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第八十七話 死亡

八十八話は、月曜日の12時から投稿します

「終わりだ。」

 ヴァルヴィスは低く呟き、揺れる黒髪の隙間から鋭い眼光を覗かせた。

 足元の瓦礫を踏み砕きながら、大きく踏み込み、剣先が一直線にカリサへ伸びる。空気が裂ける音が響く。


 その瞬間――


「終わりだ、ヴァルヴィス、殺す必要はないイーサンに、戸破だけ。撤退だ。」

 背後から伸びたロバートの手が、ヴァルヴィスの肩を強く掴んだ。

 硬い金属の手甲がヴァルヴィスの肩当てにゴンと当たり、動きが止まる。


 ヴァルヴィスは刃先を止めると、息を短く吐き、悔しげに眉を寄せた。

「わかった……。」


「じゃあ、僕たちは先に行きます。」

 慧と篠原の姿が淡い光に包まれ、転移魔法の紋が床に広がる。残光だけを残し、二人は城へ戻り消えた。

 続いてロバートが歩み出し、ヴァルヴィスも無言で光の中へ消える。



「ペストリスにトワルは片付きましたね」

 サマエルは手袋越しに軽く手を叩き、肩の砂塵を払う。まるで本当に「仕事が一段落」したかのような呑気さがある。


「国民も避難したみたいだね〜」

 アテナは緩い笑みを浮かべ、両手から柔らかな光を放つ。

 倒れていた聖騎士たちの身体が光に包まれ、呼吸が安定していく。


「サンキュー。」

 カインが軽く手を挙げる。

 その直後、空を裂くような魔力信号が飛び、グレモリーが撤退指示を告げた。


 アテナ、スイ、サマエル、蒼、グレモリー、エレン、カイン、スミス。

 八人の影が次々と光の道へ身を投じ、王国の都市制圧を完了させて撤退していく。



「撤退と、命令が出ました。goしてください、城に……」

 ルルが息を弾ませながらシドウたちへ伝える。


 しかしシドウは静かに首を横に振った。

「まだ最後を見届けてない。俺は残るよ、」


「ウチも!」

 焔が即座に声を上げるが、


「あなた達はダメ、帰還です。」

 ルルの声が重く響く。

 その魔力の圧に、焔は頬を膨らませて不満を示しつつも、転移陣の光に飲まれていく。アヌビス、クロ、エルも同じく帰還させられた。


 シドウだけが、薄暗い城を見つめたまま残った。

「主人……」




 城内


 火の玉が石壁を焦がしながら飛び、イーサンの耳元をかすめる。熱風が彼の髪を乱し、周囲に火の粉が散った。


「無駄だよ、いくらやっても……」

 イーサンはその全てを、流れるような動きで躱す。

 軽い足音とともに、一気にロイへ間合いを詰める。


 イーサンの剣が閃く――

 だが当たる直前、銀色の糸がイーサンの腕を絡め取り、ロイを引き離した。

 リアナの瞳が鋭く光る。


「これ以上の時間稼ぎは難しいか……」

 俺は胸の奥で呟き、手のひらに黒い魔力を集める。

 未完成のそれは、空気を震わせるほど禍々しい輝きを帯び、周囲の光を吸い込むように揺らめいた。

 冥王星の能力――冥絶。


 時間の流れを断ち、存在を静寂の異空間へ押し込む魔法。

 空間が歪み、冷たい圧迫感が周囲を包んだ。


 それを、イーサンへ向かって放つ。


「くっ……」

 イーサンは一歩退きながらも眉をひそめた。

(結界魔法を貫通してきた……星界律の能力か…?)


 彼は魔力を逆に俺へ向けようと構える。

 その身体から、夜より濃い黒のオーラが立ち上る。

 イーサンが苦しんでいくのがわかる、それと同時に逆行魔法がおそらく薄れてきた。


「どう?」

 リアナの声が震える。


「わからない。」

 それだけが言えた。

 俺だって初めて使う。

 だが逆行は、これで確かに封じられるはずだった。


「冥王か……だが、甘いな…」


 イーサンは、静かに剣を自分へ向けた。

 その瞬間、ためらいが一切ない動きで――自らを突き刺す。


「これ以上の時間稼ぎは難しいか……」


 俺はそう思い、手に未完成ながらも真っ黒の禍々しい魔力を秘めたものをイーサンにぶつけた、はずだった。


 イーサンはまるで分かったかのように、軽く交わした。


 スピード勝負に、賭けたはずだった。

 冥絶が手の中から、時間が経ち消えてしまった。

 避けられた……、いや待て

 まさか……


「戻ったな?」

「なんのことだ?」


 俺の声にロイとリアナは困惑する。

「冥絶を喰らい、逆行が消える直前、自ら死んだ。

 微かに残る逆行で当たる直前に戻ったのか……」


「君は、本当に理解が早いね。」


「どういうことだ?」

 二人は追いつけずにいる。無理もない。


 俺は一歩下がり、拳を握る。

「……負けた、」


「え?」

 リアナが小走りで近づく。


「無理だ。

 あれが最終手段だった、、なのに……勝てない。」


 イーサンの唇がわずかに笑みの形を作る。

「勝った。昔からそうだったな、なにか一つに賭ける、賭けに負けたらもう終わりだ。ライトは……

 冥王星の縛りは、当たってない、私が喰らってないから、発動しない、僕なりの優しさだよ」


「いや。お前は俺のことをわかってない、

 自分のこともよく分かってないんだから……まだ最後に!」


 俺は足を踏み込み、魔力を全開にして両手を広げる。

 黒い魔力の粒が空間に散り、暴風のように渦巻く。

 これが本当の最終手段だ。


「本気で行く!」


「無茶するな。

 がむしゃらにするな、

 まぁ、君が本気で来るなら俺も……」


 イーサンがゆっくりとそう言いながら歩き出した、その瞬間。


 ――乾いた破裂音が室内に三つ響く。


 俺の身体に衝撃が走り、視界が大きく揺れる。

 胸元、横腹、脳天へ向けて、正確に放たれた銃弾が俺の身体を貫いた。


「ライト!」

「……!」

 リアナとロイの悲鳴が重なる。


 床に倒れ、血を流す俺を、イーサンが静かに見下ろした。

 その瞳には、楽しげでも嬉しげでもない、薄い哀しみが滲んでいた。


「君の最後…本当に、予想を超えてくるな、」


 意識がゆっくりと遠ざかる。

 冷たい石床の感触が薄れ、音が遠のいていく。


 俺は死んだ。


死んじゃったーー、

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