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EPISODE1.変わってしまった日常

検査を終えてすぐ、空癒は希々を同じ三階にある面談室に誘導した。

「少し待っててねー。スマホとかいじって構わんよ」

「え、あ、はい」

空癒は満足気に面談室を抜け、外で待機していた遥斗に検査結果を見せる。

遥斗は苦笑いする。

「やっぱり、兄と同じだったわ。異常はないけど、適正ありってところ」

「そうか。兄妹揃って適正ありか。頑張って説得してみる。兄の名前は出さない方が刺激しないだろうし・・・」

遥斗がドアノブを握った。

「待たせたね」

「あ、あの、早く帰らせてください」

希々が捲し立てる。

「少し落ち着いて欲しい。単刀直入に聞くが、希々には世界とか救いたいって気持ちはあるかい?」

「え、そりゃあ、出来たらやりたいなと思ってますけど・・・」

希々の回答に遥斗が内心、『あっさりと答えたな』と思いながら一枚の誓約書を渡す。

「ここで働かないか」

「はい?」

「もう一回言う。ここで働かないか?お金は出る。だから・・・」

遥斗の言葉に希々は渋々誓約書に名前を書く。

「お金とか関係ないです。正直、人々を救いたいという気持ちは大きいですけど、やっぱり死ぬのが怖くて・・・」

「そんな事で悩んでたのか。大丈夫だ・・・僕がいる限りは、君を守ってみせる。だから、安心して。あと、契約と関係ない話になるけど、家まで送ったほうがいい?」

遥斗が希々の家へ送るかどうか聞く。

外は真っ暗。夜は女子高校生一人が歩くには危険なタイミング。

希々は悩んだ末に申し訳なさそうに尋ねた。

「いいのですか?」

「ああ。構わないよ。それに・・・」

「?」

「いや、なんでもない。気にしないで。じゃ、行こっか」

希々と遥斗がエレベーターに向かっていく様子を見届けながら空癒は歩きながら「どうやら希々は、兄とは正反対の性格らしい。っと、仕事戻らなきゃ」と呟いた。


車に乗りこみ、移動しながら静寂な時間を過ごしていた。

「あ、あの。ひとつ聞いてもいいですか」

「ん、ああ。どうぞ」

「一瞬言いかけたことありましたよね」

「・・・!」

希々の鋭い質問に遥斗は方をビクッとさせた。

「なにか隠しているのでは、と思ったんです」

「ああ。そうか。別に隠し事では無いんだけど・・・」

「だけど?」

「まあ、その時がきたら教えるとするか。っと!」

遥斗がブレーキをかけて路肩に車を停止させた。

「このタイミングで災厄地帯外でアラートか・・・それにこの方角は白崎高校に近い・・・どうした。希々」

「・・・っかい。もう一回、言ってくれませんか」

「あ、ああ。この反応的に、白崎高校付近の出来事だな・・・」

「急いでください!」

希々が声を荒らげて言う。

「もしかして・・・白崎高校に通ってるのか?」

「はい・・・だから、自分の通う学校の被害を見たくないんです」

希々の少し悲しそうな顔を見た遥斗は応援要請を送った。


「本部へ、緊急事態です。災厄地帯外でのアラートが流れました。示している場所に近いためこれから向かいます。応援をお願いします」

「わかりました。連絡しておきます。どうか、お気をつけて。あと、車内に希々さんはいますか」

オペレーターからの言葉に遥斗は冷静に答えた。

「彼女の家に送っていくところだった」

「そうですか。では、少し変わっていただけますか?遥斗さんはそのまま目的地に向かってください」

「了解」

サブ端末を通話モードにして希々に渡す。

「電話」

「は、はい」

大事にサブ端末を握って電話に出る。

その間に、遥斗は車を走らせた。

「よりによって新メンバーがこのタイミングで巻き込まれたのね・・・あ、はじめまして。オペレーターの不知火夏帆(しらぬいかほ)と申します」

「は、初めまして。希々です」

「おっけー。単刀直入に言うと、新メンバー、ましてや、訓練を受けていない人は基本的に戦闘を認めておりません。しかし今回はかなり急であることより、特例で認めさせていただきます。詳しいことは遥斗兄ちゃんが教えてくれるよ」

