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EPISODE2.遥斗の独白と本部襲撃

誓約書を記入した後、会議室と同じく二階にある武器庫に案内された。

「これだと思った武器を手に取ってもらう形。試したいなら用具室の隣に試運転用の訓練人形があるからそこで試してね。ここの武器を壊さなければ僕はなんも言わないよ」

「え、えっと・・・こんなに武器あったらどれにするかなんて、時間かかりますよ・・・?」

「時間かかってもいい。ここで選んだ武器は、唯一無二の武器だから」

遥斗が武器庫のドア近くに移動する。

「試すことが出来るのなら、この武器がいいな・・・」

希々が手に取ったのは明るい緑色の片手剣だった。

鞘から取り出すと、長い刀身が現れた。

「バドミントンラケットより重い・・・当然ですね」

不器用ながら試しに訓練用人形に向けて斬撃を放つ。

「こんな感じ、かな」

頭の中にあったイメージどおりに片手剣を振り下ろすと訓練用人形が真っ二つになった。

感触もわかり、一番しっくりくるのがこの片手剣だと感じた希々は鞘に剣を戻した。

まだ使い慣れていないが・・・。

そういえば、あっさり武器決まった・・・どうしよう。と悩まずにいられない希々だった。

「遥斗さん、この武器がいいです」

遥斗は無言で頷き一枚の紙を差し出した。

「武器携帯する時に必要な書類だから、記入しといて。記入したら部署に提出して、訓練所行くよ」

その場で武器の情報を書類に記入する希々。

「くだらないかもしれないけど、少し話をしていいかい?僕の過去というかなんて言うんだろ、人生みたいなものかな。僕は、孤児院育ちだった。両親がいるかどうかなんて、わからない。ずっと孤独で、ずっとひとりぼっち。悲しいなんてことは微塵も感じなかった。でもね」

「?」

希々が首を傾げる。

「僕が十四歳の時、ある人物と出会った。まあ、その方は今はもう病気で他界していないんだけどね。その方に鍛えられた。苦しいとか嫌いとかそんな気持ちは僕にはなかった。僕は、戦うことにおもしろいと感じるようになった。それが今から五年前の話」

