幼馴染というやつです。
突然だが、俺は男が好きだ。
そこ、そこの人、ひかない。若しくは騒がない。
・・・まあ、その相手が、所謂幼馴染、って奴で。
俺はそんな幼馴染に・・・恋して、10年目だ。
ちなみに今俺は17歳。花の高校生だ。
なんで男を好きになったのかもわからない。俺は普通に可愛い女の子をみるとそれなりに反応するし(どこがとは言わないが)、いいなあ、とも思う。
だけど、好きにはならない。
それにしても、こんな長い片思いを幼馴染の、しかも普通の(ノンケって意味で)男を好きになるなんて。
・・・いや、俺にホモの自覚はない。なぜなら初恋がコイツだからだ。
でも、この気持ちを隠しても、アイツと友達でいたいと思っている。
・・・だがしかし、今直面しているこの問題は。
「・・・で、告白されて、どうしたいの、オマエ」
「わかんない。でも、いい子だとは思うよ」
そう。俺は只今絶賛相談受付中なのだ。
しかも、その、初恋の幼馴染に。
「お前ンことはお前にしかわかんねぇよ。自分の胸にでも聞いてみろって」
「拓真、小さいくせに男前だよね」
「うるせぇ。小さいのは関係ねーだろ」
遅ればせながら、俺の名前は泉拓真。
で、幼馴染のコイツは立花悠斗。
俺らの身長差は約13センチ。俺が165で、悠斗が178。
正直、見上げんの辛い。いや、俺が小さいのが悪いんだけど。
でも、俺には小さい=コンプレックスとは感じない。でも、いちいち言われると煩わしく感じるから、そこは嫌だ。
・・・と、まあ話がずれたが。
ずれたついでに、悠斗。コイツ、背がデカい上にモテる。異常なまでに。
でも本人は至って普通の男子高校生だ。天然なのが玉にキズだが。
「・・・ん?でもお前さ、結構女子に告白とかされてんだろ?」
じゃあ、なんで今更相談してきたんだよ。
「あ、本当だ。なんでだろ」
おい、なんでだろじゃねえだろ。
「お前さ、もしかしたら、だぞ?」
正直、この言葉を言うのは非常に辛い。もう本当にだ。
「その子のこと、満更でもねーんじゃねーの?」
「・・・そうなのかな?」
「さっきも言ったが、お前の事はお前しかわかんねーよ」
そう言って俺は眼鏡を外した。レンズが汚れてるのがわかったからだ。
眼鏡を拭きつつ視線はあくまでも悠斗の方へ。
「わかんない、でも、他の子とはちょっと違うな、って思ったんだよな」
「違う?どんな風に?」
「なんて言うのかな、告白された瞬間さ、ドキッてしたんだよ。・・・いや、他の子にされた時もドキッとはしたんだけど、その時とは違うんだよなぁ」
呑気な声を出しつつ、悠斗は夕日に染まる外を見ていた。
「あー、もうこんな時間かぁ」
「そうだな」
そう言いつつも、俺の視線は悠斗だ。
こいつに、好きな女?
まさか、俺に相談してくるとは思わなかった。いつにも増して神妙な顔しやがって。
絶対好きだな。ありゃあ。一目惚れか?流石幼馴染。初恋の仕方も一緒かよ。
「・・・つーか、あれか?その子が好きなら、悠斗お前、初恋じゃね?」
「あ、そうだね」
夕日に視線を向けつつも、悠斗は思い返したように言った。本当に呑気で他人事のように自分のことを話す男だ。
「俺、本当に奏恵ちゃんのこと好きなのかな」
俺は悠斗の横顔を見た。その視線は真っ直ぐで、思わずドキリとした。
「そんなの、知らねえよ」
自分に訊け。
そう言うと、悠斗は困ったように笑った。
その数日後だった。
「拓真、話がある」
またもやワケありな表情で俺に話を持ち出してきた幼馴染。
嫌な予感がした。汗が背中を伝った。
「―へえ、良かったじゃん、つきあえて」
「うん、良かった」
幸せそうに微笑む悠斗。
俺はその例の「奏恵ちゃん」を見たことはない。正直よくわからないけど、清楚で可愛い女の子なんだろうなとは思う。コイツ、意外と面食いだから。
「あー、あれか。一目惚れ?」
「え?あー・・・ううん、違うよ。1年の時クラス一緒だったよ」
「は?そうだったんか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
聞いた覚えはひとつもない。俺がコイツの話を聞き逃すわけないし、忘れるわけもない。
「あー、まああれだ。おめでとう」
大変苦しい上に物凄く祝福してる体には聞こえないおめでとうだと思った。
幼馴染もそれを感じ取ったのか、苦笑気味に
「ありがとう」
と言った。
「拓真も彼女つくればいいのにね」
「うっせーな、今はそんなもんいらねーの」
そんなことを言いつつも、自分の長年の片思いの結末に笑っていた。
案外、あっけなかったな。
悠斗は俺の笑いがどんな種類のものかわからず、不思議そうな顔をしていたが。
それから月日は経ち、一学期の終業式が終わった。
この時点で、俺はある決意をしていた。
「悠斗、俺さ、転校するんだ」
「・・・え?」
悠斗は突然の告白に驚きを隠せないようだった。
「嘘、いつ?」
「明日。もう荷造りは済ませた」
「なんで言ってくれなかったの?」
