表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/103

第八十五話 案外簡単

むずいね

「覚えてたんだ、始祖様……」

 阿久津は、どこか安堵したように目を細めて微笑んだ。彼の声には懐かしさが滲んでいる。


「その、始祖様って、なんなんだ?」

 俺がそう尋ねても、来は肩を軽くすくめて笑う。


「まぁ、仕方ないか、、前々前世ぐらいでしょ?幼いとき助けてもらったの、」

 来は冗談めかして言い、アスは静かに柔らかい微笑みを浮かべていた。


 けれど、俺だけが状況にまったく追いついていなかった。胸の奥にざらつく違和感だけが残る。俺は直ぐに立ち上がり、短く息を吸い込む。


「イーサンを止める。」

 そう告げた瞬間、空気が僅かに揺れた。


「そいつ、私の逆行の対象を自分に変えたんだ。ライトから……」

 アスが淡々と告げる。


「逆行?」

 思わず聞き返すと、アスはほんの一瞬だが視線を外した。

 ――隠してるな。


 俺はアスから、始祖のことも含めて全てを聞き出した。胸が重くなる内容ばかりだ。


 おいおい、なんでみんな知ってて俺に隠してるんだよ。


「困惑すると思って……」

 そりゃ困惑するよ。


「じゃあ、イーサンを倒そう。」


「でも、対象奪われてたら倒せない。無理だよ、」

 アスの声は落ち着いていたが、諦めを含んでいるようにも聞こえた。


「どうにかするよ、始祖だからな。任せとけ。」

 俺は胸を張って言った。


「……覚えてないくせに、」

 死相の二人が同時にぼそっと呟くが、そんなの知るか。


 俺はロバートを呼び出した。


「なるほど、、じゃあ戦闘を終了させてくればいいんだな?」

 ロバートは冷静そのものだ。


「そういうこと、アスタロトと一緒に戦闘を終わらせてこい。」

 続いてルルとグレモリーも呼び寄せる。


「死相も含めて6人でサマエル達と合流して、戦闘を終わらせてこい、それと、救助な。」


「わかりました。」

「はいはい!」

 二人は軽く手を挙げて応じた。


 俺はそこで全員と別れる。


「1人で勝てるの?シドウ達と協力?」

 アスが心配そうに問う。


「いや、シドウ達は戦線から離脱させる。」


 言ってから、自分でも少し迷いが出た。だが仕方ない。

 あいつらは呼べば来る。召喚魔法ではなく、ただの力任せの呼び出しでも。


 裏切ったんだ、罪滅ぼしくらいしてもらう。


 ―――


「そんな程度か?」


 燃え広がる焔の中で、アヌビス、クロ、シドウ、エル――四人を同時に追い詰めるイーサンが嘲笑うように言った。

 彼の周囲の魔力は渦を巻き、黒く不気味な光を放っている。


「へー、案外気持ち悪い見た目してるね。」

「さっさと仕事しよう。で、見た目はそれでいいの?」


 崩れかけた城の回廊に、三つの影がゆっくりと現れる。

 その先頭にいるのは――金髪の俺だった。


 配下達は驚愕したように目を見開く。無理もない。普段は白髪だから。


「主人様、、イメチェンですか?」

 シドウが目をぱちぱちさせて聞く。


「いや、まぁ元からこの髪色だったんだけどね。」

 服装も、勇者時代そのまま。胸の紋章も、マントの重みも、すべて過去の俺の姿。


 隣に立つ二人――リアナとロイ。

 勇者時代の仲間が、揃っていた。


「お前達は戦前離脱。ここは、任せて、」


「でも!」

 言い返そうとした瞬間、俺は魔法で全員をアスの元へ送り返した。


 時間稼ぎ、助かったよ。


「ライトか、なんだい?その茶番、魔王に堕ちたのに都合よく勇者に戻ってきたのか?」


「別に?今は勇者モードだけどさ、、別に魔王とかに限らず勇敢さがあれば誰だって勇者になれるよ。」


「バカらしい。」

 イーサンが放ってくる魔力弾。黒紫にゆがんだ光が一気にこちらへ迫る。


「はいはい……」

 俺はロイへ視線を送る。


 ロイは無言で杖を掲げ、極めて滑らかな動きで結界魔法を展開。

 透明な壁が生まれ、魔力弾が砕け散る。

 ロイの魔法技術は、やはり一級品だ。


「懐かしいなこの感じ……なんか、、1人居ないの気になるけど!」


「ブルータスは、お亡くなりだよ。」

 リアナが刺すような視線を俺に向ける。

 言外に「お前のせいだろ」と伝えてくる。


 まぁ、あいつ裏切ったとき一番ノリノリだったしな。

 多分あれが本性だ。俺のこと本当に嫌ってたんだろう。


「じゃあ、久しぶりに、勇者としての仕事ね、気合い入れよっか!」


 《魔王はやめたのか?》


 ヴルドがそう問いかける。

 もちろん答えは、NOだ。

 俺はどっちも経験した。普通の高校生、この世界に魔法をばら撒いた始祖、最強の魔王、そして勇者。

 好きな時に好きな姿にならせてもらう。


 もちろん、普段は魔王だけどね。


「あ、なんか、あれだっけ?お前、言ってたよな?どっちの視点で物語を進めるの?って………」


「だから?」


「決めたよ。好きなように進める!」

 俺は笑った。素直な気持ちで。


 ロイもリアナも、その言葉にふっと笑みを漏らした。

 らしい、って顔をして。


 もし、この物語の主人公が俺で、

 世界が俺の中心で回ってるのだとしたら――

 視点も役割も、全部俺が決める。


 どっちかなんて選ばない。

 全部やる。俺の物語なんだから。

 全てをしないと勿体無い。遠慮はしない。


 そんな中途半端だが、俺らしい、この物語に題名をつけるなら――


 魔王を倒した勇者の俺、仲間に裏切られたので選ばれし者から最強魔王に堕落します。


 徹底的に堕ちて、どんな状況も利用し尽くす。

 堕ちたい時に落ちて、上がりたい時に登る。

 勇者にも魔王にも、どっちの側にも自由に立てる存在に。

 俺はなるよ。

 ついて来れるとこまでついてきてよ、仲間(みんな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