第九十二話 人質大作戦!
アスが、焔と蒼の方へちらりと視線を向けながら言った。
「エルは不明、赤子で降ってきたのは異例かな。
アヌビスは元々なんか歩いたらいた感じだよね?」
その問いに、焔と蒼は同じタイミングで軽く頷く。
「うん!そこ歩いたらいたよ、」
焔が肩をすくめながらそう答えると、蒼も続くように表情を緩めた。
言われてみれば、この二人も神だ。
いや、正確には “神の使い” と呼ぶべき存在なのだろう。狐の神格──この世界に根付いている、土着の神々だ。
彼らが“降ってきた”系の異分子ではないのは、ひと目でわかる。
だが、アスの顔はどこか浮かない。
「まぁ、どちらにせよ厳しいか、、」
「うん。天界を壊すのはね、、」
焔と蒼が短く返す。ふたりとも、いつになく神妙な気配をまとっている。
「どう言う意味?」
思わず問い返すと、アスは口を噤んだ。
言葉を出し渋るように、だが目だけはこちらから逸らそうとしない。
むしろ、こちらが気づくのを待っているような視線だった。
「ミカエルとか言う奴がいる。」
ん?
《お前が気づかないから、、》
……俺のせい?
そんな意味を含んだため息混じりの声が、アスの内側から伝わってくる。
アスはようやく話し始めた。
天界にはミカエルという天使がいる──それはただの天使ではなく、“大天使” の中でも頂点に近い存在らしい。
天使階級の最上位、熾天使。
天の軍勢を率いる将であり、ルシファーの双子にして、かつてサタンを打ち倒した力を持つという。
その名を聞いた瞬間、場の空気がひやりと沈む。
あのアスですら、その名を前に慎重になっているのが伝わった。
コイツ1人に集中し本気を出せば、人質には取れるだろうとのこと、
「神々にとって優秀な天使を人質に取られれば、神々は失いたくないが為にも話を聞く気になるはず、、
実力行使からの話し合いに引き寄せる。」
なるほど。
強引だが、確かに現実的な作戦だ。
「でも、サタンを打ち倒すほどの者ですよね?
勝てるんですか?」
シドウが不安を隠しきれない声で問いかける。
当然、周囲の皆も同じ疑問を抱いていたようで、小さく、しかし確かに頷いていた。
アスは腕を組んで、少し遠い目をした。
「アイツは最近天界に久しぶりに帰ってきたばっかなはず、、、ほんとに最近だな。
それに多分、多少弱体化しているはずだ。」
淡々とした声だが、そこには確かな確信があった。
アスが言うのなら、その情報は信用していい。
「わかった。ロバートはどう思う?」
視線を向けると、ロバートは額に手を当てて深く息を吐いた。
「どう思うって、、やるしかないんだろ?」
渋い顔で言いながらも、諦めたように頷く。
結局、この作戦以外に現実的な道はないというわけだ。
死相達もまた、こちらの側につくと宣言した。
元から天界に不満を抱えていたらしい。
彼らは“失敗作”として生み出され、死相の名を与えられた存在。
天界に対して抱く感情は、恨みに近いものだろう。
「ありがと。じゃあ、会議終わり!
1週間後、天界に行き、ミカエルを脅しに使う!」
俺は全員の視線を受け止め、強く宣言した。
天使達からは、もうとっくに目をつけられている。
勇者候補をこちらへ送り込んできた時点で、決定的だ。
天界への道は、この世界出身の者たちに任せる。
それと、
この作戦で――
俺は自分の命を使い切るつもりだった。
やり方がちゃんと魔王