悠斗の言うことは最もだ。本来ならもっと早く言うべきだったのだ。
でも、
「お前が彼女さんといちゃいちゃしてっからだよ」
コイツ、彼女が出来てからは彼女と下校するようになった。用事も彼女を優先するようになった。
その所為で、俺が話すタイミングを失ってたのだ。
「あ・・・ごめん」
実際俺は何度も話そうとした。でも、
「ごめん、奏恵待たせてるから」
とか(いつから彼女を呼び捨てにしてんだお前)、
「今日、遊べない、本当ごめん!」
とか(やっぱ彼女関連。ちなみに彼女は申し訳なさそうに俺に謝ってた)。
「・・・てなわけで、明日電車で行くから」
「どこに?」
「北海道」
「え!?遠いじゃん」
「だから早く言いたかったんだけどな、バーカ」
「ごめん!」
パンッと手を合わせてデカい身体を折り合わせる悠斗。
「じゃあひとつ質問する。答えたら許してやる」
「え、なに?」
「彼女さんとチューしたのか?」
瞬間、悠斗の顔が真っ赤に染まるのがわかった。
「な、な、な・・・っ」
「ほら、これ答えりゃ許してやっから、言えや」
「・・・・・・し、た」
小さく消え入りそうな声ではあったが、ちゃんと聞き取れた。
「あー、そ。そっか」
おめっとさん。相も変わらず祝う気ゼロな言葉。
「一回だけ?」
「・・・二回」
ほう。俺の知らない所で大人になりやがって。
「そっかー、悠斗君がそんな大人になっちゃったかー」
「お、大人って・・・」
顔を真っ赤にしながら悠斗は言う。
「まあ、そんな事は置いといて。明日見送りに来いよ」
俺は笑いながら言った。
そして当日。駅のホームで、俺の家族と、悠斗の家族と、あと、奏恵ちゃんがそこにいた。
「拓真君、北海道でも頑張るんだよ」
「いつでも帰っておいでね」
「はい。ありがとうございます」
「悠斗君、今まで拓真の事、ありがとね」
「いいえ、こちらこそ仲良くさせてもらってありがとうございました」
悠斗は俺の親と話してる。奏恵ちゃんは俺に近寄ってきて、
「・・・ごめんね、泉君。悠斗君とっちゃったみたいになっちゃった」
本当にそうですね。でも、俺はそんなことは口に出さない。
「別に、悠斗が好きでやってたことなんだからさ」
「泉君、実はね、悠斗君、私と話すとき、いっつも泉君の話するの」
まるで仲の良い友達に話す素振りで奏恵ちゃんは言う。
「マジで?」
「うん。すっごく嬉しそうに話してたよ」
ちょっと嫉妬しちゃった、と奏恵ちゃんは笑った。やっぱり可愛い子だ。
「・・・奏恵ちゃん」
「なあに?」
「ごめん」
「・・・え?」
不思議そうに俺を見る奏恵ちゃんに曖昧に笑った。
「・・・拓真」
「おー、悠斗」
俺を見る悠斗の顔は若干歪んで、今にも泣きそうだった。
「おい、泣くなよ。彼女の前だぞ」
「わかってるよ」
顔を赤くして、顔はホント正直なやつ。
「・・・元気でね」
「お前もな」
そう言った時、ベルが鳴った。
「拓真、行くわよ」
母さんと父さんが先に電車に乗った。
「・・・・・・悠斗」
「なに?」
「ひとつ教えてやるよ」
え?と言う優斗の襟首を掴む。そしてこちらへ引き寄せた。
そして、唇へ。
「・・・へ?」
「俺は、お前が好きだよ」
べえ、と舌を出しながら言った。
「だから、これは10年分のお駄賃ってことで」
ひらひらと手を振りながら俺は言った。
「奏恵ちゃんとお幸せに!!」
ここで俺はようやく、心からの祝福を送ることができた。
そして電車に乗りこみ、悠斗の顔を見た。
顔を真っ赤にして、指先で唇に触れている。
バカヤロ・・・
俺も顔中が赤い事に気づかないフリをしながら、唖然としている悠斗と、同じく唖然としてる奏恵ちゃんから背を向けた。
じゃあな、悠斗。またな。
「・・・悠斗君、今のって・・・」
キス、だよね。
奏恵の声が隣で聞こえた。少し震えているような気もした。
「もしかして、泉君って、」
悠斗君のこと、好きだったの?
「わかん、ない」
でも、物凄く顔が熱いのはわかる。酷い位だ。
火傷でもしたっけかな。
「・・・俺、もしかしたらホモかも知んない」
「えっ・・・」
信じられない、と言う風に目を見開く奏恵を見て笑う。
「嘘だよ。そんな顔しないでよ」
・・・でも、
もし、拓真が俺の事が好きで、それで俺の恋愛相談に乗ってくれたとしたら。
俺、わりと酷い事したんだなぁ。
可能性の話として。
もし、拓真が俺の事が好きだと俺がわかってて。
で、拓真がそれを肯定したとしたら。
・・・俺は、どうしたんだろう。
もしかしたら、俺もホモになってたかも、なんて。
奏恵に言ったら怒られるなぁ。
・・・ばいばい、拓真。またね。
・・・はい、どうも!明夢です!今回はBLに挑戦してみました(笑)
息抜きの作品なので気楽に読んでくれれば良いと思います^^
私の好みの要素満載です。趣味が出ますね((´∀`*))
個人的に泉君は書いてて楽しかったです。またこの子をメインにした話を書きたいですね、ノーマルで('-'*)