夏帆が言うと盛大にお茶を吹き出す遥斗。

「ゴホ、ゲホッ。なんで言っちゃうのかな?」

「なんでっていわれてもねえ。ま、そんなわけでちゃんと話聞くんだよ。そうそう。遥斗兄ちゃん。くれぐれも迷惑かけちゃダメだよ?」

「わかってるよ。大丈夫」

「それじゃ、応援要請も送っとくけど、時間かかるからねー」とあっさり夏帆との通信が切れる。

「あの、妹さんいたんですね」

「まあな。全く、いらない情報を言いやがって。さて、ここからだと五分で学校に行けそうだ。安心しろ。被害は最小限にする」

遥斗がアクセル全開で向かった。


アクセル全開で車を走らせておよそ五分と少しで目的地に到着した。

もちろん、規定速度は守っている。

「んー。避難誘導だけお願いしていいかな?」

「本当に、大丈夫なんですよね?」

「ああ。大丈夫だよ。こういうのは慣れてるからね」

遥斗が武器を取り出す。

以前救ってくれた時の武器とは何かが違っていた。

あの時は刀一本だった。

でも今回は、刀が二本。

不思議そうに私が見ているなど知らずに遥斗が走り出す。

色々な種類の生物が高校の校舎や体育館を壊したり、グラウンドに裂け目を発生させたりしていた。

発生した裂け目からまた出てくる。

その様子を一瞬見てから、希々は明るい声で叫んだ。

「皆さん、こっちに逃げてください!」

避難誘導をしていると、「嬢ちゃんこそ、大丈夫なのかい?」という声をおじいさんからいただいた。

「怖いですけど、これくらいしないと行けませんから」

希々は作り笑いで応じる。

「にしても、なんでこんなことに・・・一瞬しか見れなかったけど、かなり校舎にダメージあったっぽい・・・みんな無事かな・・・さすがにこの時間なら誰も学校にはいないはずだし、大丈夫・・・だよね?」

