作り出した生物の名前。体の大きさは犬と同じくらいで小型の部類に入るだろう。体の色は淡い肌色で、蛇独特の鱗はあるが光沢は無い。殆ど蛇の特徴と変わりないが頭に近い胴の部分が二箇所ほど丸く膨らんでおり、何か飲み込んでいるようなそんな印象を感じる。顔は蛇の造詣そのものだが、目は人間と同じような瞳孔であの特徴的な縦の筋が入ったような目ではない。舌の先も分かれてはおらず、細長い1本の舌が口から時折顔を覗かせている。全体的な印象はデリケートな生物でとても強いようには見えない。


「なら諦めてダンジョンコアが再生成されるまで待っていたらどうかしらぁ?とても有意義だと思うわよぉ?」


「こっちの時間で丸1日掛かるんだぞ!?待ってられるかぁ!!それに・・・お前を倒せば俺のコア+お前のコアで逆に儲かるんだぜ?迷う必要があるか!」


「しつこい男は嫌われるわよぉ?」


「やめろ・・・それを忘れるために俺は・・・じゃない!!なぜこの世界でも俺は心を抉られなけりゃいけねえんだ!!くそぉ・・・まだ動けねえのか・・・しかもHPの削り方までやらしいなぁ!」


「呑みに付き合ってあげてもいいわよぉ?このまま引いてくれたらね!」


「じゃぁコア返せよぉ!!」


「それは嫌ぁ・・・あら」バァァンッ!!


「チッ、意外と隙が無いわね・・・」


「いやぁめんどくさいですねぇ・・・ナイフは残り4本。赤字ですわぁコレ」


 ゴローとメデューシアが会話をしていると、隙を突いたようにエリーのメイスがメデューシアに延びてきた。それに合わせてダラットも投げナイフを2本、メデューシアに向けて投げたがそれらは全て、地面に居たヒールスネークが飛び上がり自身の体でメデューシアへの攻撃を遮る。エリーのメイスはヒールスネークに当たった後すぐに元の長さまで縮み、ダラットの投げナイフはヒールスネークに刺さりそのままヒールスネークを爆散させた後地面にポトりと落ちていった。


「不意打ちだなんて卑怯だとは思わないのかしらぁ?」


「お前が言うなよぉ!!マップ表示から隠れるなんて反則だろうがぁ!!!」


「やだわぁ、私のちんまりした脳で頑張って考えた戦術なんだから認めてちょうだいな☆」


「今よ!<棍棒伸縮>ぅ!!」バァァンッ!!


 メデューシアがエリーに対して放った言葉に過剰反応するゴロー。メデューシアの顔がゴローに向かった瞬間、エリーはまた自身のメイスを再びスキルで伸縮させメデューシアを狙ったが、再び地面に居たヒールスネークによって阻まれた。


「あなた達もどうかしら?ここは一旦休戦ということで終わりにしない?」


「目の前に経験地の塊があるのに引く理由だど無いわ!!」


「エリ~ヨダレが出てるぞぉ~」


 キリっとした顔でそう言い放つエリーとその顔を見てだらしない顔を指摘するメル。


「あらぁそれは残念。だけど・・・そろそろその武器も持たないんじゃないかしらぁ?」


 何度かヒールスネークを倒していたエリーだったが、倒す毎にエリーのメイスは謎の液体を浴び続けていた。再度確認してみると木製のメイスは既に原型を留めてはおらず、かなり変形しており次の攻撃で折れるのは明らかだった。


「厄介だわ・・・」


「でしょう?私の蛇ちゃん達に舐め腐って攻撃したプレイヤーはどんどんピンチになるわよぉ!結構ハマる人達多くて中々美味しかったわ」


「性格悪いわねアンタ!」

「(性格悪りぃなあいつ!!)」







 カメラ越しで見ていた俺も思わずそうツッコみ、エリーとハモった。嬉しくない。


「(そろそろ行動に移すか・・・プレイヤー狙った方がSP的に美味しそうだけどぶっちゃけエリー怖い、いやあいつ襲うと嫌な予感しかしないからここは第二目標であるメデューシアが抱きかかえてるダンジョンコアを狙うか。決してエリーにトラウマがあるわけではない、トラウマは無いぞ?大事なことだから2回言ったぞ)」


 誰に聞かれているわけでも無いのに何故か弁明しだした俺だが、ウチの子達に命令を出す。


「(『ダンジョンコアを狙え!』)」


「がぁー!!」


 そして4匹のヘンテコ・ヘッド達は二手に分かれて街道の脇の林からメデューシアに近寄っていった。






「だけどアンタもピンチなんじゃない?厄介な能力だけどその蛇、確実に数が減るじゃない?残り10数匹ってとこかしら?」


「あぁそうねぇ、かわいい私の蛇ちゃん達が減っちゃった・・・だからこうするわ。<蛇産卵>」


「っげ」


 ボトッx5


 エリーの指摘を受けたメデューシアはニヤリと笑いながらスキルを発動した。嫌な予感を感じたのかエリーが苦々しく言葉を呟いた次の瞬間、メデューシアの口の先に光の粒子が集まっていき小型の犬より一回り大きい卵が生成され、地面にボトリと5つの卵が落ちた。


