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第八話 第二の勇者兼ライバル

 ダークは、俺に向かって銃口を突きつけた。

 次の瞬間、その銃口から青白い閃光が炸裂する。


 鋭く唸る空気。俺は反射的に身を翻し、地面を抉るように後方へ跳ぶ。

 しかし避けきったと思った瞬間、その光の束は空中で弾け――枝分かれするように、無数の光線となって再び俺を追尾してきた。


「主人!」

 シドウの声が響く。


 《どうする気だ? 後ろから3本、右から1本、左から2本、前から4本きてるぞ。》

 ヴルドの声が冷静に響く。


「分かってる。」

 俺は短く答えると、瞳が淡く光を帯び、瞬時に水色へと変わった。

 視界のすべてがスローモーションのように研ぎ澄まされる。


 一歩、地を蹴る。

 その瞬間、風が爆ぜるような音を立て、俺の身体は空へと跳躍した。


 だが――光は俺を逃がさない。

 後を追うように、枝分かれした青白い光の束が軌跡を描きながら天を裂き、俺の背中へと迫る。


「チッ……!」

 俺は空中で指先を噛み切り、血を撒き散らす。

 宙に浮かぶ赤い粒が元の剣を囲うようにを成し、瞬時に固まる。

 さらに剣の強度を上げたのだ。


 その剣を握り、迫りくる光の束を一閃――

 金属と金属が擦れたような音と共に、光の一本一本が弾け、青い火花となって空中に散った。


「すごい速さだな……」

 地上で見上げるシドウの声が、わずかに震えていた。

 彼の視界には、残像を残すほどの速さで宙を駆ける俺の影。

 青い光と赤い残光が交錯し、空を裂く光景が広がっていた。


 俺は息を吐き、全ての光を切り裂き終えると、剣を構えたまま静かに着地した。

「そんなもんか?」

 瞳の光が元に戻り、俺はゆっくりとダークを見下ろす。


 ダークは息を荒げ、唇を噛みながら低く呟く。

「才能、、能力頼りが……」


「才能だって実力の内だろ?」

 俺が冷たく言い放つと、ダークは舌打ちをして銃を構え直す。


「……クソ、」


 引き金に指がかかるよりも早く、俺は足を踏み出した。

 地を割るような音と共に一瞬で間合いを詰め、剣が風を切る。

 刃が閃くと同時に、ダークの姿がブレた。


 後退......いや、後ろに跳んだ。

 その手には、背中に背負っていた巨大な銃。

 それを一瞬で抜き放ち、俺の顔面めがけて引き金を引いた。


 轟音。閃光。

 弾丸というよりも、青白い衝撃波が直線を描き、空気を焼きながら迫る。

 目で追えない――そう思った瞬間、俺の身体が勝手に動いた。


「……!」

 膝が折れ、頭が下がる。弾丸が髪を掠め、背後の木々を丸々と跡形もなく消し飛ばしてしまった。

 破片と衝撃波が背中を叩く。


 《気をつけろ、お前が死ぬと俺も死ぬんだぞ、!》

 ヴルドの声が鋭く脳内に響く。


 どうやら――今の一瞬、ヴルドが俺の身体を動かしたらしい。

 俺は荒い息をつきながら立ち上がり、手にした剣を消すと、ダークへと歩み寄った。


「話せ、全てだ。」

 そう言って、俺はダークの胸ぐらを掴み上げる。


 玉座の前で、俺は話を聞くと、どうやらコイツは転生者であり、前世では病死だったらしい。


 それで、年齢は俺と同じくらい。

 どうやら俺と同様、あの天使に会い、転生者――“第二の勇者”としてこの世界に生を受けたそうだ。


 そして、俺と同じように「魔王を倒せば生き返れる」と言われていた。

 だが、その“魔王”として出た名前が――

 ライト・ウィリアムズ。つまり、高橋光輝としての俺の名だった。


 その瞬間、胸の奥で冷たい何かが沈む。

 つまり、他にも俺のような勇者がこの世界に転生してきている。

 俺はその“最初の一人”に過ぎなかった、というわけか。


 天使は未来を見通す可能性がある。

 アスタロトのように、それなら、

 俺が転生した後、天使は

 “勇者である俺が魔王になる”未来を見ていたのだろう。

 だからこそ、俺の討伐を命じた。この世界の未来のために、


 つまりこれから、俺は他の勇者たちからも命を狙われるということだ。


「厄介だな……」

 壊れかけの玉座の肘掛けに手を置き、俺はため息を吐く。

 ひび割れた玉座の破片が指先に触れ、かすかに冷たい。

 それを軽く直してから、深く腰を下ろした。


「で、お前、能力は?」