避難誘導を行いながら、希々は心のどこかでクラスメイト達を思った。


「数が多いな・・・くそ。キリがない」

本部からここまでを車で行こうものなら規定速度遵守でも三十分はかかる。

まだ遥斗が到着してから十分も経過してない。

「どうするかだな・・・」

その時、遥斗の目の前に一人の男が降り立った。

「間に合った」

降り立ったのは、他でもない藍翔だった。

「藍翔、なぜ間に合った・・・」

そんな問いに藍翔は笑った。

「はぁ、遥斗は忘れたわけ?俺が、元々転移能力を持ってることをな!」

「忘れてないけど・・・だとしても、十分足らずで来れるものなのか?」

「うーん。正直、転移先の精度はガバガバだったよ。具体的な学校名とか指定できないから座標でゴリ押し。これも応援要請が入った時の遥斗の位置情報のおかげだな」

藍翔の自信ありげな表情を見た遥斗は苦笑いして立ち上がる。

「ひとつ聞くけど、他メンバーはまだだよね?」

「ああ。まだかかると思う」

「了解。じゃあ食い止めるぞ」

静かに遥斗が呟く。

「わかった。付き合ってやるって、上から目線なのもおかしいけどなははっ」

藍翔が笑う。


二人がかりで食い止めるというよりかは、二十分かけて抑え込んだの方が正しい。

「ぷはー。終わった」

「そうだな。さてと、希々は・・・」

遥斗が立ち上がると、元気そうな希々がいた。

「ご無事ですか?」

希々が何故か持っているエナドリを渡す。

「サンキューな」

藍翔が美味しそうにエナドリを一気に飲み干す。

「初めてにしては頑張った方、かな」

「うるさいです。って、そんなことはさておき、二人がご無事でまずはよかったです」

希々が安堵する。

「怪我人もいないし、死者もいないし頑張った方。でも、校舎がこんなに壊れたらさすがに修復には時間かかりそうだな」

「そう、ですね。でも、学校が全壊しなかっただけ救われたのかもしれません」

希々が少し寂しそうに半壊の校舎を見上げる。

「そういえば、希々を家に送らないと!藍翔。あとは任せていいか?」

「え、あ、うん。心配しないで。俺は大丈夫だから」

藍翔が寂しそうに遥斗を見る。

「どうかした?」

「いいや、なんでもない。早く送ってこいよ」

藍翔の言葉に頷く遥斗は希々を車に乗せる。

車を動かそうとする前に、藍翔が希々を見て一枚の紙を渡した。

「希々。この紙に俺の連絡先が書いてあるから、何かあったらここに連絡してください」 

藍翔が手を振る。

「はい。お気遣い感謝します」

遥斗の車が動き出したところで藍翔は静かに声のトーンを落として、半壊の校舎を見上げて呟いた。

「もう少しだけ、時間がかかるかな」


車を走らせて三分ほど経った頃の話。

「とりあえず一件落着かな」

「は、はい。そうですね。でも、正直通ってた学校があんなに酷いとは思ってもいなくて」

少し寂しそうに希々が呟いた。

「これが現実だよ。受け入れ難いだろうけど。これで精神的ダメージを受けているなら、この先、厳しいよ」

トゲのある言い方で遥斗が話す。

「わかってます。でも、頑張らなきゃ誰かが死ぬのは嫌」

「その覚悟を貫き通せ。今言いたいのはそれだけだ」

その後、車内は静かになった。

静かすぎる車内で寝ていると、電話の音で希々は目を覚ました。

「誰。って、遥斗さん・・・」

「家は、ここでいいんだよね?」

どうやら家に着いてたみたいだ。

「は、はい。ありがとうございます。でもなぜ私の家を?」

「情報経路は秘密だ。話は変わるが明日の午後三時、ここに集合で。多分、夏休み期間だろ?」

遥斗がメモを手渡してきた。

「わかりました」

「この駅に集合した後、本部に行って組織のことを話そうと思う。組織の真実を知りたかったのだろう?なら来い」

そう言い残し、遥斗は去っていった。

「なんだったのでしょうか・・・でも明日はたまたま部活ないはず・・・。というか正直、色々聞きたいことあるんだよね・・・」

希々はヘトヘトながらも何とか家へ入っていった。

すぐさまシャワーも浴びず、ベッドに入った。

眠気は思っていたよりも早く来た。

そのまま目を瞑り、寝た。


次の日。

朝早く(午前五時)に起きてから家から河川敷あたりまでをランニングをする希々。

「朝早くから走るのはいいですね・・・っと、危ない危ない。飲み物無くなるまま再び走り出すところだった。近くのコンビニで買おうかな」

そして、河川敷から歩いて三分のコンビニ入ると・・・

入店してすぐ、品出しをしていた爽やか男性店員に聞かれる。

「お前・・・ЯEBIRTH CODEの新入り?」

「え、あ、はい」

希々は咄嗟に頷く。

「へぇー。まさか普段から通う常連客が後輩になったのか・・・ハハッ。それは嬉しい誤算だな。あ、俺の名前は名札に、って言いたいところだけど、あいにく名札を外すようになってな」

