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EPISODE4.新たな舞台へ

本部襲撃から一週間が経ち、本部はすっかり元通りになった。

そして希々も意識を取り戻していた。

希々が意識を取り戻した時は、真っ先に藍翔が土下座して謝ったとかそうじゃないとか。

「希々!本当に申し訳ない!冷静に考えたら戦闘経験ない希々を連れていったの間違ってた!本当にごめん!」

「あ、え、いや、だ、大丈夫ですよ・・・?」

そう希々が優しく言っても藍翔が泣き出すからありがた迷惑。

そこに遥斗がやってきて藍翔を一発殴った。

「このバカが。男なら泣くなって」

「でも・・・」

藍翔がなにか言い出そうとしたが、遥斗の発言に遮られる。

「藍翔のことはさておき、希々、体調はどう?」

「え、ええ。寝てたら元気になりましたよ」

希々が微笑むと、遥斗が「そっか」と呟いた。

「さて、希々。今日から三日間で戦闘経験を積みまくるよ。本来なら二週間なんだけど、君の場合は事情が事情だからね・・・。もちろん藍翔にも訓練を手伝っていただく」

「えー?俺もなのか?」

「ひとつの罪滅ぼしだと思ってやればいいだけじゃん。簡単だろ?」

遥斗が肩を竦める。

「あーもう。わかったよ。やってやるよ!希々。後で訓練所へ来いよな」

藍翔が髪を掻きながらその場を離れていった。

「さ、行こうか」

「え、ええ」

遥斗に手を引っ張られ訓練所へ向かった。


訓練所に到着してから空いているフィールドを探す。

シンプルなフィールドを選んだ遥斗が楽な姿勢で刀を鞘から抜く。

「さて、早速始めようかと言っても色んな人が賞賛してたよ。新入りの動きじゃないって」

藍翔が語り出す。

そう、あれは三日前。空癒が珍しく司令室を訪れた時の話。

普段の空癒なら司令室には訪れないのだが、とある人物に呼び出された。

「空癒さん。この戦闘映像、どう思う?」

解析班のメンバーが空癒の周りに群がる。

「なんで私なの?別に遥斗とかいるじゃん」

空癒が尋ねると、待ってましたと言わんばかりにハイヒールの音を鳴らしてやって来た人物がいた。

金髪のポニーテールに銀色の瞳を持つ、帰国子女のような雰囲気の女性だった。

「空癒。これは、私自身からのお願いなんだ。」

「いつの間に帰国してたん?瀬奈?」

空癒がやれやれと言わんばかりに肩を竦める。

彼女の名前は瀬奈、阿久津瀬奈アクツセナ。希々がコンビニで出会った阿久津璃音の姉にあたるが、姉という表現は正しくない。

確かに二人の母は一緒だが、父が違ういわゆる異父姉弟というものである。

瀬奈を産んだ二年後に離婚。その後出会った男と母が再婚、璃音を産んだ。という流れである。ちなみに瀬奈は大学院である。

「いやあ、一昨日だよ。空癒。まあ留学終えたから今日から復帰するけど?」

「左様っすか。で、なんの映像見ればいいのかね?」

瀬奈がタブレット端末を差し出す。

「これどうぞ」

「ふむ。希々の戦闘映像?なんでまた」

瀬奈が面白おかしく笑い出す。

「あっはははは・・・・いやはや気づかないの?」 

「は?」

空癒の問いかけに瀬奈が映像を拡大して見せる。

「これは・・・相手の攻撃や武器の性質すら予測したの?」

「ご名答!いや恐ろしい子だよこの新入りは」

という話があったらしい。

  

「それは、どうもありがとうございます?」

希々が目をぱちくりとさせた。

「そうだな。希々のあれは凄かった。少ししか教えてないのに簡単に自分のものにする。普通ならできないからな」

藍翔の褒め言葉に希々が謙遜する。

「み、皆さんにはまだ届きませんから。で、でも、上手な人を真似ることは得意ですから・・・それに、藍翔さんが戦う前に言ってくれたあの言葉のおかげでできたようなものですし・・・」

「最初から完璧なんていない。人から学びを得ていく。いいことだと思うよ」

遥斗が微笑む。

「この剣を握るのが一週間ぶりだから、変な感じする」

鞘から抜いた明るい緑色の片手剣をしっかりと握る。

「とても似合ってるよ。まあ、藍翔は銃だから後で遠距離練習の時にやらせるとして、まずは近接からだね。僕の朧影斬は藍翔からやめろって言われたから封じるけど、朧影斬なしでも僕は強いよ?」