「じゃあ、今の年齢は・・・」

「そうだね。十九歳だから一応成人はしてるけどお酒は飲めない。まあ当然だよね」

苦笑いしながら歩く遥斗。

二〇四五年現在、成人年齢は十八歳のまま。飲酒も変わらず二十歳からとなっている。

こればかりは、成人年齢が引き下がってからずっと変わらない。

「じゃあ教えてください。なんで、ЯEBIRTH CODEに入ったんですか」

希々がどうしても気になっていた問いを口にする。

「なんで、か。話すと長いけど、いいかな」

「全然大丈夫です」

遥斗が静かに生気を感じないような声で話し出した。

今歩いている通路が少し暗いのも相まって怖さは際立つ。

「僕はね、将来が見えなかった。明るい未来がそこにはない気がして。だから逃げるように入った。でいいかな」

「そんなことないです!遥斗さんは・・・」と希々が言いかけた時、遥斗がふらついて、前のめりに倒れようとしていた。

「遥斗さん・・・!」

バドミントンで鍛えられた瞬発力で支えることに何とか成功する。

「大丈夫ですか!?」

一瞬で脈はあると察知した希々は、少し悩んだ末に、空癒の元を尋ねることを決意。

「その前に連絡をしなければ・・・」

希々が空癒に電話をかける。

「もしもし。この声は、希々かな。どうかした?」

「実は、遥斗さんが急に倒れ込んで・・・」

その言葉を聞いただけで空癒が息を吸い込んだ。

「今、どこにいる?」

「二階です。会議室近くの通路です」

「急いで向かう。脈はある?」

希々が一言だけ「あります」と言った。

「わかった。向かうから」

希々が電話してわずか三分。

空癒がストレッチャーを持ってやってきた。

「希々。状況を説明して」

「えっと、遥斗さんと会議室で話をして、武器庫で武器選びをしたあと、訓練所行く途中でした」

「わかったわ。とりあえず医務室運ぶよ」

空癒と一緒に遥斗を医務室へ運ぶ。

すぐさま、検査にかける。

検査結果がすぐに出てきて、空癒が首を傾げる。

「検査結果に異常はないし・・・普通の過労だと信じたいけど・・・。ん?この音って・・・希々。ここから離れて。今すぐ!」

「え?」

希々が急いで医務室から離れた瞬間、轟音が建物を揺らした。

目の前の医務室は無事のように見えるが、周囲に粉々の瓦礫が落ちている。

「なに、これ。爆発?もしかして、爆風で扉が開かない状況になる可能性があったから、その可能性から私を助けるために・・・?」

希々があたふたしていると、藍翔がいつの間にか現れていた。

「藍翔さん!?」

「希々、無事か?」

希々がこくこくと頷く。

「遥斗の話は軽くだけど聞いた。本当はそっちを優先したいが、どうやら侵入者がやってきたみたいだ。お前はどうする?」

「まだ怖いです。でも、ここで動かなきゃ・・・」

希々がそっと鞘に触れる。

「その剣・・・なるほどな。お前、選ばれたんだな」

「え、ええ。まあ、はい。選ばれたのか怪しいですけど、この武器がいちばんしっくりきました」

希々が嬉しそうに剣を抜く。

「じゃあ本題だ。いちばん重要なのはイメージ力。剣に秘められてる思いや事象、剣の名前の由来をイメージして、それを技に込める。それだけだ」

「え?」

藍翔からのアドバイスがあっさりとしていて希々は驚いた。

「俺の武器は生憎これだからな・・・剣の使い方なんか俺より遥斗の方が説明とか向いてる。でも、初期武器として誰でも剣は一応握るんだよ。その時教官から言われたのがその言葉だった。まあ、今となっては無縁だけどさ」

藍翔の武器は銃だった。

「この銃は特殊なんだけどな。まあその話はあとでする。先に現場向かうぞ。おそらく一階だ」

藍翔が近くの踊り場から飛び降りたのを真似して、希々も飛び降りる。


「ちなみに、本部に侵入者がやってくるのは初めてだな。気をつけろよ」

「は、はい!」

二人が一階にたどり着いた時、侵入者が一階を攻撃していた。

既に被害を最小限にするための隔離結界が何者かによって貼られていた為、そこまで一階への被害はないように見える。

「訓練無しでの対戦だが、大丈夫だと信じてるぞ」

藍翔が銃弾を装填する。

「が、頑張ります」

「敵は二体。しかもどちらも人っぽいな。ここで食い止めるぞ」

希々が落ち着きながら目の前の敵に目掛けて剣を振ると、風の刃が結界内で吹き荒れた。

敵が着用している服だけでなく、身体にも細く、深い傷が生まれている。

「あなた、見ない顔だね」という声からして女性と推測できる敵の問いに対して希々は少し声を荒らげた。

「そりゃあそうよ。なぜなら私は・・・いえ、今はどうでもいいかな。さっさと終わらせたいの」

「恐ろしいね。怖い怖い。なんてね。お返しよ」

1枚のカードを取り出すと、先程の攻撃が跳ね返ってきた。

「っ!」

風の刃が希々の頬を切り、そこから血がポタポタと流れる。

慣れない戦闘なのに関わらず、冷静に今起こった事象を分析する。

「なる、ほど。反射や跳ね返し系の武器ですか。厄介ですね」

「これでも、まだ序の口よ。さあ、もっと抗いなさい」

敵が笑った。

「ここであなたを倒します!」

希々が静かに剣を構える。

「嵐よ!吹き荒れろ!」

明るい緑色の片手剣から風圧が強い風が吹き荒れる。

「ちっ」

相手が怯んだ隙を見て、鍛えられた瞬発力で敵に接近する。

「果たしてこれで勝ったと思えるのかしら?」

「何を言って・・・」と言いかけたところで、希々は嫌な予感がした。

「何を仕組んだの?」

右腕が黒い何かに侵食され始めていた。

「さあ、ハンデを負った状態でどう抗う?」


「めんどくさい人を相手にさせてしまったな。早めに片付けて加勢したいけど・・・」

少しだけ希々の戦いを見たあと、藍翔は敵と撃ち合いを続ける。

右腕からは血が流れているが、藍翔からしてみれば致命傷ではない。

片手が使えなくても、もう片手が使えるなら、銃を撃つ分にはいかなる支障もないのだから。

「なかなかあんたもしぶといな。こっちもダメージ受けたし、もうあとがないから・・・」と藍翔が言いつつも、舐めプ(※舐めプレイの略で、わざと手加減して不真面目な態度でプレイするという意味)かのように拳銃をしまった。