「それは、なぜ?」

希々は意味わからないという感じで問い返す。

「そうだな・・・今、閑散としているから話できるんだが、昨今のクレーム電話とかパワハラとかが原因で従業員が責められるのを回避するためとか、まあそんな感じ」

「へー。そんなことはいいんです。改めて、あなたの名前、教えていただけますか?」

「俺の名前は、阿久津璃音(あくつりおん)。これでも、一応大学生なんだよ・・・」

希々は少し唖然として一つだけ聞いた。

「え、えっと・・・大学生なんですか・・・?」

「そうだ。と言っても、みんなから色々言われるんだよ。『大学生に見えない』とか、『大学生じゃなくてアスリートに見える』とかさ、もう、言われてショック受けたな」

確かに璃音と呼ばれる人物は希々が見ても筋肉質でムキムキである。

「運動部とかだったり・・・?」

「ああ。一応、陸上競技というかやり投げをやっているな。まあ、それが百パーセント原因なんだけどさ」

トホホとする璃音。

「と、とりあえずレジお願いしていいですか?」

急いで飲み物を手にして戻ってきた希々の声に璃音は猛ダッシュでレジに向かっていった。

「支払い方法は?」

「さすがに現金ですよ」

「この時代に現金とはな」

璃音の声にムキーとなる希々。

「別にいいでしょう?」

「まあいいけどさ。これ、お釣り」

「ありがとうございます」

希々がお辞儀をして去っていく。

「いい子、だな。あ、名前聞くの忘れたや」

思い出してあたふたした璃音はその後、お客さんを待たせすぎて店長に怒られたとか・・・。


「学校も部活もないし、暇だな」

昨日、希々が通う学校は半壊状態になったシーンを目の当たりにした。

体育館はもろ被害を受けており、練習もままならない。

ということで部活は無くなった。

ランニングを終え、シャワーを浴び、食事をとり、きちっとした服(制服)を着る。

「そろそろ、集合場所行かなきゃ」と言い、身分証明書である学生証と財布、スマートフォンを持って家を出る。

そもそも、この時代に携帯を使う人は少なくなっている。

今の主流は仮想ディスプレイ。

目の前にメッセージやニュースが表示される仕組みとなっているが、昔ながらの携帯やスマートフォンを好む人も一定数いるため、携帯電話会社や携帯、スマートフォン生産といったものの需要はある。

