検証してみる
「何人かは倒せたが・・・くやしぃ!!」
エリーによってまさかの毒放置プレイが決行され俺のヘンテコ・ヘッドは光の塵となった。というかあいつが今ヘンテコ種討伐数1位なんだけどどうしてこうなった。さっきあいつのステータス情報見ておくべきだったな・・・倒されるのが早すぎて見るの忘れたわ。結構スキル増やしてそうだったからちょっと見てみたかった。
さて、悔しがるのもこのくらいにしてここらへんで情報を整理しておこう。ちょっとさっきの戦闘で色々疑問に思った所とわかった所を順番に考えていこうか。
「プレイヤーを倒した時のSPがうめぇ」
そう、先程倒した3名のプレイヤーから手に入った総取得SPが340SP。ヘンテコ・ヘッド9匹を倒した程の量を取得できた。自分のモンスターを自分で倒すよりやっぱ効率いいなこれ、DP溜まったら本格的にプレイヤーを狩りに行くか。倒せるとやっぱ嬉しい、ウチの子強い。
「とりあえず1体分のDP溜まってるからヘンテコ・ヘッドは出しておこう、ほれ召還っと」
「・・・がぁ~」
相変わらず空に顔を向けながらのご登場だ。雲を見るのが好きなのだろうか、とりあえず疑問に思っている事を実行しておこう。
「よーし、『立つんだ』」
「がぁ!!」
俺は召還されたばかりのヘンテコに近づき、そう命令した。ヘンテコ・ヘッドはこれでもかというほど勢い良く返事をした後、思いっきり立ちあがる。
「あぶねぇ!!!」「がぁ~?」
こいつが物凄い勢いで立ち上がる時に俺が真横に居たため、腕の長さ程ある角がもう少しで俺に猛威を振るう所だった。間一髪で仰け反りながら後ろに避けたがこいつの攻撃力は恐らくシザースやハリモンと同等かそれ以上だと思うから今の割とピンチだったかもしれん。そんな俺の焦りを無視し、どうしたの?と首を傾げるヘンテコ・ヘッドであった。
「ったく気をつけろよ・・・まぁいい。おらっ!!」
「・・・がぁ?」
ボフッ!!
中身がぎゅうぎゅうに詰まった布団を殴ったような感触と音が出た。
少し焦りながら気をつけるように窘めた後、俺はヘンテコ・ヘッドを軽く殴ってみた。何をしてるんだ?というような鳴き声を鳴らすこいつを無視してすぐウィンドウを開きHPを確認する。
<創造モンスター情報>
名称:ヘンテコ・ヘッド
種族:変テコな生物
HP:15/15
SP:36
維持DP:30
創造DP:30
位階:1
<習得強化>
・<捩れた角*1>
・<体内:綿*1>
<習得スキル>
・<ヘッドスイング*2>
「おぉ・・・流石に1すら減ってねえ。ちょっと感動」
無強化のヘンテコは勢いよく殴った瞬間破けて爆散したからな・・・ちょっとびびりながら軽く殴ってみたが耐久性は少なくとも並以上はありそうだ。安心。
「ならこれでどうだ、っせい!!!」
「がぁ!!!」
今度は全身を使い思いっきり全力でヘンテコ・ヘッドの横っ腹を蹴ってみた。今度はしまらない呻き声をあげるヘンテコ・ヘッド。すまん。そして同じようにウィンドウを確認する。
<創造モンスター情報>
名称:ヘンテコ・ヘッド
種族:変テコな生物
HP:14/15
SP:36
維持DP:30
創造DP:30
位階:1
<習得強化>
・<捩れた角*1>
・<体内:綿*1>
<習得スキル>
・<ヘッドスイング*2>
「よし、HP減ったな・・・そんな責めるような目で俺を見るんじゃない。心にクル」
「がぁ~・・・」
現実世界の俺の心に攻撃を仕掛けてくるヘンテコ・ヘッドをやり過ごし、検証開始だ。俺が調べたかったのはまず減ったHPは自然回復するのか?って疑問だ。それが自然回復するのか知りたくてさっきエリーの一撃で片足を吹っ飛ばされ、放置されたヘンテコ・ヘッドを回収しようとした理由だ。まぁ毒でやられたけどな!!あいつにはいつかSPになってもらおう。
「とりあえずヘンテコ・ヘッドはこのまま暫く様子見だな、次いくぞ次。ほら来い!ヘンテコx5!!」
「がぁ~!」x5
「がぁー!!」