 俺がダークにそう聞くと、彼は不服そうに見つめ、首を横に振った。


「そんなもの無いに決まってるだろ。

 君とは違うんだよ。」


 目を逸らしながら部屋の中を歩き回る。

 瓦礫を避ける足取りは迷いなく、銃を扱う者らしい軽やかさがある。

 あの反応速度、狙撃の正確さ、引き金を引く速さ――

 まさか全部、努力の賜物だというのか。


 年齢も俺と変わらないのに、よくそこまで極められたものだ。

 どうやら、前世では病室から出られず、暇な時間の中だった。

 よって、前世の退屈と孤独が、今世の彼を鍛えた。


「……後、お父さんのことがね、聖騎士団のリーダーだから、泥は濡れない。」


「なるほどね。」

 口では軽く返すが、背後に広がる血筋と権力の重みを感じる。


「なぁ、聖騎士がなんでここに一人で乗り込んだ?」


「泥は濡れないけど、群れるのは嫌いだからだ。

 君を一目見に来ただけ。質問タイムは以上だ。

 後数日で、王国の騎士達がここに偵察に来る。変な真似はするなよ?」


 ダークはそう言い残し、肩に掛けた青いマントを翻す。

 焦げ跡の残る石畳を踏みしめ、門の方へと歩いて行った。


「なぁ、主人……逃がしていいの?」

 アスが治療を終えた腕を押さえながら、俺に尋ねる。

 周囲の配下たちも、警戒を解かずにダークの背中を見送っている。


「ああ、別に悪いやつじゃなさそうだしな。」

 俺はそう答え、立ち上がらずにそのまま見送る。

 火の粉が舞う玉座の間で、静かな風が通り抜けた。


「次は僕が勝つよ。」

 去り際に、ダークは振り返らずにそう言った。

 青髪が風に揺れ、城門の影に消えていく。


「また来い!相手してやるよ……」

 俺は笑いながら呟く。

 胸の奥で、敵意よりも妙な親近感が芽生えていた。


 このダークとか言うやつ、どこか憎めない。

 人間の俺が言うのもなんだが――

 やっぱり、悪い奴ばかりじゃないんだよな。


 俺は静かにそう思い、壊れかけた天井を見上げた。


(ものすごい魔力量……報告で聞いてたこととは違う。

 アイツ、別に悪い魔王じゃないのかもな……?)


 ダークもまた、そう心の中で呟きながら、

 沈みゆく夕陽の中、静かに街の方へと戻っていった。


 数日後――マルシオン王国。

 朝日に包まれた王都の広場には、重々しい鎧の音と、鉄の匂いが満ちていた。

 空は灰色に曇り、遠くの鐘が低く鳴っている。


 王城の前庭、白い石畳の上で、片目の老人が軍勢を前に立つ。

 その背はわずかに曲がっているが、片方の眼帯の奥には凍るような光が宿っていた。

 左手に持つ杖の先で地面を叩き、響いた音が兵士たちの胸にまで伝わる。


「魔王城の偵察!及び、可能な限りの攻撃を許可する!」


 鋭い声が空気を裂き、兵士たちは一斉に槍や剣構えた。

 鎧がぶつかり合う金属音、馬の鳴き声、旗のはためき――

 その全てが、これから始まる戦を告げていた。


 しかし、ひとりの青年が列の前に歩み出る。

 青いマントを羽織り、腰には黒色の狙撃銃。

 ダークだった。


「ちょっと待てよ、聞いてた話と違うんじゃないか?

 偵察だけのはず、」


 ダークは声を低く抑えながらも、その一言に静かな怒りをにじませる。

 兵士たちの間にざわめきが走った。


 老人は、ゆっくりとその方へ顔を向ける。

 片目の奥が、まるで蛇のように光った。


「ダーク……今回は聖騎士ではなく、騎士達の出番だぞ?」


 唇の端がわずかに吊り上がる。

 その言葉に、命令の意図が透けて見えた――“討伐”ではなく、“殲滅”の号令。


 ダークはしばし黙り、老人の視線を受け止める。

 そして、拳を握る音がかすかに響いた。


 彼の背後では、すでに何百もの兵士が列を成し、旗を掲げ、馬にまたがっていた。

 赤い紋章の布が風に舞い、鉄の匂いがさらに濃くなる。


 老人は手を振り上げる。

「行け、ヴェルデンの森へ!」


 その号令と共に、地面が揺れた。

 馬の鳴き声が鳴り響き、砂埃が巻き上がる。

 白い鳩が驚いて飛び立ち、曇った空に消えていった。


 ダークはその光景を見送りながら、拳を握りしめたまま動かない。


(勝手なことを...)


 彼は誰にも聞こえない声で、息を吐いた。

 そして、ゆっくりとマントを翻し、その様子を見送ったのだった......

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