初対面(2)
これを書いているとき、何故だか地元を思い出していました。
土手も道沿いも雑草が綺麗に刈られ、アキラが宿題を終わらせたころ『その日』がやってきた。
絵に描いたような青空に、白い雲が風に乗って緩やかに流れている。そんな窓の外の景色を見ていたアキラは、部屋の入り口から呼ぶメガネ君に視線を移した。
「上も下も問題なしだったけど、ここは?」
「ここも両隣も問題なしでした。
でも、こんな機械どこから用意したんです?最新式じゃないっすか?」
その機械をメガネ君に渡しながら聞くアキラに、軽く肩をすくめ機械の裏を見せるメガネ君。
「裏のシールは見た?って小さすぎるか。
これはサンプル品。テストを依頼されているんだよ」
言われてよくよく見れば、小さい「テスト品」のシールがあった。
「盗聴器を発見する機械のサンプルなんてどこから…」
言いながらもアキラの眉間に軽く皺が寄ったのに気付いたのか、安心させるように肩をポンポン叩いた。
「一応、まだ君は試用期間だからまだ詳しくは言えないけど、スポンサーと関係のある会社が作ってる。ちゃんとした会社だし、心配はいらないよ。
前の職場でも使わなかった?」
と社名を教えて貰うと、確かに前職場でも使用していたメーカーだった。
「いろんな繋がりがあるんすね」
「まぁね。さ、ミーティングを始めようか」
「…で、ミーティングってこの人数で?」
言われて移動した、会場の隣に設けた待機所にいたのは、メガネ君とアキラと彩だけだった。
「源さんとかも今日はいるって聞いたんすけど…?」
普段は出ている従業員の名前を出したアキラだったが、メガネ君はあっさりと頷いて見せた。
「彼らは誘導のみですからね。君に部屋の確認してもらっている間に済ませました。
こっちはこっちでミーティング」
「はぁ」
先に部屋にいた彩は、窓の外をなんとなく眺めているままで特に反応はない。
「さて。アキラ君は今日の流れは覚えてます?」
まるで教師が生徒に尋ねる様に聞くメガネ君に、シミ一つない天井を見つめて資料の中身を思い出す。
「ミーティング後に彩ちゃんが会場前の廊下で受け付け。俺は会場内を飲み物を渡したりしながら挨拶もして、メガネ君は廊下や会場を巡回。ケータリングが来たら参加者を別室に誘導。何かあれば即インカム」
視線で確認すると、メガネ君が頷いてくれているのでさらに続ける。
「参加者は全員名前で呼ぶ。こっちから会社や肩書に触れない。話しかけられたら最後まで対応」
指を折りながら言い終わり、そっと溜息をつくとメガネ君が再度頷いているのが見えた。
「大丈夫ですね。
堅苦しい集まりではないので、それほど慌てる状況はないと思います。もし気になる事があるなら今のうちにどうぞ」
「資料を見たところ業界もばらばらのようだし、年齢差も少しあるみたいですけど、強いて言うなら今日の集まりは何なんです?」
渡された資料には参加者の名前と簡単な経歴だけで、会の名前も何もないのを思い出したアキラに、あぁ。と思い出したように一つ頷いた。
「同窓会…ですかね。皆さん同じ学園の卒業生です」
「もしかして、『クインプレフ』ですか?」
「えぇ。リストに知り合いでもいましたか?」
「あ……前の職場関係のですが…報告した方が良かったですか?」
「いえ、ご存じでしょうけどあそこは少々特殊ですからね。問題ないですよ」
気にしなくて良いですよ。と続けたメガネ君に安心すると元常連客数名の顔が思い出された。
『クインプレフ学園』名前はなんとなく怪しいが、世界に誇るとある日本の財閥が作った幼小中高大の巨大学園。世界に羽ばたく若き才能をのびのびと育てるために作られた学園は商才にたけた者や天才奇才を多く輩出している。が、独特の校風のせいか変人も多い。そして卒業生のほとんどが学園出身ということを公にしていない。一般的には「お金持ちと変人のいる学園」と受け取られている。
そんな所の同窓会といわれてみれば、名だたる参加者にも納得できる。
「なるほど」
一人で何かを納得した様子のメガネ君は、片手に持った紙にちらっと視線をやった。
「それなら大丈夫ですかね。
彩さん、どうですか?」
ここまで見事なまでの無反応だった彩も、メガネ君の声に窓を向いたまま「もうすぐね」と一言だけ発した。それを聞くとメガネ君はアキラに背を向け、インカムで何やら指示を出し始めた。
途端に置いてけぼりをくらったようなアキラはすることもなく、メガネ君のスーツのストライプの数を数えだした。メガネ君はいつも通りのスーツだが、いつもより少し良いものを着ているようで細いストライプが角度によってうっすら浮き上がって見える。アキラは黒いズボンに白いシャツ、黒い腰巻のエプロンというどこかの飲食店の定員のような姿をしている。彩は赤を基調としたチェックの膝上のプリーツスカートに白いシャツ、スカートと同じ柄のネクタイをしめている。一見、制服にも見える姿に好奇心に負けてミーティング前に本人に聞いたところによると「このときはこれが決まりなの」と至極短い返事がきただけだった。
(だれの趣味だろう)
細かいストライプを数えながらどうでもよい事を考えていると、2往復目を数え終わるころにメガネ君が指示を出し終えたのかこっちを向いた。
「さて、そろそろ持ち場に着きましょうか」
その後、インカムの動作を確認し各々持ち場に移動した。
次はもっと短いスパンでアップしたいです。