「望むところです!」

希々が静かに息を吸ってゾーンに入る。

希々の聴覚からあらゆる雑音が消えた。

今なら、どんな動きでも対応できる。

「じゃ、行くよ」

遥斗が静かに構えた体勢からどう動いてくるか・・・希々が考えた瞬間、遥斗の動きが消えた。

しかし、希々は焦らず動じず、確信とともに剣を動かす。

「大体の流れなら、ココ!」

カキーンという音とともに希々の剣が遥斗の刀を弾いていた。

「なっ!?」

急所を狙って打ち込んだ一撃が希々の剣に弾かれたことと、希々の理解力に遥斗は驚いた。

「・・・なかなかやるね。というか、急加速からの一撃を初見で弾く新入りなんて聞いたことない」

「遥斗さんの体勢を見て攻撃のパターンを何パターンか考えて実践しただけですよ」

「おい、希々。今言ったことは本当か?」

藍翔は思わず希々に聞く。

「え、ええ。遥斗さんの体勢を見て自分なりに攻撃パターンを考えてその状況に応じて変えただけですよ」

希々が片手剣を構え直す。

「へぇ。蓮唯とはまた違うね」

「また兄さんの名前・・・」

希々がボソッと呟く。

「蓮唯の武器は希々と同じく片手剣だった。でも、蓮唯は希々とは大きく違った」

「何が違うのですか?」

希々が首を傾げる。

「一回だけの動きからの推測にはなるが、希々は相手の対策をその場で見つけて実践という感じがするんだ。というか多くの人が何かしらの対策を取る。対策を練るまでの過程が全員違うだけ。そうだろ?」

「まあ・・・概ね正しいです。では、兄さんの場合は?」

「蓮唯は、僕からしても化け物さ。なんせ蓮唯は、相手の対策をしないからね」

遥斗が蓮唯に苦戦させられた記憶を思い出しながら話す。

「は、はい!?対策をしないって、それじゃ、相手さんからしたら確実にとは言えないかもだけど、兄さんの対策は練れるから、兄さんは確実に不利になるのでは・・・?」

希々の危惧していることはあながち間違いではない。

対策さえ練れば誰でも兄さんには勝てるはずではと。

しかし、遥斗が首を横に振った。

「僕もそう思ったから何回も映像を見て研究した。それでも引き分けまでが限界だったな。ま、藍翔は微有利には持っていって、一回だけ勝ったんだっけ?」

「あれは、勝ちと言っていいのか少し怪しいけどな」

藍翔が銃弾を装填しながら蓮唯の強さの秘訣を紐解く。

「蓮唯は、攻撃パターンが読めないんだ・・・」

「攻撃パターンが読めない・・・?」

希々はなぜ目の前の二人ですら苦戦するのか。少し悩んだ末に気づいた。

「兄さんには攻撃パターンという概念が・・・ない・・・?」

「そう。蓮唯は攻撃パターンという概念がない。つまり、僕たちは蓮唯と戦っていくうちに攻撃の体勢などから攻撃パターンがあるかのように錯覚させられていたんだよ。冷静に考えたら対応できる攻撃なのに蓮唯の動きや攻撃パターンに気を取られていたから、負けたのかもしれない。そして蓮唯の能力は幻覚系統・・・。だから余計に不利だった気もする。あー行方不明になる前に勝ちたかったな」

遥斗が悔しそうに天井を見る。

「そう、ですか。でも、尚更気になってきました。兄さんの戦い方が」

「そうかい。まあ、気になったらこの映像を見れば?ЯEBIRTH CODE内で蓮唯が行った試合の映像が全試合ある。ちなみに勝てたやつは藍翔ともう一人いたけど・・・」

遥斗が映像データをUSBメモリに入れて、希々に渡す。

「いたけど?」

「あいつは気まぐれだからな・・・こんな場所に来るわけ」

「うちのこと、呼んだ?」

声のする方を見ると、訓練所の出入口に希々より身長が低い女性がいた。

「おー。来てたんだ」

遥斗がUSBメモリを抜きながら聞く。

「何よその言い方。って言うか、あんたが新入り?んーどっかで見覚えが・・・あ!思い出した。あんた、白崎高校の二年生やろ?しかもバドミントン強強の」

「なんで知ってるんですか。ってか怖すぎ」

希々がドン引き。

「自己紹介遅れたね。うちは、楼梨。柚希楼梨ユズキルナ白崎高校一年二組、あんたの後輩にあたるよ?」

「うーん。楼梨・・・楼梨・・・あー!新入生代表挨拶で挨拶してた・・・よね?」

希々が辛うじて記憶から掘り起こす。

「うん。先輩に覚えて貰えて嬉しい限りです・・・ところで、複雑な関係になってしまいましたね」

「そうだね。ЯEBIRTH CODEでは私は後輩。でも学校だと先輩になる。たしかに複雑だね・・・」

希々と楼梨の二人で盛り上がっているところを見ながら遥斗が口を挟む。

「盛り上がっているところ悪いけど、訓練再開するよ」

「ばっちこい、です」

希々の気合いの入りように遥斗が笑う。

「いいね。じゃあ続きと行こうか」

 