希々がスマートフォンを愛用する理由は、仮想ディスプレイ苦手だからという単純な理由であったりする。


家から歩くこと十分、現在時刻午後二時四十分。

集合時刻である午後三時より二十分も早く駅に到着した。

「ここで合ってるよね?」と少し心配になりながらも携帯を弄りながら待つ。

午後三時になる五分前、午後二時五十五分、遥斗が現れた。

「待たせたね。さ、行こっか」


遥斗の後ろについて行く。

駅近くのコインパーキングに停車している一台の車。

昨日と同じ車かと思いきや、色が違う。

昨日の車は青色。

でも今日の車は、黒色。

「車の色が違う?」

「細かい場所までよく覚えてるな」

「記憶力はいいですし。あと癖です・・・」

少し恥ずかしそうに言うと遥斗が素っ気ない言い方で「そうか」と言ってきた。

助手席に乗ってシートベルトを着用した希々を確認した遥斗が静かに車を走らせた。

「ここからなら五分ほどで到着するかな。そういえば、希々は、兄がいたんだよな?」

「え、あ、はい。いましたけど・・・?」

「兄の名前は言えるか?」

なぜそのことを聞くのか、と希々は思いながら言う。

「名前は、音華蓮唯オトシロレイです。五歳上で中一から高三までテニス部でした。そしてすごく明るくて優しい人。でも、たまに家に帰ってくるのが遅い時があって・・・」

「蓮唯、か。懐かしい名前だな」

遥斗が無意識に言った言葉を希々は聞き逃さない。

「兄さんを知っているのですか?」

「ああ。そのことも本部で話すよ」

静かな車内ではラジオが流れている。

「そういえば、昨日はラジオをかけてなかったですね」

「そうだな。まあ僕自身、ラジオは好まないから本当は消したいけど。ま、残念なことに昨日乗った車は車検で今はないから急遽代車って形だね」

遥斗は見た目に反してかっこいい。そう思う希々だった。


特に大きな渋滞に巻き込まれることなくЯEBIRTH CODEの本部に到着した二人。

「さてと、本部に到着したなら、早速、歩きながら話をしようか」

「ええ。お願いします」 

地下駐車場からエレベーターまで歩き、一階のロビーに行くと見せかけ、先に向かったのは二階だった。

「なぜ二階なのですか。てっきり、昨日と同じ一階に行ってから他の階に行くものかと」

「ああその話か。詳しい話とか機密事項などを話すには談話室よりこっちの方が優れてるからね」

二階に到着してすぐ、第一会議室と書いてある部屋に案内されて入ると、大きなホワイトボードと椅子がズラっと並んであった。

「ここが会議室。月一でミーティングとか行ってる場所。ここだと、傍聴される心配は無い。だから選んだだけ。さ、座って」

「ではお言葉に甘えて」

希々が座ったところで、淹れたての緑茶を持ってきた遥斗。

緑茶を置いた時、遥斗が少し微笑んだ。そんな気がした。

「改めまして、ようこそЯEBIRTH CODEに。ここは、色々な異変を解決したり人々の安全を守ったりする組織と説明すればいいかな」

「そうですか。それで、私はどうすれば?」

「そうだね。すぐにメンバーになれるわけじゃない。まず初めに二週間、訓練所が隣接してあるから、そこで訓練した後、試験を受けて合格すれば正式にメンバーとして活動って感じ。そうそう。先に聞いておくけど、今日って時間あるかな。後で武器とか見せたいんだよね」

「まあ、大丈夫ですよ」

「ならいい。ここまでで質問は?」

遥斗の問に希々は首を横に振る。

「わかった。じゃあ次は、蓮唯の話をしようか」

希々の雰囲気が、ガラリと変わった。

空気が冷たくなった感じ。

遥斗は少し息を吸って、話し出した。

「蓮唯は、ЯEBIRTH CODEの初期メンバーだった。このことは妹である希々に言いたくなかった。でも、苗字を聞いたときに引っかかったし、空癒と話していて確信を持った。蓮唯の妹だ、って」

緑茶を飲んでから希々は立ち上がりながら遥斗の胸倉を掴んで「なんで・・・なんで、言わなかったんですか!?」と叫ぶ。

「信じたくなかったのに・・・。なんで・・・大事なことを言ってくれなかったのですか!?なんで、兄さんはЯEBIRTH CODEに入ったのですか!?教えてください!いいえ、教えてもらうまで帰りません!」

心に秘めていた思いをぶつける。

「もし蓮唯が初期メンバーであることを検査の時に言って信じれたか?」

「そ、それは・・・実感無いし、言うタイミングが違っていても信じることなんかできませんよ」

遥斗が「だろうな」と言いながら話を続ける。

「蓮唯の妹である希々が今どんな思いかは分からない。そもそも蓮唯は、初期メンバーにして最強の一人。そんな蓮唯は行方不明なんだ・・・」

「・・・やっぱり、行方不明だったんですね」

希々が遥斗の胸倉を離し、涙をこらえて話をする。

「ずっと帰ってこなくて、心配で、なにか危ないことでも起きたのかなって思ったら行方不明って・・・あまりにも「できすぎてる?って思うよね」

遥斗が少し悲しげに話す。

「蓮唯はあの時、単独任務に挑んでたんだ。最初は僕も一緒に行くって言ったけど、蓮唯は、大丈夫って言って出かけた。なのに結局戻って来なかった。最初は現実を受け入れることができなかった。今も会いたいって気持ちは大きい。だからこそ、」と一呼吸おいてから希々の目を見た。

「希々に全てを託すよ」

その一言に希々はきょとんとした。

「私にですか?」

「僕がいる限り、希々を死なせないし、失わせたりしない。だから・・・」

遥斗が次の言葉を言う前に希々が遥斗の手を取った。

「遥斗さんが、そう言ってくれるなら、私は頑張ります。だから、お願いします。私に力を貸してください。兄さんに負けないくらい、強い人になりたいんです。それに、兄さんの手がかりがあるのなら、欲しいです」

それは、他でもない希々が考えた中で導き出した結論だった。

それは、兄である蓮唯と再会すること。

そのためなら強くなろう。と覚悟を持った希々の強い意志に負けたかのように肩をすくめる遥斗。

「わかった。君がそこまで言うなら、僕は何も言わない。全力でサポートするよ。改めて、よろしく。希々」

「こちらこそ、よろしくお願いします。遥斗さん」

その様子を空癒は少しだけドアを開けてできた隙間から覗いて見ていた。

「めっちゃ泣けるやん・・・嬉しいな。っと、仕事戻らないと・・・」

急いで会議室から離れる空癒に気づく者は誰もいなかった。

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― 新着の感想 ―
勘の鋭い主人公という強みが物語の中で活かしていければ面白くなるかもといった感じでした。勘の鋭さと読者の理解というか共感を合わせるのって中々難しいですが、上手く表現することができるようになれば、強みにな…
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