第九十三話 天使達
100話で完結します。
「あっ!ミカエルさん!」
天界——それは雲海よりもさらに上、光そのものが大地となったような純白の世界。
大小無数の神殿が浮遊し、淡い光の粒が常に空中を舞い続けている。天使たちはその間を羽音もなく行き交い、まるでひとつの巨大な“管理装置”のように秩序を保っていた。
その中心エリアのひとつ、白銀の回廊で、銀髪をゆるく揺らすガブリエルが声を上げた。
金糸のような羽根を持ち、神々しい光をまとった彼女が呼び止めた相手——それは彼女以上の輝きを放つ青年だった。
神の気配を帯びた白金色の翼。
歩くだけで大気が震えるほどの存在感。
天界の四大天使の中でも別格とされる青年、ミカエルである。
「ん? なに?」
ミカエルは足を止め、軽く首を傾げた。
その仕草は少年のように無邪気だが、背後の空間は重力が歪んだように揺れている。
彼はつい最近、下界での任務を一区切りつけ、久々に天界へ戻ってきていた。まるで“実家へ一時帰省”でもするかのような気軽さ。そのためガブリエルの声がけにも特別な緊張は感じていない。
ガブリエルは深く息を吸い込み、これまでに起きた全ての経緯を端的に説明し始めた。
ウリエルが転生者の選抜を誤ったこと。
その転生者が自らを“魔王”と名乗り、配下を集め強大な勢力を築きつつあること。
そして最終的に、天界へと侵攻する計画を進めていること。
そこまで聞いた瞬間、ミカエルの金の瞳が細められた。
理解は速く、そして鋭い。
(あれ? 天界狙われるなら、次狙われるのオイラじゃね?)
天界を正面から落とすことは不可能。
となれば、必ずどこか“勝機を作るための一点突破”を狙う。
その条件で最も価値が高いのは、強さ・位置づけ・希少性……何をとっても自分だろう。
ミカエルは淡々とそう結論づけた。
「問題ないよ。俺がいく。」
迷いも緊迫感もなく、ただ事実を述べるような声だった。
その一言に天界側の勝ち筋がそのまま浮かび上がる。
ちょうどそのとき、白い廊下の奥からバタバタと軽快な足音が響き始めた。
近づくにつれ、その乱れた呼吸もはっきり聞こえてくる。
「あっ!あの、、!」
金髪の少女が角を曲がった瞬間、勢いそのままにバランスを崩し、
ズドーンッ!
まさに漫画のような音が回廊に響いた。
ご丁寧に、床の光が一瞬だけ波紋のように揺れた気がする。
彼女はウリエル。
散らばった書類を抱えたまま起き上がり、涙目のまま二人の前に立つ。
「すみません、ウリエルです……こんなことになったのは、、私の責任、、」
肩を震わせ、声は今にも途切れそうだった。
ミカエルはそんな彼女の前に静かに歩み寄ると、そっと肩に手を置いた。
「大丈夫。勝つから、、」
その声音には圧倒的な安心感が宿っていた。
“勝つ”——それが事実であると誰も疑えないほどに。
(ハイルさんほどは強くないだろう。)
ミカエルの内心は妙に冷静だった。
魔王と呼ばれても、かつて下界で見た神以上の存在——ハイル——には及ばないと、直感で理解している。
「ありがとうございます…
足引っ張らないよう精進します…!」
ミカエルの勝つから、と言う声を聞いてウリエルはここらから安堵しこれからは絶対に、足を引っ張らないと誓った。
その様子を見て、2人は思った。
((やっぱこの子ちょっとめんどくさいな、))
こうして、ライトたちの秘密の作戦は、天界側から見れば既に丸裸の状態。
果たして彼らは勝てるのか。
世界に変革をもたらすことができるのか。
その結末は、まだ誰にもわからない——。
久しぶりにミカエル書いたけど、上手くできてるかな?
というか、5作中おそらくミカエルさん3作にこれで出勤です。




