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水色サディスティック!

作者: 八潮

「お、みーたんじゃん!おはよう!今日も眉間にしわが出来てるよ!かわいいね!」

「おはようございます。そうですか、浅香あさかくんはどうやら目を潰されたいようで。準備はいいですか?」

「ふは、それは困るな。大好きなみーたんが見れなくなっちゃうじゃん。」

「そうですか、目だけでは足りないと。ではちょうどここにある針と糸でその戯言たわごとをぬかす口を縫い付けてあげましょう。」

「うーん、それも嫌かなあ。みーたんと話せなくなっちゃうからね。」

「私としてはあなたのような人を視界に入れたくないので近づかないで欲しいのですが。」

「彼氏なのに?」

「おや空耳が。今日はどうも近くで虫が喚いているようで。すみません。」

「顔真っ赤だよ、みーたん。」

「……、すみません、今日も私の彼氏が格好いいもので。」

「あれ、なにそれデレ期?かわいい!」

「うちのポチには劣りますがね。」

「え、犬以下!?」

「違います、猫です。ところで浅香くんあと三分ほどでチャイムがなりますが。遅刻になりますよ?」

「心配してくれてるの?」

「まさか。あなたが遅刻をすると風紀委員の私の仕事が増えるんです。」

「あらら、それはいけないね。一緒に帰れなくなる。じゃ、またあとで!今日も頑張ろうね!」

「はい。それではまた。」


今日で何回目になるだろうか。そんないつものやりとりをかわして、みーたんの仕事を増やさないように、と急いで教室に入る。みーたんもそろそろ仕事をおわして自分のクラスに戻っているだろう。

昔は嫌いだった服装検査も、みーたんが風紀に入ってからは大好きになった。

なんたって朝からみーたんに会えるから。普段はクラスが違うから、一緒に帰る放課後にしか合えない。さみしい。



俺の彼女、みーたんこと三田遥みたはるかはいわゆる『S』だ。

誰に対してもあんなきっつい態度だけど、それはみーたんが人見知りだから。

それを初めて知ったときはほんとびっくりしたもんだ。

まあそれからいろいろあって付き合うことになったんだけど。それはまた別の話ってことで。

俺はそんなみーたんがそりゃもう大好きなのだ。いくら毒をはかれても可愛いって思っちゃうくらいにはね!


***


「うわー!やっと終わった!疲れた!みーたんに会いたい!」


最後の授業が終わって、クラスメイトたちは部活だー!とか今日はデートだー!とか騒いでいるけれど、

とりあえず俺はみーたんに会いたい。みーたんが足りない。死ぬ。

誰よりも早く教室を飛び出して、足早にみーたんのクラスに向かう。

みーたんは一組で俺は八組だから遠い遠い。懸命に脚を動かし、やっと着いたと思ったらみーたんはもう帰る準備万端だった。机に座って時計を確認してる。あらら、待たせちゃったなあ。


「みーたん、遅くなっちゃった、ごめんね。帰ろっか。」

「浅香くん。遅いです。あなたは時間も守れないんですか?」

「ごめんね、今日は手繋いで帰ってあげるから。ね?」

「そんなものに釣られるとでも?あなたの脳みそはミジンコ以下ですか?」

「うーん、そうかもね、」

だって、みーたんのことしか考えてないから。

なんて言葉は口に出さずに手を差し出す。

すぐに繋がった華奢な手を握りしめて、教室を出る。

時々刺さる視線なんて気にせずに、昇降口を出て、炎天下、真っ青な空の下に踏み出した。


「みーたん、はい、アイス!バニラ好きだったよね?」

「ありがとうございます。あなたはチョコですか?この暑さでよくそんなものが食べられますね。」

「んー?そうかなあ?俺は全然平気だけど。」

途中涼しい公園に寄り道して、目の前にあるコンビニで買ったアイスを食べながらちょっと休憩。

このベンチはちょっと狭いからいつもよりみーたんと距離が近くなる。幸せ。

「まあ私はあなたのことに興味はありませんけどね。」

「ふはは。俺はみーたんのことならなんでも知りたいけどな。」

「教えてあげましょうか?」

「え、いいの?じゃあ俺のことどれだけ好き?」

「うちのポチと同じぐらいに。」

「……ふは、」

「……浅香くん?どうしたんですか?いつもならバカみたいに反応するのに。」

「んーん、ちょっと考え事。」

「そうですか、なら残念です。すこしは大人しくなったのかと思いました。そして考え事なら家でやってくれません?知恵熱だされても困るので。で、どんな考え事で?」

「あれ、興味ないんじゃないの?」

「興味はありませんけど。考え事なんてできなそうなあなたがどんなことを考えられたのか、驚いたので。やっぱり言わなくって結構です。」


もちろん、教える気はない。俺のこんな悪い癖、とか。ああ、でもみーたん。ほんとは気になってるんでしょ?こっち盗み見てるの、気づいてないと思ってるのかな。

ああ、やばいなあ。みーたん可愛い。

ちょっと、抑えられないかも。


―――厳重に鎖をかけて、何十にも鍵をかけて。

奥の奥に隠した悪い癖。ちらりと、顔を出して。止められない、そう悟る。


「ね。みーたん。」

「はい?」


「嘘でしょ?」


「……は?」

「ほんとは気になってしょうがないんじゃない?俺のこと。」

「なんの冗談で?」

「それも嘘。」

「私が嘘なんてつくとでも?」

「それも嘘。みーたんは嘘つきだからね?」

「なにふざけたことをいってるんですか。」

「ふざけてなんかないよ?怒ったみーたんも可愛いよね。」

「……からかってるんですか?いい加減にしてください。」

「残念、からかってもない。みーたん、俺のこと大好きでしょ?みーたんちのポチよりも。服装検査の朝は毎回髪型変えてくるよね?」

「っつ……!」

「ね?みーたん。俺はみーたんが大好きだ。」

「そうですか、私は嫌いです。」

「嘘。ねえ、みーたん。気持ちはちゃんと言わないと伝わらないよ?」

「十分わかってるんじゃないですか?さっきから。」

「ふは。うん。みーたんのこと大好きだからね。でもたまには聞きたいじゃん?」

「つまりあなたに告白まがいなことをしろと?」

「そうなるかな。」

「拒否権を発動します。」

「みーたん、教えて?みーたんは俺のこと好き?」

「………。」

「ふは。」


みーたん黙り込んじゃった。顔赤い。耳まで真っ赤。で、ちょっと涙目。可愛い。

でも今日は、逃がさない。絶対言わせる。さっき決めた。

「ね。ちゃんとこっち見て?」

「浅香くんは意地悪ですね。私がそういうの苦手だって知ってるでしょう?」

「うん。知ってる。」

「……好きですよ。」

もう、これでいいでしょう?

なんてみーたんは言うけど。でも、俺も『S』だから。

俯いたみーたんの顎を掴み、顔をこっちに向けて、目を合わせる。


「違うでしょ?」

「っえ?」

「大好き、でしょ?はるか。」


真夏、雲一つない空の下。真っ赤な顔をした彼女の唇に噛み付いた。




サディスティックなのは彼女じゃなくて彼氏くんでした。

正直やりすぎた。気がする。


でも毒舌敬語キャラの女の子ずっと書いてみたかったので満足です。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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