遥斗と希々の戦いを見ながら藍翔がふと思ったことを楼梨に聞く。

「そういやさ、楼梨って本部来るの気まぐれじゃん。珍しいね」

「せやな。まあ、白崎高校の建物壊れたんで何があっても部活ができないのが暇すぎて来ました」

楼梨が眠そうに欠伸をする。

「そういえばそうだったな。一応俺と遥斗で食い止めたけど、それでも被害は酷かったのか」

「えっと。校舎は半壊、体育館、グラウンドが酷かった。今日本部に来たのは、高校の惨事を共有しにきたの」

楼梨がスマホで撮ってきた高校の画像を藍翔に見せる。

「うわぁ・・・こりゃあひどいな。」

「だから言ったじゃないですか」

藍翔の発言に呆れる楼梨だった。

話が盛り上がっている二人はさておき。

希々は必死に訓練していた。

希々の剣が遥斗の刀とぶつかり、カキーンという金属音が鳴り響く。

「剣筋は悪くないよ」

「ありがとうございます。だいぶ剣の使い方わかってきました」

希々が軽く剣を振ると、微風が起きた。

「今日はひとつだけ。希々の剣は、力が封じられている。そして真の力を使うには、希々はやったことあるだろうけど、イメージして、剣の力を解放する」

「イメージ・・・」

希々がこの剣についてイメージする。

風を使って、自分に纏うイメージで・・・。

風龍戦乙女ストームドラゴン・ヴァルキリー!」

希々の剣から風が発生し、希々の身体にフィットするように形を変える。

「できた・・・」

「いいね。じゃあ、動いてみて」

「はい」

希々が試しに一歩踏み出すと、風の力と相まって加速した。

「・・・強そうな力だね。使いはじめの頃は力の消耗が激しいから今日はこれで終わりでいいよ」

「ありがとうございます。また明日、ですね。ところで、この剣はどうすれば?」

希々が剣を鞘に納めて遥斗に聞く。

「基本、メンバーが使う武器は各自で携帯してるんだよ・・・なんかあった時に戦えるようにね。気をつけて帰ってね」

「わかりました・・・。失礼します」

希々が訓練所を走り去っていった。


希々の後ろ姿を見ていた楼梨が思い出したかのように聞いてみる。

「そういえば、うち来る前に希々含めて三人で蓮唯の話してたやろ?なにがあった?」

「実はね・・・希々が蓮唯の妹なんだよね」

「・・・は?いやいや・・・またまたご冗談を」

目を丸くして口を開けて呆然とする楼梨。

「希々が?まじで?」

「マジマジ。蓮唯に似てる要素ないとか言ったら希々が怒ると思うよ?」

「わかってます・・・ただ・・・現実として受け入れ難いだけです」

まだ驚きが止まない楼梨の様子を見て藍翔が笑みを零す。

「だろ?だから、俺は希々は期待してるんだよ」

「僕も期待してる」

遥斗が鞘に刀を納め息を吐く。

「希々は強くなるよ。僕が保証するさ。頑張って練習させるし、力の使い方を教えるさ」

「遥斗。あの力を使うことだけはやめろよな?」

「わかってるよ。そこだけは気をつけるさ。ところで藍翔?久々に勝負しない?」

遥斗がニヤリと笑う。

「いいけど・・・大丈夫か?」

「僕は大丈夫だし、楼梨に審判やらせればいい」

二人の視線が楼梨に向く。

「はぁ・・・わかりました。審判やりますよ。半年くらいぶりですけどね」

「なら、決まりだな」

遥斗がウキウキしながら刀を再び鞘から抜く。

銃を構えながら藍翔がふと聞く。

「ところで前回戦ったのいつだっけ?」

「前回は二か月前。僕の圧勝だった。前々回が・・・」

遥斗が思い出したように戦績を述べる。

五十戦やって二十五勝、二十五敗と五分である。

「今日こそ勝つ」

「いいね。じゃあ、始めようか」

「行きますよ。開始!」

楼梨が開始の合図を出す。

「銃弾の雨、受けてみな!」

藍翔が自身が持っている銃だけでなく、周囲に発生させた銃で銃弾をぶっぱなす。

「遅い」

対して遥斗は、銃弾を刀で斬りつつ接近する。

「相変わらず銃弾を斬らないで欲しいぜ」

「あの量の銃弾なら斬る以外に抜ける道筋ないんだよね!」 

楼梨は審判でありながら二人の戦いを見ることしか出来ないのだった。


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