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INNOCENT STEAL -Last GAMBIT-  作者: 豹牙
六章 私亡の鼓舞
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41 革命の真似事

「どういうこと? どうやって知ったの?」

 と、チェルシーは聞く。

モルディオの能力を使えば、シュヴァルツが犯人だと知ることはできる。

だが、それは本当に真実なのだろうか。

未来予知の内容はモルディオしか知ることができない。


「シュヴァルツは僕たちが館長室に入れないように、勝手に規則を作った。この時点で十分怪しいんだよ。仕掛けてあった大量の監視カメラはダミー。あれは僕たちの意識を、何もない本棚に向ける為のものでしかない。

 で、もう一度侵入してみたら案の定、不自然に壊れたレコーダーがあった。シュヴァルツはこれを物理的に壊そうとしたみたいだけど、隠してたところを見たら失敗したみたいだね。中にデータが残ってたから復旧は簡単。後はコピーしたデータを別の機器に移せば完璧な証拠になる」


 モルディオは手に持った袋からレコーダーのような機器を取り出し、再生ボタンを押した。


『アルヴェイスは始末したけどなァ、まだこそこそ嗅ぎまわるネズミがいるみてェだな』


 聞き取れたのはこのシュヴァルツの一言だけだった。

それ以外はデータが壊れていたのか、途切れて聞き取れなかった。


「これはきっとシュヴァルツを詮索して始末された、ライムさんのレコーダーで撮った声なんだ。シュヴァルツは、自分やウィンズを探る祓魔師を殺してたんだ。分かりやすいよね。

 今から館長室に行って、シュヴァルツを拘束する。それで、今まで美術館やウィンズが隠蔽してきた事実を聞き出す。それを、みんなに手伝ってほしいんだ」


 周囲が顔を見合わせる。


「シュヴァルツはグロウという組織の手下に過ぎない。このままシュヴァルツを放っておけば、絶対あいつは逃げる。シュヴァルツを逃がしてしまえば、僕たちはこれから先も見えない恐怖に縛られるだけだ。

 これは、みんながいないとできない。僕ひとりじゃできないけど、みんながいればできる。シュヴァルツを押さえるには、まだあいつがここにいる、今しかないんだ。

 彼の仇を討てるのは、僕たちだけなんだ。今なら絶対できる。僕についてきてくれる人は、今すぐ戦闘準備をしてほしい」


 モルディオの鼓舞は、演技くさかった。

こんな場面で熱弁など、彼らしくなかった。

だが、不安に満ちたクラスメートを動かすには十分だった。

A組の面々はそれぞれの武器を取り出して、シュヴァルツ拘束という革命に賛同した。


「仇って、殺す気ですか」


 意気込むクラスメートの横で、シェイムが小声で尋ねた。

モルディオは教壇を降りて、シェイムの前に立った。


「シュヴァルツは僕たちを殺そうと動くはずだ。僕も殺さずに終わらせる自信はない。大丈夫だよ、もしそうなってもやるのは僕だから。責任は全て僕がとるよ」


 クラスメートに聞こえない声量で、モルディオは話している。

その様子はシェイムを脅しているようにも見える。


「人殺しですよ……?」

「そうだね。でも相手はもっと凶悪なんだ。僕も最近知ったことだけど、シュヴァルツはA級になる為に、過去に何人も殺してるんだよ。今回はそれがA級だったから目立ったわけで、以前の犯行は全部悪魔の仕業ってことになってるから、怪しまれてないんだ。だから殺さないと気が済まない人も、いるんじゃない」


 モルディオは平然とした表情で言った。

その視線はハミルの方に向いている。


「おれは信じないからな! あいつが死んだなんてっ!」

 と、ハミルは突然大声をあげた。

この程度のことで『革命の真似事』に意気込むクラスが静まることはなかった。


「おれはあいつが生きてるって、信じてるからな」

「あのさ。死体も見つかってるんだよ」

「そんな証拠どこにあんだよ」

「ここに写真あるけど」


 モルディオが取り出した写真を見ようとせずに、ハミルはうずくまった。


「嫌だ、そんなもん見たくねえ」

「意味不明だよ」

「モルディオ、お前、能力で知ってたからそんな平然としてんだろ。それがあいつが生きてる証だ」

「死んだ証が見たいならまだあるけど」


 そう言って、モルディオはハミルに白い袋を手渡した。

ハミルはおそるおそる中を開ける。


「これって、あいつの」


 白い袋から取り出されたのは、セヴィスが使っていた赤いナイフ八本だった。

それも、血まみれだ。


「あ……あぁ……」


 ハミルは手のひらから血が出る程ナイフを握り締める。

すぐに、慟哭が響いた。


***


 絢爛豪華な美術館の最上階。

その廊下に、無数の足音が鳴り響く。

モルディオを先頭に、二年A組は館長室に向かう。

ハミルは目を真っ赤にしながらもついてきた。


「止まれっ!」


 茶色の扉の前に立っていた男が拳銃を向ける。

その男はトーナメントでシュヴァルツとタッグを組んだ、B級のペスタ=フランドーだった。


「こんな大人数で何の用だっ! 入室許可のない者は今すぐ去れっ! さもないと痛い目に遭わせるぞっ!」


 誰も止まろうとしない。

ペスタもA組全員が来たことに動揺している。


「うるせえぇっ死ねぇええっ!」


 怒りに身を任せたクラスメートたちが、矢や銃を撃つ。

相手はたった一人の人間であるにも関わらず、銃弾が降り注いだ。


 セヴィスという存在の重みを、ハミルは改めて実感した。

彼の無念を晴らす為に、クラスメートがこんなにも怒りを露にしているのだ。


 憤怒の銃弾は、壁に無数の穴をあけた。

蜂の巣にされたペスタは、止むを得ず懐からポケットベルのようなものを取り出す。


「悪魔が来るよ、構えて」

 と、モルディオが言った。

直後、館長室の向かいの部屋から武装した男たちが出てきた。

その数はおよそ二十人。

館長室を詮索する単体の敵に備えていたものらしいが、学園最強と言われた二年A組の敵ではない。


「貴様ら、殺す!」


 悪魔たちが走ってきた。

ほぼ同時に、モルディオが遠距離系に合図を出す。


 すぐに遠距離系の銃弾が飛び、チェルシーが波と水弾で全体にダメージを与える。

そして接近される前に、ハミルとシェイムが先陣を切り、その後ろに近距離系が続く。

モルディオは自ら攻撃せず、補助系に指示していく。


 館長室前の戦闘は十分で終わりを告げた。

治癒の魔力権を持つランドがいたこともあって、死人が出ることはなかった。

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