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第七十話 俺の、この世界の日常

「で?」


 ルクサニア王国――王城の最奥、灯火の少ない玉座の間。

 石壁に揺れる燭台の光が、床に細く長い影を落とす。その中央で 2つの人影が向きあっていた。


「ボスはどうすんだよ〜」


 緑髪の少女が、わざとらしく男性の肩に肘を掛け、からかうように覗き込む。

 その軽い調子に、赤髪の男はわずかに眉をひそめた。姿勢を正し、ゆっくりと少女へと視線を向ける。


「作戦は決まっているさ、ライト一同をここへ招待する。」


「そんな事していいの?

 総勢も多い、まぁそれに関しては他の魔王の方が多かったりするけど、、

 一人一人がかなり強い、

 ヴェノム自身も、もうSSSランクぐらいまで行くと思うよ?」


 少女は腕を組みながら言う。広い広間に彼女の声が反響する。


「勿論、戦力は分散するよ?

 死相をあたり一面にばら撒く。そいつらなら対等にやれるだろ?

 他にも魔物やモンスター達もね、」


 男の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

 それは勝利を確信した者の笑みではなく、計算が全て揃ったことを確認した者の微笑であった。


 この世界で、ライトを倒そうとした者は数え切れない。

 しかし全員が、同じ失敗をした――彼を軽視した。


 だが、この男だけは違う。


 ライトの戦闘記録、仲間、魔法、癖、生存パターン、星界律の挙動……

 それらをすべて集め、研究し、理解している。


 男はため息をひとつ落としながら続けた。


「アスタロト、だっけ?

 そいつが厄介だ。洗脳させる、」


「洗脳?」


 少女が目を丸くして問い返す。


「常日頃いるよ?

 前すれ違った時もいたし、」


 少女は軽く反論するが、男の表情は微動だにしない。

 それすら予想の通りだと言わんばかりに。


「ああ、だがそれ結構前だろ?

 それに、アスタロトがこちらに加われば勝率はぐんと上がる。」


「どうやってそうするの?」


「禁呪だ。

 研究して最も効率の良い禁呪、それらの出し方まで研究したから大丈夫。そのおかげでここの国の兵士や国民までも今や僕の思い通り、

 慎一郎の二の舞にはならないさ。」


 男は薄闇の中で静かに目を細める。

 その顔は、ライトを思い浮かべながら、ゆっくりと――不気味に――笑っていた。


 ――――――――――――――――――――――


「いや〜増えたね!配下!」


 俺は久しぶりに自分の玉座へ体を沈めた。

 黒曜石で造られた背もたれが心地よく、城内の冷たい空気さえ今は妙に快適に思える。


 慎一郎の件が片付き、ようやく肩の荷が降りた。

 気がつけば配下も領土も増え、後始末も終わり、胸の中に広がるのは達成感だけ。


 自分……もしかして勇者より魔王向いてんじゃね?


 《一理あるかもな。》


 ヴルドの声が脳内に響く。

 褒められてるのに、なぜかムカつくのが不思議だ。


 《なんでだよ、、》


 ……うるせぇ。


 でも正直、今の俺は強い。

 星界律にもまだ上があるらしいし、カガリによれば、過去の継承者の一人はその頂へ到達し、神に至ったという話だ。

 もっとも、その継承者については殆どの記録はなく、

 聖書にしかそれっぽいことは書かれていない。


 まぁ、とにかくその境地へ自分も行けるようになれば――


 世界、そしてこの異世界を管理する神ですら堕とせる。


 ここまで堕落した俺なら、逆にどこまでまだ落ちられるか試してみたくもなる。


 《俺は昔の侍が気になるな、》


 ヴルドが呟く。

 ああ……あの無能力だけでヴルドを追い詰めた女侍。

 転移者かもしれないが、あれほどの技量は普通じゃない。


「またヴルドと話してるの?」


 アスタロト――アスが近づいてきて声をかける。


「そうだよ、」


「そいついつまで味方してくれるんだろうね。」


 少し不安げな目。

 確かに、アスが言う通りだ。裏切られたら勝てる気がしない。


 《今はここが気に入ってるからな、しばらくは裏切らん。》


 その「しばらく」が一番怖えよ、


「ていうか、聞いて!

 グレモリーがウザいんだけど!」


 アスが両手を振りながら俺の前に立った。

 次の瞬間、彼女の周囲に特殊な魔力が広がる。


「なにそれ?」


「これ、相手を監視する魔法、

 これが僕の部屋にあった!」


 ……なるほど。

 元の世界でいう盗撮か。


「それが、僕の部屋にめちゃくちゃあったの!」


 アスの怒声が響き、城内の空気が震えるほどの圧が生じる。


「調べたらグレモリーの魔力反応なわけ!どうにかしてよ!」


「……おい!

 ウチのアスタロトが、ご立腹だぞ!」


 俺が声を張ると、廊下や周辺の部屋から

 バタン! バタン!

 と扉が一斉に閉じる音が鳴り響いた。


 アスの怒り=周囲への二次災害

 これは全員が理解しているらしい。

 あの野郎、、


 俺は特別な魔法 ―― “配下召喚” を使った。

 名前の通り呼べば、強制で来るというもの。


「グレモリー……」


 呼び名を口にすると、空間に魔法陣が浮かび、すぐに現れた。


「はや!アスちゃんもうわかったの!?」


 グレモリーが驚いた表情を浮かべる。


 この2人が殴り合えばアスが勝つ。

 圧倒的に勝つ。


 だがグレモリーは、天界時代からアスの大ファン。

 戦うどころか、多分恐縮すぎて指一本触れられない。


 結果――


 俺の目の前で、グレモリーがアスにしばかれた。


 ……はぁ、これが俺の日常か……

 やっぱこの世界いかれてるわ。


 そう、俺は心の底から思った。

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