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第八十六話 縛り

「……くっ!」

 イーサンは奥歯を噛みしめた。

 目の奥で、冷たく速い計算が回っているのがわかる。

 どうライトを自分は倒せるのか……

 その問いが脳内を高速で巡っている。


 ライトは一番最初の勇者であり、星界律の使い手だ。

 加えて、リアナ、ロイ。

 この世界で最も有名な“勇者パーティー”と名指されるほどの実力。

 歴史に名を残すほどの魔王討伐をやってのけた、数少ない存在。


 3人とも、ただ強いだけじゃない。

 経験の厚み、読みの深さ、戦闘の慣れ――

 全部が揃っている。


 対してイーサンは負けない。

 逆行魔法がかかっている。

 どれだけ負けても、巻き戻るたびに相手の動きを学習する。

 だが、もしこのまま勝てなければ、

 永遠に進まない、同じ無限地獄を繰り返す。


「……厄介だ。ほんとに………

 だからこそ、、ここで確実に討つ!」


 その声には焦りはない。

 むしろ、戦場の中心を支配する者の声。


「なら、、来いよ!」


 俺は反射的に踏み込んだ。

 地面を蹴る音が崩れた瓦礫の隙間に響く。

 拳を固く握りしめ、一気にイーサンへ距離を詰める。


 イーサンも応じる。

 昔から使っていた馴染みの剣を引き抜き、

 流れるように構えたまま斬りかかってくる。


 直ぐに俺も、握った拳から剣へと変え、

 蒼白星を手に出現させ振り上げた。


 火花が散る。

 互いの剣圧が空気を裂き、

 金属音が耳を刺すほどの強さで響く。

 お互いに一歩も譲らない、押し合う力が拮抗する。


「ライト、少し斬れるかも……!」


 リアナが指先を上げる。

 指の腹からオレンジ色の光を帯びた細い糸が伸び、

 空中で何本にも分かれて一気に俺とイーサンへと走る。


 イーサンは瞬時に察知し、

 まるで風に流れる影のように後ろへ滑るように下がった。


 《なかなかやるな……》


 余裕さに腹が立つ。

 ヴルド、感心している場合か……


 イーサンは大柄な和服を揺らしながら、

 しなやかに剣を操る。

 型が美しい、無駄が一つもない。

 魔法なしなら俺の負けだ。

 魔法ありでも、あっちは剣技・魔法・頭脳、全部が一流。

 一緒に住んでいた頃、ミラと2人がかりで挑んでようやく相打ち。

 ランクは俺と同じSS、いや……SSS(トリプルエス)に匹敵する。


「まだまだだ。」


 イーサンは片手で魔力を圧縮し、

 青白い魔力弾を複数同時に放つ。

 爆ぜるような音とともに空気が揺らぐ。


 俺は身を捻って避けるが、

 次の瞬間――ロイが割り込む。


 氷魔法が、地面を白く染めるほどの密度で展開され、

 放たれた魔力弾の軌道をまとめて押し返した。

 ロイの足元まで瞬時に凍り付く冷気。

 その一撃で、俺に避ける余裕が生まれ、

 俺はイーサンの懐へ一気に潜り込んだ。


 さらに跳ぶ。

 重力を無視するように、高く跳躍して上から叩き落とす。


 まさにスピード勝負――。


「プロキオン! 先光………!」


 未来予知、反応強化。

 星界律が体内を流れ、視界が“数秒先”を描き出す。

 アスタロトのように大きな未来ではない。

 けれど、ほんの一瞬先のラインが見えるだけで十分だ。


 刀を叩き込む。

 だが――


 イーサンは上を見上げ、笑みすら浮かべ、

 その刀を正確すぎる角度で受け止める。


「凄まじいね………昔とはちがう、火星だけではなく、身体強化に関するバフをかけたのか……そのお陰で、、」


 剣が押し上げられ、

 直後、斬撃が放たれる。


 俺は空気を蹴るように体を捻り、

 空中を滑るように避けて後方へ吹き飛んだ。


「反応速度を上げ、未来予知……

 星の特性をしっかり学んだようだね、、厄介だ。」


「……解説どうも、」


 地面に着地し、リアナとロイの横へ駆け寄る。


「手はないの!?」


 リアナが焦り気味に声を上げる。

 いや、ないよ………

 押し込むのが限界だ……


「まず、逆行を解かないと………」


 ロイが冷静に言う。

 それは、そうだ。

 逆行を解かないと逆に殺せない。

 イーサンは巻き戻るたびに学習して強くなる。

 ゲームでコンテニューを繰り返しプレイヤー側が強くなるのと同じ理屈。


 一方、魔王は学習しない。

 やり直せないから。


 理不尽だな………

 今なら魔王の気持ちがよくわかるよ。


「……星界律で、、心当たりがある星がある。

 太陽系に位置する星だ。」


 淡々と言うと、2人の視線が集まった。


「……じゃあ、それをすればいいわけ?」


「でも、縛りがある。」


「縛り?」


「………分からないけど!なんかあるの!」


「なんで、本人がわからないんですか……」


 ロイが呆れたように呟く。

 いや………ねぇ、、


「使えますか?」


「無茶言うね、

 いいよ。仕方ない………時間稼げ。

 準備するよ、冥王星を……」


 イーサンはその様子を見ながら微笑む。

 完全に自分の勝ちだと言わんばかりの態度。


「終わったか?

 来い、再開だ。」


 ……なにが勝った気でいるんだ。

 ここで終わらせる。


 俺はイーサンを仕留めるための準備にかかった。

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