小さいドワーフもどきにはご注意ください。
「ねえ、それマジで買うの?キモイじゃん」
「ええ〜〜超カワイイじゃん〜
ララってば変だよね〜ノーちゃんのかわいさがわからないなんて目が節穴だね〜!」
「頼むから男子高校生にもなって店の中で置物に名前つけるとか、話しかけるのとかやめなよ、一緒にいるあたしが恥ずかしいでしょ。っておい、無視すんなよ。お前の耳は風穴か。お前も人の事言えないなおい。」
「ノーちゃん、帰ったら他の子にもご挨拶しましょ〜ね〜♪」
「だから無視すんなって、コノヤロー。はぁ。」
今、あたしの幼なじみでお隣さんのマディソンがノームの置物を持ってレジに向かってしまっている。ノームとは庭の守護者?的な白い長いヒゲにとんがり帽子の小人だ。なんかドワーフをちっさくして、もっとおじいさんっぽい感じだ。でもそれほど有名じゃない、マイナーなファンタジー生物である。
そんなしょぼい生物の置物を集めている幼なじみ。彼の部屋や家の庭の片隅にノームの置物がおかれている。正直言ってやめてほしい。小さいがあんなにいっぱい一カ所においてあると結構迫力がある。単体だったらそれほどでもないだろうが、数体固まっているとなんだろう、こう威圧感が…たかが置物ごときのくせに…いや、べつに怖くなんかないし?ちょっといつもの配置にいなくて探してみたら、廊下の角からこちらをのぞいて見ている様におかれてるのにビビって軽く飛び上がってなんかないし?
そうこうあたしが心の中で奴らの事を考えている間にマディ買い終わったらしい。そうしてあたし達はいつもの様に話しながら家に帰った。
そんなノームの置物が一つ増えてから数ヶ月後。マディの家に泥棒が入った。マディの家は結構大きいし、有名だ。なんせマディはノームをどうどうと庭とか家の中にかざっているのだから。泥棒が入ってから知ったけど、どうやら貴金属をふんだんに使ったり、有名な芸術家が作ったノームの置物たちをマディは他のノーム達と一緒に飾っていたらしい。そして盗みに入ったのはノームしか狙わないことで有名な泥棒らしい。
…何やってんだ、幼なじみ。お小遣いをすべて使いはたし、昼を抜き、更にあたしに金を借りるほど欲しかったのか(当然、借金は利息つき、署名付きだ)。
そしてどうしてノームしか狙わない、名も知らぬ泥棒よ。普通に金とかネックレスとか狙えよ。有名な泥棒なんだろ、結構凄腕のプロなんだろ。他のもの狙えよ。金庫なんていつも開けっ放しだぞ、あそこんち。気づけよ。
まあ、とにかくそんな変人泥棒はマディのコレクションが結構いい作品を何個か持ってたという事に夜中皆寝静まっている時に侵入したあとから気づき、選別するのが面倒だったのか、すべてのノームを盗んだらしい。
…あそこんち、軽く50体くらいノームがあったんだが。
とまあ、そんなわけで泥棒にあった翌朝、マディはあたしの家に乱入してきて泣きついてきた。ちょっとかわいそうだったから頭をなでてやったら調子に乗って抱きついて尻を触ろうとしてきたので殴り、気絶させ、学校まで引きずっていった。
しばらくしたらマディはちょっと落ち着いたが、ため息をよく着いたり、いつもだったらうざいくらいニコニコしているのにそれもなかった。
ちょっとこれはあたしがどうにかしないといけないかなっと思い始めた時に予想外なことが起きた。
指名手配中の泥棒がマディの家の庭で気絶しているのを発見されたのだ。そしてノーム達も何もなかったかのように普通にマディの家のいつもの配置にいた。
そんな奇妙な事が起きても帰ってきたノームたちを見るやいなや幼なじみはとても喜び、また泣いてた。
その時はマスコミがおもしろがってマディの家に群がっていて大変だったから気づかなかった。
ノームの数が盗まれた数よりも数体多かった事に。
そしてノームが本当は生きていて、泥棒を利用して仲間の数を増やしたり、お互い連絡できるようにしていたり、世界征服を本気でねらっているということを知るのはもう少し後の事。
もしかしたら続くかも?