「・・・あれ?卵?てっきり蛇が増えるのかと」


「そろそろお腹空いたよエリ~」


「おっきぃ卵ですねー!」


 疑問を浮かべるエリーと腹減りを訴えるメル。そして斧を握り締めながら呑気に喋るフェイ=フォレスト。


「蛇ちゃん増やすには一工夫必要なのよねぇ・・・これも後々改良しないといけないかしらぁ。まぁいいわ!そしてこうするのよ・・・<高速成長>」


「あちゃー・・・やっぱり増えるパターンよねこれ・・・」


 バリバリッ


 メデューシアがスキルを発動した直後、周りに居る蛇と同じ大きさの蛇が卵の中から殻を突き破って出てくる。そして突き破った殻をムシャムシャと食べて心なしか元気になっていく蛇達であった。


「無駄にリアルじゃないソレ」


「すごいねぇ本当に」


「でしょお!初めて蛇ちゃん達作った時びっくりしたわぁ・・・さぁ!それは置いておいてこれで状況は真逆になったわよ?あなたの武器も限りがあるんじゃないかしらぁ?」


 エリーとメルが感想を言った後、ちょっと自慢げに喋るメデューシア。


「普通ならそうね・・・でもここには何の偶然か、役者は揃ってるのよ!フェイ!持ってる木材後で買い取るからメルに渡してくれる?」


「はわわ、別に構いませんが何をするんです?とりあえずメルさんどーぞ!」


「なるほどぉ~承りました。って重ぃいい!!」


 フェイの手に綺麗な丸太がぼんっと現れ、フェイは片手でそれをメルに渡した。同じように片手で受け取ったメルだが余りの重さにすぐ両手で持ち直そうとするが地面に落とす。


「重過ぎるよぉ~・・・ま、いいや。このまま<武器製造>!」


 メルがそう叫んだ直後、地面に落ちた丸太は一瞬光り形がグニュグニュと変わっていった。光が収まった後、そこにひっそりと置かれていたのはもち手が握りやすく、女性が持てる太さで先端に行くほど太く重くなっているシンプルなメイスがそこに置かれていた。


「うむ!良いメイスね!ふふふ・・・どうかしら!木材は限りがあるかもしれないけどこれならまだまだ戦闘は続けられるわよ!」


「ほへぇ~私の木材がこんな風になるんですねぇ!興味深い・・・」


「こ、これは泥沼な戦いが始まるわよぉ・・・」


「・・・めんどくせえ・・・」


 エリーがキメ顔で宣戦布告し、フェイ、メデューシア、ダラットがそれぞれ感想を述べる。






「ん・・・?あ!!見て見てエリー!!ヘンテコちゃんだよヘンテコちゃん!!」


「なんですって!?このややこしい時に・・・ってあら、なるほどなるほど」


「なんですがあのピンク色の変な生き物は!珍しい!」


「めんどくせぇ~」


 ここでようやく、林の横を通り抜けようとしている俺のヘンテコ・ヘッドに気づく4人のプレイヤー。だが今はプレイヤーを無視して俺はメデューシアのコアを狙わせてもらう!


「さぁどうする?あのモンスターもアンタのコア狙いみたいよ?」


 エリーが俺の目的にいち早く気づく。つかばらすな警戒されるだろ。


「・・・情報を見る限りさほど強くは無さそうね。というか構成が謎だわぁ、愛らしいとは思うけど」


「(うるせえよ!!)」


「がぁ~!!」


 左右の林から、気の抜けるような声を発しながら接近してくるヘンテコ・ヘッド。細目でモンスター情報を確認したメデューシアはそう言った。


「・・・中々きついわぁ、とりあえずあなた達の数を減らさないとどうしようもないわね」


 そう言い放ち、メデューシアは構える。


「俺を忘れちゃ困るぜお姉さんよぉ・・・やっと麻痺が解けたぁ!!」


「グルルルゥゥ!!」


 様子見していたゴローがいきなり叫びだす。先ほどまでヒールスネークの液体を浴び、その場から動かなかったパンチラビットが再び動き出した。


「っく・・・あなたまで動き出すのはまずいわぁ・・・」


「さぁ、もうアンタのコア争奪戦になりつつあるわよ?私達4人に創造者が1人、そして別のモンスターが4体が敵に回っているわ・・・たとえ蛇の数が居ようとこの人数なら何かしらダンジョンコアに攻撃通るんじゃないかしら?ふふふ・・・諦めなさい!」


「エリーの顔が輝いてるぅ・・・早くご飯食べたぃ」


 少なくとも負けることはない、そう確信したエリーは活き活きとしてそう言い放つ。対するメデューシアは焦りだしたのか表情が崩れている。



 そして、状況はまた動き出す。




「もったいないけど使い所はココかしら」


 焦っていた表情のメデューシアに急に変化が現れた。焦っていた表情はどこへやら、今は落ちついた表情でメデューシアは何かをインベントリから片方の手に出した。


「・・・っげ!それ俺のコア!!おいやめろまさか」


「そのまさかよぉ」


 ゴローがそのアイテムの正体に気づき、メデューシアはにっこりと微笑みながら会話する。そして片手に握っているゴローの物と思われるダンジョンコアを天に掲げ始めた。





 周囲の空間が震えたような気がした。太陽が広がる青空の下、景色は開放感で満ち溢れているのにも関わらず空気の密度が数倍に引きあがる。息苦しさを感じるプレイヤー達。それはメデューシアに近づくにつれ濃密になっていく。そしてメデューシアの周囲に今もウネウネと動いているヒールスネーク達の体が、チリチリと存在がブレ始める。耳鳴りが聞こえ、地面が揺れだし、メデューシアのモンスター達の存在が急激に膨れ上がる。









「 位 階 覚 醒 」










 創造者、メデューシアは嚙み締めるようにそう言葉を紡いだ。

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