お前がいる。ただそれだけでいい2
急に話しかけたその人は、小綺麗な服を着ていた。深く帽子を被り、顔は全然見えない。銃声がしたのに、誰も起きて来ない。何故だ。
「………誰だ?あんた」
我ながら冷静だ。目の前で親友が撃たれたのに、焦りがない。まだ、きっと生きてる、そう思っているのだろう。
「怪しいもの……ですね。君の眼を狙ってる、貴族の一部ですよ」
この人も冷静だ。声からして男。歳はまだ若そうだ。まあ貴族と言われれば貴族だが、少し汚い。没落貴族とも言えようか。
「……率直に言います。あなたの眼をください。あ、でも眼だけでは効果はないと言われますね。君ごとください。」
「………」
そんなこと急に言われても。女の子に言われれば少しは嬉しかったのに。男からじゃねぇ~。
……でも、俺が行けば、みんなに被害はない?いや、死ねば……
「ヴァファイア、死ぬ気じゃ…ないだろ…うね?」
倒れている方から声がした。
「ア、アレン……?」
アレンは苦しそうに顔をあげた。
「アレン、お前生きて……」
「ヴァファ…イア、死ぬ…なよ」
声は途切れ途切れで、とても苦しそうだ。
「でも、俺が死ねば……」
「ふざけ…んな。ハァハァお前死のうと、するなら…俺は、お前を、殺す」
え?アレンは凄い形相で俺を睨んだ。今まで、生まれてからずっとアレンと一緒にいたが、こんな顔をしたのは初めてだ。
「お前の眼のことは…ずっと前から…知っていた。でも、俺は、お前の赤い眼を特別と思わなかった。誰も、お前を特別…にはしなかった。お前に"様"などつけなかった!それは、ただお前はみんなと同じ人で…みんなにとっても、俺にとっても親友で仲間で、家族なんだ!しな…ないでくれ。お前がいるだけで、俺は充分だ……」
父さんや、家族だけじゃない。アレンやみんなも俺のことを考えていた。ただそれだけでいいんだ。
みんながいるんだ。おれは、まだ死ねない。