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第九十一話 忘れ事

「……あの〜、多分無理だと思う。」


 恐る恐るアスが口を開いた瞬間、場の空気がわずかに揺れた。

 肩をすくめながら、普段は声が大きいのに、今回ばかりは声が小さい。


 ん?

 何故?


 今の俺たちは、確かに強い。

 魔王軍としての“数”では劣るが、一体一体の質は桁違いだ。

 獣人族の村だって、俺が強くなるたびに連鎖するように能力が底上げされる。

 その恩恵で、いまやSランクとSSランクの境を平然と越える奴らも出てきたくらいだ。


 村の中央には、いつの間にか電波塔まで建っている。

 《発展しすぎだわ。》

 とヴルドが冷めた声でツッコむほどに。


「なんでそう思うんだ?」


 俺がアスに問いかけると、アスはうつむきながらも、指を一本立てて説明を始めた。


「まぁ、シンプルに人数差、あそこは天使が馬鹿みたいにいる。

 まぁ、悪魔達には嫌われてることが多いからそいつらを集めればかなり戦力になると思う、でも……」


「でも?」


「主要な悪魔達はもう他の世界にいるし、、

 天使たちの個々の実力は、サマエルで最低ライン。

 それが、この世界の外………規格外な世界だよ。」


 サマエルで最低ライン?

 無理じゃん。


 《今更か、》

 とヴルドのため息混じりの声。


「天界壊すのは、サタンとかでもきつい?」


「はっきり言うと無理。」


「星界律だよ?」


「星界律はあくまでもこの世界の魔法の基礎、

 他の世界にはその世界の魔法の基礎があるから、無力。

 天界を滅ぼせるのは、、え〜なんだっけな。

 ハイル? アクロイド? みたいな奴ならいけると思う。」


 聞いたこともない名前。

 内心でヴルドが《世間知らず。》と即ツッコミを入れてくる。


 いや、さっきから一言ウルセェな。


「そいつはどんな奴なの?」


「僕もあまり覚えてない。

 でも、ルシファーとかいう僕が嫌いな最古参の悪魔がね。

 僕に自慢げに話しかけてきたんだよね。うざくてそこまで聞いてなかったけど……」


 なるほど。

 サマエルが最低ラインとなると、これは少しどころか、


 《かなり厳しいな。》

 ヴルドまでそう言う始末。


 俺はふと気になって聞いた。


 というか、お前は無理なのか?


 ヴルドが即答する。


 《無理だな。

 流石に、ハイルには俺も勝てん。》


 ハイル?

 アスが言ってた奴。そんなに強いのか?


 というか、そういえばお前の腕を跳ねた侍も?


 俺がそう問うと、見えないヴルドが首を振った気配を見せた。


 《まずあの侍は強いだけの無能力者。

 ハイルは化け物、と聞く。》


 生きてる?

 と聞けば、


 《さぁ?》

 とそっけない。


「じゃあ、、ハイルとか言う奴に会ってみる?」


「会えないよ。」


 アスはきっぱりと言い切った。

 その表情は、普段の軽さも茶化しもない。


「あっちが会おうとしたら可能だと思うけど、こっちからは理論上無理。

 世界観を行き来することは禁止されてる。天界に。

 会うには行き来しないとだけど、あなたたちを倒す為に会いに行きます。

 なんて適応されるわけないじゃん。

 会うには天界を壊さないと、でもそれが出来ればハイルは要らないでしょ?」


 確かにアスの言葉は理にかなっていた。

 皆も一斉に頷く。


 だが、そこで俺の中に小さな疑問が浮かんだ。


「アス、ルシファーとはいつ、どこで会ったんだ?」


「え、確か天界で……」


「ハイルは無理でも、天界に行けばルシファーには会えるのか?」


 なら、ルシファーを――。


「我が君。

 それは、無理です。ルシファーは人間嫌い、悪魔でも友達と言う友達はそこまで耳にしません。

 悪魔たちの憧れ的存在なので……」


 サマエルが、淡々と、しかしきっぱり言う。


「まぁ、自分たちでどうにかするしかないのか……」


「そう言うこと。

 あそこの世界は、アザトースっていう外の世界から来た邪神を撃ち倒した。

 そもそも魔法の格が違う。トップレベルの世界になったんだ。

 僕たちのいる世界は、天界が管理する世界の一つに過ぎない。あの世界はその中でも頭ひとつ抜けてる。」


「悪魔や天使は好きな世界にいけるの?」


「まぁ、一応ね。

 堕ちれるから、、天使はほんとに稀。

 ていうか普通はダメね、すぐ人間助けて色々問題起こしちゃうから。

 悪魔は問題を起こすのが仕事で、天使はそういうのは御法度てきな?感じなの。」


 へ〜、天界も色々めんどくさいな。


 そんな時だった。

 俺の頭の奥に、もうひとつの疑問が浮かんだ。


 アスタロト、サマエル、グレモリー、アザゼル、

 サタン、アムドゥスキアス、バフォメット

 確かに悪魔だ。なら――


「エルは?それにアヌビスだって、神だろ?」


 元を辿れば、エルも天使だ。片翼だが。

 それに、アヌビスだって有名なエジプト神。


 俺がエル、アヌビスの名を出した瞬間、

 エルの指先がぴくりと震え、空気が凍りついた。


 皆が一様に固まる。


 あれ、気づいてなかった?

 いや……忘れてたな?


 こうして、今この場に新たな問題が積み上がった――。

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