さて次に俺が気になってたのはメルがぽろっと零した「ドロップ品」についてだ。俺は聞き逃さなかったぜ!学校の授業はよく聞き逃すのにこういったゲームになるとなんでだろうな、不思議と覚えてるのは・・・。ドロップ品っていうのはRPGゲームによくあるモンスターを倒した時の報酬っつーのかな、用はそのモンスターが落とすって設定のアイテムだ。これはゲームによってバラバラで、お金だったり素材だったりするんだ。中には「レアドロップ」と言われる何百体も倒さないと手に入らないような希少性が高いアイテムとか設定されてたりする。俺はそういうアイテムを「掘る」のが好きだったりする。掘るってのはそのレアドロップが出るまでモンスターを倒し続ける事だ。ちょっと長くなっちまったがまぁアレだな、今から俺がする事は予想できるだろう。
「すまんな・・・知るためには犠牲が必要なのだ。フン!!」
バリーン!!!x5
「がぁ~!?」
俺に殴られて光の粒子となっていくヘンテコ達。そして口を大きく開け、表情の変わらない顔で散っていく仲間達を見るヘンテコ・ヘッド。その目はやめるんだ、俺の心にクる。
「・・・お?これがドロップ品って奴か!」
光の塵となっていったヘンテコ達が居た場所に、1つだけピンク色の円錐状のナニカが横たわっていた。長さは俺の身長ぐらいあるなこれ。拾ってみよう。
「なんだこの手触りは・・・地味に病みつきになるな。すべすべで弾力がこれ綿じゃねえな・・・なんだろう、もうちょっと弾力がつええ。・・・グミだ!そう・・・グミに近いなこれ」
そう言い放ち、俺はこのアイテムをグニグニ押しながら注視してみる。説明とかウィンドウが出るのを期待してみると、出てきた!
<ヘンテコのしっぽ>
謎の生物、ヘンテコのしっぽ。
触感がフニフニで癖になる手触り。
おぉ!!俺の作ったモンスターにドロップ品が設定されてるとは思わなかった。こんなのは設定してないからアレか?システムが自動的に落とすアイテムを作るんだろうか。やべえ、だとするなら作ったモンスターが何落とすか全部気になるな・・・コレクター欲が疼くぜ!フニフニ・・・?グニグニじゃないか?いや細かい所はどうでもいいな。俺のモンスターだけってのは考えにくいよな?シザースやハリモン、そして他のプレイヤーが作ったモンスターにも全て設定されてるんだろう。中々すげえなこのシステム、これしっぽを武器や防具の製作材料にできるんだろうか・・・材料にした時の補正とかあるんならモンスターの強さに依存するのか?創造者の俺が気にする事ではないと思うが気になるなこれ。今度ガブの知り合いに製作者居ないか聞いてみるか。とりあえずこのアイテムはインベントリに突っ込んでおこう。
「えーとインベントに入れるには・・・っておぉ、意識しただけで消えた。武器切り替えとか一瞬でできるんだろうか?戦略上重要そうだな・・・覚えておこう」
何気に初めてアイテムを手に入れたな、俺も草とか取得してみるべきだったか。
「さて・・・最後は一番気になってた[ソウルコア]だな。これって・・・何なんだろう」
ヘルプウィンドウがポンと出てきた。さすがです。ソウルコアってのはさっきのプレイヤーを倒した時に手に入ったSCというポイント?これがそうみたいだな。モンスター倒した後は出なかったからプレイヤーを倒した時限定なのだろう。説明を見てみるか。
<ソウルコアについて>
冒険者プレイヤーを倒すと入手できる魂の核。<ソウルコア>は<ダンジョン・コア>を所持していると取得できます。<ソウルコア>は様々な用途に使用でき、また強力な冒険者プレイヤーはごく稀に通常時とは違う<ソウルコア>をドロップし、アイテム化します。
代表的な使用例
・モンスターの位階上昇
・ネームド化
「位階ってのはよくわからんな。それとネームド化ってなんだ」
すかさず出てくるヘルプウィンドウ先生
<ネームド化>
創造した生物に固有の名を与える事ができ、能力が強化されます。ただし、この強化は種族全体ではなく固有の名を与えた個体だけが対象となります。
