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第九十話 最初の死相

「……よっ!」


 乾いた空気が裂けるように、俺はクレアの真横へ滑り込んだ。

 視界の端では、巨大な影が地面を抉りながら後退している。戸破だ。

 大地が軋み、空気が震えていた。クレアですら押されるほどの圧だ。


 当然だ。

 死相の能力の一部が使えなくなった戸破だが、もはや制御不能の暴走体に近い。


「死相の能力が、、使えない……地震に、、戦争、飢餓………なんで、全て私の子なのに……」


 戸破は喉を震わせながら呟く。

 まるで世界そのものから切り離された子どもが泣き叫ぶような声だった。


 失敗作。

 始祖を生み出すために、何度も重ねられた実験。その“失敗作”が死相だ。

 なら、元はと言えば俺と言う始祖のせいでもある。この狂気に終止符を打つのは――俺の役目だ。


「それは、、こう言うこと?」


 俺は右手を軽く掲げ、人差し指と親指で銃の形を作る。

 魔力が指先に集まり、空気がピンと張った。


「バーン、」


 乾いた音と同時に、戸破の右腕が爆ぜた。

 血の霧ではなく、光粒のように砕け散る。

 戸破は理解が追いつかず、その場でぽかんと固まった。


 まぁ、そうなるよね。


「全て解析して、お前が縛り上げてた呪縛は取った。死相はその使えない3つは俺が使える。

 死相は死ななないんだろう?記憶がなくなって見た目が少し変わるだけ……」


 ゆっくりと歩み寄りながら告げる。

 戸破の瞳に、恐怖でも怒りでもなく、「理解できない」という空白が広がっていく。


 こいつはよくやった。

 魔王として、そして死相の親として。

 クレア相手に張り合えた時点で、十分すぎるほどの強さだ。


 遠くでアスやシドウが倒れた死相たちを支えているのが見える。


 俺は左耳を押さえ、思った。


 彩、どこにいるんだ、お前は………


 迷いが胸の奥をかすめる。

 だが――


 俺は戸破の頭に向けて指を下ろし、

 撃ち落とした。


 そして、全てが静まり返った。


 残っていたアス、シドウ、死相達、ロイ、リアナを魔力で包み、城へ戻す。

 倒れた仲間の光だけがゆっくりと消えていき、残ったのは俺とクレア。


「終わった〜、」


 脱力した身体が勝手に地面へ落ちた。

 石床がひんやりして気持ちいい。


 クレアも俺の隣に腰を下ろし、そっと肩へ頭を預ける。


「あの野郎大変だよ……」


 クレアの愚痴に、俺は苦笑した。

 きっと戸破のことだ。


 そのとき、

 白い光が視界の前で揺れ、一人の青年が姿を現した。


 白髪、透き通るような青い瞳。

 静かで、どこか冷たい雰囲気。


「お見事、ですが……アスタロトさん。

 監視と言われていたはず、何手を貸してるんですか?」


 白髪の青年――ゼノ。

 魔王の一人だとヴルドが言っていた。


 監視?なんの話だ?


 俺はクレアへ視線を向ける。

 クレアは一瞬で目を逸らし、そのまま知らん顔。

 ……こいつ、多分なにかやらかしてるな。


 ゼノから事情を聞き出した。


 サタンが俺の“もしも”に備えてクレアを監視役に、

 そしてそのクレアをさらにゼノが監視していたらしい。

 手出しは原則禁止、ただし“もしも”だけは例外。


 今回はその“もしも”だったわけだ。


 まぁ、助かった。


「今回は感謝してる、

 サタンに伝えといてくれ、クレアは悪くないって……」


 俺が言うと、ゼノは不満げに眉を寄せつつも頷いた。


「わかりました、今回は見逃しましょう。」


 その瞬間、クレアは勢いよく俺に抱きついた。


「ライト!!」


 ほんと、怒られたくなかったんだな。


 ――――そして、本当に終わった。


 ――――――――――――――――――――――


 俺は城に戻り、会議室へ向かった。

 巨大な円卓を囲む配下たちが、緊張した顔で座っている。


 議題はただ一つ。

 今後、世界をどう変えるか。


 ようやく本題に入れる。

 配下たちも揃った。


 良い意味では世界を“整える”。

 悪い意味では世界を“壊す”。


 そのために――


「俺は、天界を滅ぼそうと思う。」


 会議室の空気が一気に冷たくなる。

 誰もが息を呑み、沈黙が落ちた。


 だが――


 その静寂を破るように、

 ゆっくりと手が上がった。


 アスタロトだった。


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