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第五十八話 主人いない!

「それで?誰がダンジョン周辺に張るべき防御魔法を張り忘れた?

 ましてや、それで街に被害が届いしてしまったのはどこの誰だ?」 

 カガリの前で正座させられる一同。背筋を伸ばし、額に汗を浮かべながらも、誰も口を挟めない。窓の外では、夏の風に揺れる風鈴がチリン、と乾いた音を立てる。部屋の静寂に、その音だけが鮮明に響き渡った。


 カガリの目が、剣幕と怒気を帯びてこちらをのぞき込む。眉間に深く皺が寄り、口元はきつく結ばれている。

 うん、ちがうよ?一応今回は……俺は心の中で思った。


「ライトです。」

 イーサンが、何事もなかったかのように口を開く。


 あまりにも自然に言うものだから、俺は思わず頷きかけた。しかし、瞬時に間違いに気づき、目を大きく見開いて二度見する。


「え!?」

「え……」

 真犯人であるミラも、驚きで口を半開きにしている。


 少し間を置き、カガリは静かにだが鋭い声で告げた。

「よし、、、ライト今日のご飯は無しだ。」


「え!?いや……ちょっ、、まぁいいか……」

 俺は思わず肩をすくめる。


 ミラは、その様子を少し困惑したように見つめながらも、黙って見届けていた。


 カガリから解放され、ライトとイーサンが自室に戻ろうとしたとき、ミラがそっと頭を下げる。

「あのさ、私なのに……庇ってくれて、ごめん。ありがとう、」


 イーサンは振り返り、柔らかい声で言った。

「最初のうちはそんなもんだ、だんだん慣れていくといいよ。」


「イーサン、それ俺のセリフにならない?」

 俺は思わずツッコミを入れる。


「なんのことだい?」

 イーサンは無邪気に肩をすくめる。


「俺が犠牲になる義理はないよな?」

 俺は腹立たしげにイーサンの襟を軽く掴む。


「でも、君だって正直に言わず合わせてくれたろ?」

 図星を突かれ、俺は目を逸らす。腹が立つ。


「……うるさい、」


 なんでこいつは、どんな時でも笑っていて、人の心まで和ませるのか……俺は内心で呟く。


「……あのさ、!教えてくれない?

 剣技が得意なイーサン、星界律の能力者のライト、カガリさんだけじゃ足りないの、

 図々しいと思うけど………」


「何言ってんの?そんなの別にいいよ。仲間だし」

 俺がそう言うと、ミラだけではなくイーサンまでも目を見開く。


「珍しい、自分勝手のライトからそんな言葉が出るとは、、、今から日食でも起こるのか?」

「珍しくないし、今から日食も起こるな、」


 ――――――――――――


「目が覚めたか?バカ弟子、」

 目を開けると、見覚えのある古びた跡が特徴の天井が目に入る。光は窓から柔らかく差し込んでいた。


 カガリが手際よくご飯を作っている。鍋から立ち上る湯気に、ほんのり香ばしい匂いが漂う。


「なんだ?魔王になって体力も落ちたか、?」

 カガリの口調は師匠らしい淡々さだが、昔と変わらぬ小さな挑発の響きを含んでいる。


「……いい匂い、」

 俺は思わず呟くと、腹の奥から空腹感がじわりと湧いてきた。


「主人様!お腹すいた!」

 その瞬間、俺のポケットから聞き覚えのある声が響く。


「は?お前なんで!」

「主人様!」

 クロが小さな身体で飛びついてくる。


「……なんだ?そいつは、ゴキブリか?」

 軽い毒舌に、クロの耳がピンと立つ。どうやら聞き逃してはいなかったらしい。


「主人様!アイツ……」

 飛びかかろうとするクロを、俺は必死で抑える。危なすぎる。


「………そいつがお前の配下か、、ほら話せよ」

 カガリは、俺に朝食を差し出しながら言った。どうやら俺は、あれから二日ほど眠っていたらしい。疲れ果てていたのか……


「話すよ、それとさイーサンの居場所は?」

 俺の問いに、カガリは一瞬目を見開いたが、視線はぶれず真っ直ぐ俺を見つめ続けた。


「そうだな、、イーサンか………」

 少し考え込むように、間を置きつつ話し始めるカガリ。その声に、俺はあの日の最悪な出来事を思い出す……


 ――――――――――――――――――――――


 ライトの魔王城(元ヴルドの城)

 主人のいない城は、配下たちがいてもどこか静寂に包まれていた。


「じゃあ!僕が今日からここの主人だから……」

 ライトが出て行った後、アスが机を叩きそうな勢いで宣言した。


「おい待て、頼まれたとはいえ、なぜお前なんだ?」

 シドウが口を挟む。その声に、他の配下たちは頷くが、アスだけは鋭く睨みを効かせる。


「え!?僕ダメ?でもさ、!一番最初にライトについたの僕だけど?」

 アスは胸を張ってマウントを取る。


「いや待て!でも、一番最初にライトと戦ったのは俺だぞ?」

 シドウも譲らず反論。


 もはや、主人不在の城は混乱そのものだった。


「なら、あたしは主人様に村助けられた!」

「私は我が君の執事的事務をやっております。」

「俺様は、主人様とシドウ様と一緒に武器ゲットしたぞ!」

「えっとえっと、、、私は……」

「うちは、主人っちと趣味友だぜ!」

「僕はいろいろ主人様の相談乗ってるよ〜」

「俺は、主人様の神だ!(?)」

「私は、パパの娘だもん!」

「私は、主人様も好きだけど、ヴルド様推しだからな〜」

「………」


「お前らいい加減にしろ、魔王様が信用したならアスタロトの奴でいいじゃねぇか、まぁ、俺は頭脳の面で魔王様に信用されてはいるが……」

 ロバートがそう口を挟むと、他の配下たちは怒り心頭。


「お前!正論ぶって、何ちゃっかりマウント取ってるんだよ!」

「お前、最初スイ殺そうとしたろ!」

「ほら、お前らさっさとこいつを島流しにしな!」

「「あいあいさー」」


 焔にアテナ、ノクス、便乗するアヌビスや蒼まで、ロバートを縄で締め上げた。


 結局、今の主人の代わりはアスタロトで決まったのだった。


「あれ、?クロは?」

 アスだけが、クロがいないことに気づく。

 

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