かつて世界は1つであった
飽きてきた、気が向いたら続き書きます。
時刻は昼休み、食堂という名の戦場を駆け巡った勇者たちが各々獲得した戦利品を手に教室へ戻ってくる。
友や恋人を失った者も数多く居よう、そんな魔の海域より生還した1人の男、省吾に対し太一は惜しみない賞賛を送っていた。
「太一、これを見ろ」
省吾が1つの物体を差し出す。
「こ、これはっ!?」
それは太一が見たこともない物体で、黄色く丸く輝いていた。
「これはな、メロンパンというものだ。俺も実物は初めて見る」
太一は驚きのあまり、椅子から転げ落ちた。
「めめめ、メロンパンだって!? 失われたはずの古代遺産が何故ここにっ!?」
太一は目をかっと見開き、ソレに見入る。
「さあな……、神の悪戯か誰かの陰謀か……、それはわからんが今は俺の手元にあるこという事だけは事実だ」
「それさえあればっ!」
省吾はソレを手に掲げ、不敵に笑う。
「そう! これさえあれば世界の全てを牛耳ることも可能っ! この漣 省吾が唯一絶対の神と言っても過言ではないだろうっ!」
畏れ敬うように太一はその場に跪いた。
「し、しかしっ! そんな強大な力を僕達は果たして有効に使うことはできるのだろうか……」
太一は不安だった、それは人の手に余るもの。強大な力の奔流に流されてしまうのではないかと。
「なに、力に善悪はない。それをどう使うかが問題だからだ」
省吾は力に魅入るようにソレを見つめる。
「そうだな……、僕達は決して道を踏み外さないっ! その力正しく振るおうとここに誓おう」
「ああ、世界を変えるんだっ! 俺達の手でっ!」
2人は新たな決意を胸にその力を行使する。
「こ、これがメロンパンの力かっ!」
ソレを口にした省吾が驚きの表情を見せる。
「すごい、すごいぞっ! 力が溢れ出てくるようだっ! これなら世界を我が物にっ!」
「だめだっ! 省吾! 自分を見失うなっ! 力に流されてはダメだっ!」
力に魅入られた省吾はその眼に欲望が渦巻いていた。
このままでは省吾が暗黒面に堕ちてしまう、それを感じ取った太一はソレを2つに割り自分も口にした。
「お前1人には背負わせないさ、強大な力も2人ならっ! 2人ならきっと正しく使えるはずだ!」
必死の説得に我に返った省吾は自分の愚かしい行為に後悔した。
「お、俺は今まで何を? すまない太一、あれほどわかっていたのに力に魅入られてしまっていたようだ……」
「もういいんだよ、省吾。君1人には背負わせない、共にこの力を正しく使おう」
2人は抱き合った。
「そういえば、省吾知ってる? メロンパンってメロン入ってないんだよ」
「まじで?」