結構複雑だが要は自分の作ったモンスターをさらに強化できるみたいだ、ただし通常のスキル取得や強化取得みたいなその種全体じゃなく1体毎に強化を施さないといけないみたいだ。リーダーとかそういった役目のモンスターを作るのに適してるってことか?デメリットは全体が強化されない、倒されると強化した分が消えるって所か・・・中々使いどころが難しいんじゃないかこれ。しばらくは使わないな、今度機会があれば試してみよう。
「よし、あとは位階上昇か。ヘンテコで試してみるか・・・えっと実行メニューは・・・おっ出てきたな」
<実行メニュー>
・位階上昇:消費SC100
・ネームド化:消費SC100
「おおぅ・・・足りねえ」
ソウルコア100も必要なのか、ちょっとばかし先は長そうだ。そういえば取得SCの数に差があったな・・・SPが多い奴ほどSCが多いのかね。つまり強い奴倒せば倒す程美味しいってことか?そこらへんはRPGの基本と変わらないんだろうな。っと俺のステータスは今どうなってるんだっけな。確認しよう。
<キャラクター情報>
名前:ハジメ
クラス:創造者
職業:なし
HP:10/10
SC:5
SP:406
MAXDP:70[-30]
DP:18
生成DP:3
登録モンスター
@変テコな生物
・[ヘンテコ]
・[ヘンテコ・ヘッド]
<所持スキル>
・<変テコな生物創造*1>
・<生成DP上昇*2>
お、SCの表記も見えるようになったな。0ポイントの時は隠れてたのか。そして見よこのSPを!最初と比べたら大分SPは溜まったな。これが多いのか少ないのかわかんねえがたぶん少ないんだろう。通貨にも使うみたいだしもっと貯めたいが・・・まだいいか。死んじまうと半分消えるから今の内に使いきっちまおう。まだまだ強化したいしな!
「手始めにまず生成DP上げようか、ばんばんヘンテコ達を出せるようにしよう」
<ランクアップコスト:SP80>
<ランク上昇完了:[生成DP上昇*3]>
「よっしゃ!あと最大値もそろそろ上げてみよう。取得コストはどれぐらいだ?えーとイメージ・・・イメージ・・・おりゃっ!」
<スキルコスト:SP80>
<スキル習得:[最大DP上昇*1]>
コスト見て即取得したわ。これも必須だから比較的迷わなかったぜ!もう少し計画的にとか考えるのはやめておこう、眠れなくなるぞ!・・・よし、今回の分のSPは全部生成DPと最大DPに回してしまおう。効率アップだ!ヘンテコ軍団を作るんだ!
<ランクアップコスト:SP120>
<ランク上昇完了:[最大DP上昇*2]>
<ランクアップコスト:SP120>
<ランク上昇完了:[生成DP上昇*4]>
よしっ!再度ステータス確認だぁ!!
<キャラクター情報>
名前:ハジメ
クラス:創造者
職業:なし
HP:10/10
SC:5
SP:6
MAXDP:90[-30]
DP:48
生成DP:5
登録モンスター
@変テコな生物
・[ヘンテコ]
・[ヘンテコ・ヘッド]
<所持スキル>
・<変テコな生物創造*1>
・<生成DP上昇*4>
・<最大DP上昇*2>
「さすがにこれだけ生成DP上げると溜まるの早く感じるな!」
「がぁ~!!」
今まで空を見上げてたヘンテコ・ヘッドが思い出したかのように返事をした。マイペースな奴だ。そしてやっぱDPの上がる速度がいい感じになってきてる。最大DPも増やして丁度全部で4体のヘンテコ・ヘッドを出しておけるようになってるな!一回4体同時に運用してみたいな・・・あと10分も待てば溜まるのかはええ。これ生成DP1なら1時間程掛かってたな・・・まぁのんびり待つか。
「えっとそういえばこの世界の時間って今何時だ・・・?確かプレイしてそろそろ4時間ぐらい・・・13時か」
ゲーム内の時計が13時と表示されていた、現実世界で13時ぐらいにこのゲーム始めたから分かりにくいがたぶん現実世界の方は大体24分ぐらい経ってるって事になるな。このゲームの時間の十分の一が現実時間みたいだから結構感覚狂いそうだ。あと6時間ぐらいやって休憩しよう。
「じゃー10分ぐらいのんびり待つかぁ~!」
「がぁ~・・・」
こうして俺はヘンテコ・ヘッドを枕にし、空を見上げながら時が経つのを待つことにした。