「何が狙いだ?」という敵の問いに藍翔がニヤリと笑う。

「まあ、見ればわかるよ。じゃあ、とっておきの本気で行かせてもらうぜ。来い!」

藍翔が叫ぶと、空間の穴から銃身が長い銃が現れた。

見た目は普通のスナイパーライフル。強いていえば、スコープがついてないことくらい。

「これは一種のスナイパーライフル。俺の愛銃であり、この戦いを決定づける最大威力の攻撃を放つことができる」

藍翔が慣れた手つきで銃弾を装填し、左手だけで軽く構える。

敵との距離は十メートルあるかないかくらいで、普通に考えると、スナイパーライフルをこの距離で構えること自体ありえない行為というかオーバーキルである。

実際、スナイパーライフルは遠距離攻撃の武器であるため、遠くから撃つと一般人は考える。

もちろん種類によって変わるが。

だが、藍翔だけは違う。

幼少期から猟師の祖父に銃の扱い方を教わったエキスパートで、どの距離でも的を外すことはほぼなく、最適解の撃ち方を戦いの最中に編み出す。

藍翔が使う銃は、カスタマイズされている特殊なスナイパーライフル。

「スナイパーライフルをこの距離で構えるだと!?」

「普通ならありえない行為だ。でもな、威力は高い状態を維持している。受けきれるものなら受けてみろ!」

空気抵抗で銃弾の速度低下や、弾道の変化などの影響は出てくるが、 藍翔はそれすらも予測し銃弾を放つ。

「一度で終わらせてやるよ」

迷いなく銃弾を一発だけ発射する。

敵はへらへらしながらかわして一安心したのもつかの間、気づかないうちに胸の辺りに大きな穴が空いていた。

「な、んだと・・・」

「少しだけ細工をした。銃弾は特注の炸裂弾と言うべきかな。普通の銃弾じゃごく一般的な防具相手だと致命傷にならないけど、炸裂弾は防具すら貫く。あと、銃弾をかわすことを事前に予期し、床に反射させて命中するようにした。これを一秒も満たない時間で完結させる。そこまでは予測できないだろ?時間操作能力の持ち主さん」

藍翔が少しへらへらしながら種明かしをする。

「まずおかしいと思ったのは、なぜ銃弾を撃っているのに相手には当たってないか。何発かは当たったが、わざと当たりにいってるような感じで、そこまで致命傷を与えるほどのダメージ箇所じゃなかった。じゃあどうなったか、答えは簡単。時間を“数秒単位”で操作した。ごく稀にいるよね。だからさ、あえて時間操作を使わせた。使えなくなるまでな」

「なるほど、全てお見通しでしたか・・・ここで倒れてもなんの支障もないのですよ・・・」と言い残した敵は倒れ込んだ。

「希々!今そっちに向かう!」

「藍翔さん・・・」

酷い怪我を負っている希々が掠れ声でつぶやく。

藍翔が戦ってる間、希々はいったいどうしてたかと言うと・・・


三分ほど前の話。

「これは一体・・・」

黒い何かを見て希々が呟いた。

「少しだけ特殊な薬。注入されるだけで感覚麻痺、集中力の低下などが発生する。言い忘れたけど、全身にその薬が回ったら、正常な判断力すら無くなっちゃうよ。解毒薬はあるけど、苦しむ姿みたいからあげないよ」

