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本編に入る前に
本作は『NOVEL DAYS』さんなどで投稿している作品(現在も執筆中)を加筆修正(場所によっては加筆修正していない場所もありますが)したバージョンになってます。
なお、更新頻度は月一ペースになると思ってください。
前置きはここまで。
西暦二〇四五年五月二十日、突如として無数の亀裂が全国各地で発生した。
亀裂から現れたのは、未知の生物だった。
形は様々で液体状の生物もいれば、巨人のような大きい生物など多岐にわたる。
生物たちの狙いは、亀裂が発生してから三ヶ月経った今も判明していない。
だが、大まかな推測はできる。
初期の頃こそは人間を殺すパターンが濃厚だったが、最近は人間を攫うパターンも増加している。
故にこの二パターンが狙いとされている。
政府の動きは迅速だった。
亀裂が発生した翌日、政府は国会にある法案を提出した。
その後審議がスムーズに進み、提出してからわずか三日で賛成多数によって可決成立された。
その法案の名前は、『非常体制整備法』。
名前の通り、未知の生物を倒す組織を設立し、国民の安全を守る体制を整えるという内容である。
早速政府は東京都に組織の本部を置き、宮城県に北海道・東北支部、愛知県に中部支部、大阪府に近畿支部、広島県に中国・四国支部、福岡県に九州・沖縄支部を置いた。
組織の名前は、『ЯEBIRTH CODE』。
初期メンバーは五十人で、本部に十五人、残りの支部には七人ずつ配置した。
組織の動き方としては、専用のダイヤルを開設、国民からの亀裂発生の連絡を本部で引き受け、連絡を受けた国民の住所をGPSで把握、その住所の管轄地域のある支部に連絡し、移動という動きである。
あとは、パトロール中に亀裂発生の場面に遭遇、解決するという動きもあるが極めて珍しいらしい。
ЯEBIRTH CODEはできてから死者は一切出していない。
負傷者は出るが、死者は出していない。
なぜ死者が出ないか、答えは至極簡単で、本部と各支部に置かれている治療施設が異次元すぎるからである。
瀕死状態のメンバーが出ても高度な医療技術で死なせることがまずない。
あとは、全てのメンバーに転移装置を所持させているため、何かあった時は現在地から最も近い組織の関連施設に転移できる。
そのため、死者が出ていない。
組織にいる人たちの分布は三つ。
一つ目は、管制室のオペレーターや指揮官といった重要役職。
二つ目は、戦闘員。ほとんどのメンバーがこの役職。
三つ目は、医療班。名前の通り、負傷者などを治療する役職。
以上三つが主な役割。
それでいて、初期メンバーが五十人だった組織も気づけば、百人を超えており、現在進行形でメンバーは増えているとかいないとか。
(組織にはメンバー選考という概念はなく、オファーやスカウトなどでメンバーを決めているという噂があるらしい・・・)
ちなみに、たとえ学生であっても、所属メンバーであれば給料は貰える・・・らしい。
というのがЯEBIRTH CODEの詳細。
さて、この国に起きていることはざっとわかっただろう。
壊滅寸前とは行かないものの、この国はやばいということ、この国を守り、維持するための組織が置かれたこと。
課題はまだまだあるが、それでも、ЯEBIRTH CODEのメンバーは日々戦い続けている。
精神的苦痛を味わっても、戦うしかない。
逆に考えれば、どんなことが起きてもメンタルが崩れないという鋼のメンタルを持つメンバーたちのおかげでこの国は踏みとどまっているのだと。
ちなみに、初期メンバーの中で唯一行方不明になった人物がいる。
だが、ほかのメンバーは頑なに話そうとしない。
何故ならば、あまりにも悲惨で語るだけでおぞましいからだ。
思い出したくもない、言うことすら禁じられているから。
真実を知る者はほんのひと握りだけ。
時は流れ、西暦二〇四八年七月二十日。
何の変哲もない生活をしている一人の高校生が東京都内にいる。
その人の名前は、音華希々。
年齢は十七歳の高校二年生。
ちなみに先日誕生日を迎えたばかりだ。
性別は女、バドミントン部で、スポーツの名門校、白崎高校に通っている。
全国大会に毎年出場するほど有名で、強い。
学校内でもファンは男女問わずいる。
今日も、夏休みでありながら部活があるため学校に来ていた。
体育館に入ってすぐ、同級生複数人に声をかけられる。
「希々じゃん。相変わらず真面目じゃねえか。俺なんかサボりたいよ」
「おはよー。今日も頑張ろうね」
「う、うん。今日も、頑張ろう・・・。というか暑くなりそう・・・いくら体育館に冷房があるとはいえ、これは厳しい暑さになりそう・・・」
みんなの声に反応しながら、希々はスマホで東京都内の気温を見る。
