そして誰も居なくなる
良い子は真似しないでね
「なあ太一」
「なんだい、省吾」
炎天下の中、2人は公園に来ていた。
「暑いな」
「暑いね」
強く照りつける日差しを前に2人は嘆いた。
「そうだ! 面白い遊びを考えたぞ!」
眼鏡をくいっと持ち上げ省吾が声をあげる、この眼鏡をくいっと持ち上げる癖は大抵省吾は何も考えていない時の癖だと知っていた太一は歓喜の余り内容を問いただす他なかった。
「それはどんな遊びなんだい!? 省吾!」
省吾はにやりと笑うと、前代未聞の1つの遊びを提案した。
「熱中症ごっこだ!」
「熱中症ごっこ!?」
太一は名前を聞いただけでワクワク感が止まらないのか、目を子供のように輝かせて省吾の話に食い入る。
「そうさ、熱中症ごっこだ。どちらが早く熱中症になるかの勝負だ!」
省吾はどうだと言わんばかりに両手を広げ、太一に語る。
「聞いただけでワクワクして胸が騒ぐぞっ、なんて楽しそうな遊びなんだ! 今すぐやろう!」
太一は省吾の提案した遊びに乗ることにした。
「ようし、どちらが先に熱中症になるか勝負だ! 太一!」
「望むところだよ! 僕にも背負っているものがある、負けないよっ、省吾!」
ジリジリとした日差しが2人を照りつける、汗にまみれた眼鏡を省吾がしきりに拭き取る。
お互い譲れないものを胸に、勝負は熾烈を極めた。
1時間程経過しただろうか、青白い顔をした省吾がよろよろと立ち上がる。
「どうしたんだい? まさかもうギブアップかい?」
炎天下の中だ、無理もない。軽口を叩く太一も汗にまみれ憔悴していた。
「なぁに、勝負はまだまだこれからさ」
太一を見下ろし、省吾は不敵に笑う。
勝負を始めて2時間が経過した、お互いすでに喋る気力も失っていた。
「なあ、太一」
「なんだい、省吾」
2人は嘆くように呟いた。
「暑いな」
「うん、暑いね」
2人は家に帰った。