世界の理
まだ続いてた
「太一、あれを見ろ」
省吾が指差す先には運動場でもう初夏を迎えた季節だというのに、タンクトップ1枚で指導する陸上部の男性顧問の姿があった。
「太一、アレをみてどう思う?」
眼鏡を光らせ、省吾が太一へと問う。
「ああ、もう夏だというのにどうなってやがるんだこの世界は」
信じられないものでも見たかの表情で太一は嘆いた。
「そうだな、ホントこの世は腐ってやがる。あんなものが許されるなんてな……」
ギリっと歯を噛み締め、睨むように男性顧問を省吾は見つめる。
「ああ、そうだな。けれど、そんな腐った世界を変えるために僕等はここにいるんだ。今こそ僕等が立ち上がり世界を変えるときじゃないのか!?」
「太一……」
2人はお互いの友情を確かめるように、抱き合った。
「だけど、俺は俺は……」
今にも泣き出しそうな声で省吾が嘆く。
「どうしたんだ省吾!? 何か悩みでもあるのか!?」
突然の事に慌てふためく太一に省吾はまるで懺悔をするように語り始める。
「こんなのいけないとわかってる! わかってるんだが、自分の気持ちにウソはつけないんだっ!」
「どうしたんだよ! 何が問題なんだ!」
省吾が何を悩んでいるのかわからないが、友として全てを受け入れる覚悟を太一は決めた。
「これを口にしてしまったら、俺は……俺達は今みたいに笑い合えないかもしれない。それでも俺はお前に伝えなければいけないと思う、聞いてくれるか太一」
「ああ、話してくれ」
ぽつりぽつりと省吾が語り始めた。
「あれはな、去年の夏のことか……。俺は今日みたいに校庭を見ながら思っていた、こんな世の中は間違っているとな。けれどそこに相反する気持ちが俺の中に生まれたのも確かだった、その時俺は初めて自分の気持ちに気づいた。泣いたさ、1日中泣き通したさ、けれど自分の気持ちを押さえ込もうとする程にその気持ちは日に日に強くなっていってしまった。もう自分にウソはつけないと思ったんだ」
独白するように、省吾は語り続けた。
「今なら言える、俺の本当の気持ちを」
校庭の男性顧問を指差し省吾は言葉を漏らす。
「アレを見てるとムラムラするんだ……」
顔を赤らめて、省吾は自分の気持ちを口に出した。
「ああ、そうなんだ」
太一は冷たく言い放った。