「最高気温が四十度・・・いくらなんでも涼しくなる設備をたくさん導入したのにまだこんな暑さなのね」
そう、希々が言っている設備とは、五、六年ほど前に暑さ対策で全国に水を自動で撒く機械のこと。なのにも関わらず、毎年暑さが際立っている。
今年は五十度超えた地域もあるとの事でもはや終わっている。
他にも夏休みの課題とか他愛もない話をしながら、練習開始まで時間を潰すのがルーティンになっている。
「そういえばさ、希々って、将来の夢どうする?」
「え、将来の夢・・・?私の?」
「そう。教えて欲しいな」
至近距離にいたクラスメイトの女子生徒に聞かれて悩んだ末に答えた。
「夢じゃないけど、兄さんを探したい」
「兄?希々ってお兄ちゃんいたんだ・・・」
クラスメイトの声に希々は少し寂しい顔をした。
「兄さんとはその、五歳離れてて、ある日、行方不明になって・・・心のどこかでは無事だと思ってるけど、正直心配」
それから、希々は練習始まるまで色々思い出を話した。
ーー兄さんは、小さい頃から勉強を教えてくれた。それも丁寧に。あと兄さんは、テニス部だったから、一時期はテニス部に入ろうと思ったけど、兄さんから、「お前は、バドミントンの方がお似合いだ」なんて言われて笑ったよね。
行方不明になった話?そう、ね。先月の半ばくらいかな、たまたま部活が休みだった日なんだけど、兄さんが出かけてくるって言ってから、帰ってこなかったの。あ、知ってると思うけど両親は海外で働いてるから家に私一人ね。
数日経っても帰ってこなくてさ、心配になったの。
正直なところ、旅行だといいんだけど・・・そう思わずにはいられないんだよね。なんか裏がある、そういう感じがしてしょうがないの。
「とまあ、こんなもんかな」
「ふむふむなるほど。きっと兄は見つかるって。だから、とりあえず、練習頑張ろう。ね」
クラスメイトの励ましに嬉しくなる。
「もちろん。頑張るよ」
という話をしていると、コーチが現れた。
コーチの練習は厳しい。
しかし、希々は文句を言わず、ひたすら練習していた。
後輩やクラスメイトは希々とコーチの試合形式の練習を見ながらつぶやく。
「希々・・・やっぱりバケモンじゃね?」
「えーわかるー。すごいよね。コーチのあの動きについていけるんだもんね」
「ってか、あれですました顔できるのかっけえ」
そんな風に盛りあがってるとは知らずに希々はひたすら打ち込んだ。
「希々。このまま全国大会制覇だな」
「コーチ。もちろんですよ。勝ちますから」
微笑んだその顔は多くの人を釘付けした・・・
練習を終え、いつものように書店へ向かう希々。
まだ日は沈んでおらず、日差しは強い。
「今日は、新刊発売日ー。ふふっ」
新刊だけにはとどまらず、気になっていた本もまとめて購入。
レジに持っていくと、希々は合計金額で驚いてしまった。
「お会計、一万五千円です」
「一万・・・五千円・・・。え、えっと、これでお願いします」
希々は一万円札を二枚出してお支払いする。
「ありがとうございましたー」
袋に入った本をバッグに詰め込んで帰り道を歩き出す。
この時の希々はウキウキしていて気づいていなかった。
家とは逆の方向の電車に乗ってしまったこと、そして、降りた駅が災厄地帯に近いことを・・・
間違えた電車に乗って約十分、電車内のアナウンスがいつもと違うことにようやく気づいた。
「え、嘘、乗る電車間違えた・・・」
とりあえず次の駅で降りよう、そう考えた希々はすぐさま駅に降りた。
「とりあえず、家の方向へ向かう電車が30分後・・・どうしようかな」
悩んだ末に、近くを探索することを決意。
駅のホームから少し離れると、不気味なエリアに入り込んだ。
「なに、ここ・・・」
禍々しい雰囲気で、現実とはかけ離れているエリアというのはすぐにわかった。
「逃げなきゃ・・・ここから離れなきゃ」
すぐさま元のエリアに戻ろうとするが、なかなか戻れない。
それに、気持ち悪い生物も湧いてきた。
必死に逃げ回るが、生物も追いかけてくる。
いよいよ行き止まりまで追い詰められる。
「私、ここで終わるのかな・・・」
生物たちが近づいてくる中、弱々しく呟いた希々。
その時だった。
「朧影斬・羅刹」
静かで、迫力を感じる声が聞こえた。
恐る恐る目を開けると、一人の青年が刀で生物を斬り倒していた。
希々は驚いた。
一撃であれだけの敵を瞬殺したことに。
フードを被っているため、顔も髪も表情も何も分からない。
ただこれだけは言える、目の前の人物が助けに来たということ。
よくわからない生物たちを倒しながら青年が聞く。
「君、名前は」
「音華希々です・・・」
あっという間に倒し終え、青年が手を差し伸べる。
「音華・・・?どっかで聞いたことあるな。ま、気のせいか。それより、立てるか?」
「あ、はい」
申し訳なさそうに希々は青年の手を借りて立ち上がる。