目の前の敵が言うには、やばい薬であるということ。

「どこで、薬を私の体内に入れた・・・?」

「丁寧に近づいてくれた隙に注射器でね。さあ、屈するか抗うか、見せてよ」

「っ・・・藍翔さんが、来るまで耐えきって見せる・・・」

無事な手で片手剣を握る。

「集中力が切れかけてるのにまだやるの?」

「そう、よ。諦めない、から」

体を動かす度に痛みが発生するのに、感覚が麻痺しているせいで何も感じない。

その間に敵が一瞬だけ下がった。

「敵が怯んだ?いや、違う。これは・・・遠距離攻撃!?」

何とか攻撃をかわすが、希々は限界ギリギリだった。

「まだ、大丈夫・・・」

「抗う力は褒めるけど、もう面白くないよ。こんなにあっさり負けるのね」

そんな時に藍翔がやってきた。

ということがあった訳で。


「あら、相方をあっさり倒すのね。少し意外だわ」

「お前、何をした?」

藍翔がいつになくブチギレている。

「この子に薬を入れただけ。被検体みたいなものよ」

「ふざけんなよ」

藍翔は、威嚇で一発だけ銃弾を撃ち込む。

「銃はめんどくさいね。たしかに、解毒薬はあるよ。でも」

「でも?」

「彼女を見てみな」

藍翔が後ろを振り返ると、希々が気を失っていた。

「お前・・・よくも・・・!」

「いいね。その顔。でも、今日は満足だからここら辺で。薬のデータは取れたから十分かな。勇敢に戦ったからご褒美で解毒薬差し上げるよ。次会うときはもう少し強くなってね」

敵が黒い穴の中へ溶けていくように消えていった。

すぐに希々の元へ駆け寄る。

「希々、これを飲め」

藍翔が瓶に入った薬を飲ませる。

「ん・・・」

黒い何かは消えていった。

「これで大丈夫だな」

「ごめん、なさい」

希々が泣き出しそうになっている。

「希々は何も悪くない。俺が判断をミスっただけ。だから・・・」

「藍翔さんこそ悪くないですよ・・・」

希々がゆっくり立ち上がるが、すぐにフラっとする。

「とりあえず、行くか」

藍翔がお姫様抱っこで希々を二階まで運んだのだった。


ウトウトしている空癒の肩を揺すり起こす。

「空癒。希々を頼む。俺は、報告してくる」

「え、あ、え。いや、まって。もう、鎮圧してきたの?」

「そうだが?」

藍翔が目をぱちぱちしてから頷く。

「そうなのね。わかった。行ってらっしゃい。あとひとつ聞くけど、もしかして希々を戦わせた?」

「まあ、はい」

藍翔が申し訳なさそうに言うと空癒は怒った。

「正気なの!?戦闘経験ないのよ?なんなら今日所属したばっかなのよ?なんなら運動部の学生なのよ?なんで戦わせたの?なんでなん?説明して。というかこれからは戦闘経験ない人を戦わせるのはやめなさいよ」

ガチで怒る空癒に内心ヒヤヒヤしながら藍翔が少しだけ申し訳なさそうにする。

「わかってるって。まじで他の人を呼べばよかったって後悔してる。次からは気をつける。それじゃあな」

藍翔が何事も無かったかのように歩き出した。

「藍翔のバカ・・・」

藍翔の後ろ姿を見ながら呟いた空癒は希々を連れて治療室へ向かって歩き出した。

 

医務室と治療室と検査室の三つの部屋があるが、それぞれ目的が違う。

医務室は、主にЯEBIRTH CODEのメンバーの定期検診を行ったり、診察したりする場所。

(原因究明だけでなく診察も込みで行うため、遥斗は医務室に運ばれた)

治療室は、戦闘中に負った怪我などを治療する場所。

(希々がこれから連れていかれる場所)

検査室は、災厄地帯での戦闘やパトロールを終えて帰還した人に異常がないかを検査したりする場所。

(希々が初めて本部にやってきた時に連れていかれた場所)

というふうに役割ごとに場所が決まっている。

それもまた広大な敷地面積を持つからこそ用意できるのかもしれない。

そして、希々の初めての戦闘は思わぬ形で行われたが、その戦闘内容が後にЯEBIRTH CODE内を轟かせることになるとは誰も知る由もないのだった。


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