4話
播磨の男、フラレはようやく街に辿り着いた。
「よし、……これでいいか。」
フラレは街に入る前に、事前にマリィから受け取った衣服を身につけてから、街に入る。
ぼろい紫の布切れのままでは、悪魔と間違われても文句を言えない、というのもあるが、悪魔以前に人間としても怪しまれやすいという理由もある。マリィの気遣いに感謝しかない。
「それにしても……」
街並みは、フラレにとり真新しさの塊であった。デイマー帝国は、フラレが吉野伊巳だった頃の日本の京都に酷似していたため、この洋風の街は、それこそ別の世界に誘われたような感覚である。
フラレはとにかく街を散策し歩き回った。人間世界を勉強したいというのもあるが、彼の一番の目的は、人助けである。
(どこかに困っている人はいないか……)
そんな風に歩き回っていると、一つの豪邸の前で立ち往生している一団が見えた。
馬車に乗って、豪邸を入ろうとしているやんごとなき方のようだ。それを、一匹の犬が吠え回って、阻止しているようである。
「もし、何かお困りなのですか?」
フラレは馬車に乗る高貴な方に話しかけた。すると、近くにいた護衛がフラレを突き飛ばす。
「寄るな! この方はドラッシュ侯爵にあらせられるぞ。お前のような下民が近づいていい方ではない。」
尻もちをついたフラレは立ち上がって、尻の土を落とす。着替えて貧乏さは多少薄れたはずだが、これでも下民扱いされるということは、よほど身分の高い方なのだろう。
「これこれ。親切で近づいた人を邪険に扱うものじゃないよ。」
そこで、ドラッシュ侯爵と呼ばれるお方は、馬車の戸を開いて護衛を諌めた。白い鬚を蓄えた四十路ほどの初老だ。そしてフラレに言う。
「いかにも、私は今困っておるのよ。我々は今、自分の邸宅に帰るところなのだが、この野良犬がどうしても我々を妨げてくる。どうにかならぬものか……。」
見ると、確かに汚らしい野良犬が鉄門の入り口で通せんぼしている。馬車を降りて通ろうとしても、ドラッシュ侯爵のズボンの裾を引っ張り通さないと言う。
「ははあ、なるほど。」
フラレはその様子を見て、ピンと来た。