「けど珍しいね。自らこんな場所に入り込む人間なんて。これまでいた記憶が無い」
「実は、付近を探索したら誤って入り込んでしまって・・・」
希々が恥ずかしそうにすると、青年は怒った。
「誤って入り込んだって、下手したら死ぬ。それはわかってるの?」
「すみません」
青年は希々が反省している姿を見てため息混じりにフードを脱ぐ。
顔立ちは整っており、銀髪に青色のメッシュ。
一言言うとすれば、クールフェイスであること。
「わかったならそれでいい。僕の名前は、不知火遥斗。よろしく。さてと、突然で悪いけど君を保護する」
「え?」
「何を驚いている?この災厄地帯にいた一般人は色々検査する必要がある。そのための保護だ。ご両親に連絡する時間はいるか?」
遥斗の説明に希々は少し間を開けて答えた。
「ご両親は海外出張でいないんです・・・だから連絡はいらないです」
「そうか。じゃあ、この紐を握ってくれ」
遥斗が差し出した紐を希々は握った。
「転移」
遥斗が一言呟いた瞬間、景色が一変した。
どこかの広い建物のロビーであること、たくさんの人が行き交うこと、そして、すごい場所ということだけはわかった。
「ここは?」
「ここは、僕が所属している組織の本部さ」
「はい?」
遥斗が苦笑いしながら紹介すると、希々はキョトンとする。
受付カウンターにいた一人の男性が寄ってきた。
「遥斗ー無事だったか」
「なんだ、そんなことか。僕は無事」
「よかった。それよりこの子は?もしかして恋人?」
「何を言ってるんだ?この子は、検査しに連れてきただけだよ」
「検査って、もしかして、災厄地帯に関連は・・・」
「大アリ。とりあえず退けてくれないか?」
「わ、わかった」
さぞ仲がいいのだろう。
羨ましそうに会話を見ていた希々を見た男性は慌てて自己紹介をした。
「俺の名前は柊藍翔。遥斗の幼なじみっす」
「どうも。音華希々です・・・」
希々が名乗った瞬間、藍翔が血相を変えて遥斗に小声で尋ねる。
「もしかしてこの子って・・・」
「多分、そうだと思う」
「?」
何の話をしているか分からない希々だったがすぐに遥斗が付け足す。
「ああ。気にしないでいいよ。ちょっとした話さ。んじゃ、検査室へ案内するよ。またな藍翔」
「え、あ、うん。また後でな」
遥斗が希々を連れていく様子を藍翔は羨ましそうにみていた。
遥斗がエレベーターで三階のボタンを押す。
夜だと言うのに気温は三十度を超えている。
お陰様でエレベーター内の冷房が心地いい。
エレベーターに乗っている間、希々は怖くなってきた。
この建物のこと、組織のこと、なにもかも説明を受けていない。
三階に降りてすぐに希々は聞いてみた。
「あ、あのぉ、遥斗さん」
「なんか気になることでも?」
「え、えっと。遥斗さんが所属している組織のこと、なんも知らないんですけど・・・」
遥斗は「ああ。そういえば、そうだったけ」と言いながら、歩き出す。
結局教えてくれないまま歩くこと約三分。
「そろそろ目的地みたいだ」
遥斗はドアをノックする。
「入りますよ」
そこにいた人物に希々は驚いた。
少し汚れている白衣をまとった女性。
「やあ。希々。久しぶりだねぇ」
「え?なんでここにいるんですか。空癒さん・・・」
「おー覚えてくれてたんだ。嬉しいなあ」
空癒と呼ばれた人物がメガネをクイッと上げる。
「知ってるなら説明は短く済むな。こちらは、緋色空癒。ここの治療班の一人で、一応戦闘員でもある。ま、だいたい治療で手一杯で戦闘した事例なんて手で数える程しかないけど」
「えへへ。にしてもなんで希々がいるかなー?」
「ああ。その話なんだが、こいつ、災厄地帯にいたんだよ」
遥斗の説明に空癒は頷く。
「ふむふむなるほど。つまり、汚染されてないかの検査をしたいってこと?」
「話が早くて助かるよ」
遥斗が肩をすくめる。
「んじゃ、希々。こっちおいで。痛いことはしないから」
「一つだけ聞いていいですか」
「なにかな?」
空癒が検査結果を記入する用紙に名前を書こうとしている手を止めて希々を見る。
「ここはどこですか」
「ここは、ЯEBIRTH CODEっていう組織の本部。今はまだこれしか言えないけどね」
希々は数秒呆然とし、すぐさま聞き返す。
「なんですって?」
「もう一回言う?」
空癒の声に希々は頷く。
「ここは、ЯEBIRTH CODEっていう組織の本部。名前くらいは聞いたことあるんじゃないかな?」
「ニュースで取り上げられたのを見た記憶はありますけど・・・」
「ま、詳しいことは後で遥斗ニキに聞いてもらうとして。んじゃ手短に検査終わらせよっか。話はそこからよ」
空癒が無言で希々の身体に機械を取り付ける。
「5秒、目を瞑ってね」
空癒の指示に無言で頷き、目を瞑る希々。
検査結果で意外な結果が出ることをこの時はまだ知らない。




